the HIATUS ALBUM「Keeper Of The Flame」ディスクレビュー

Keeper Of The Flame

ALBUM

the HIATUS

Keeper Of The Flame

EMI RECORDS

2014.03.26 release

<CD>


形式としてではなくて、本質としてのロックがここに

 キーボードの堀江博久が離脱し、伊澤一葉が参加しての最初の作品であり、the HIATUSにとって、4枚目のアルバムとなるのがこの『Keeper Of The Flame』だ。ミクスチャー、ポストロック、アンビエント、ハウス、ジャズなどなど、様々な要素を有機的に融合した音楽。そう語ってしまうと、この作品の本質から遠ざかってしまいそうになる。というのは、音楽ジャンルやスタイルなどの既成の枠組みから遠いところにある自由な音楽だから。頭の中のイメージ、胸の中に積もっているエモーションを、バンドの自在なアンサンブルによって音楽化していったら、こうなったというような強い必然性を感じた。

 聴き手の想像力を刺激する詩情豊かな音楽でもあるので、限定するつもりはないし、あくまでも個人的な聴き方なのだが、震災以降の心象風景と重なってくる曲がたくさんあった。例えば、1曲目の「Thirst」。この曲からまず伝わってきたのは無念の思いや怒りだった。怒りと言っても、他者に向かってのものというよりもむしろ自らに対してのもの。自らに向けられた怒りは痛みとなっていく。これはその痛みを原動力として、自らを覚醒させ、鼓舞させて前に進んでいく歌なのではないだろうか。ちなみにアルバム・タイトルの“Keeper Of The Flame”という言葉はこの曲の歌詞にも登場している。

 この世界は実に多面的だ。時には残酷で無慈悲で無情。かと思えば、とてつもなく美しい瞬間を出現させたりする。the HIATUSはこの新作の中でその多様な世界をみずみずしい音楽によって見事に表現している。かけがえのない光景の数々が見えてきそうな「Something Ever After」や「Sunset Off The Coastline」、戦慄が走るようなスリリングなアンサンブルに息を飲んだ「Roller Coaster Ride Memories」、ストレートなメッセージをイマジネイティブな音世界で鮮やかに展開していく「Don’t Follow The Crowd」などなど。「Thirst」で始まり、観客がシンガロングするライブの光景が目に浮かんでくるラストの「Burn To Shine」への流れからは、なぜ音楽をやっているのかという根源的なことまでもが見えてきそうだ。怒りも哀しみも喜びも愛もすべて生きていく力へと変換していく音楽。形式としてのロックではなくて、本質としてのロックがここにある。

(長谷川誠)

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