サカナクション – <SAKANAQUARIUM 2014 “SAKANATRIBE”>@TOKYO DOME CITY HALLのライブ・パフォーマンスに見る、バンドの今のテンション。

サカナクション

シングル「グッドバイ/ユリイカ」のリリース後すぐの1月よりスタートしたサカナクションの全国ツアー<SAKANAQUARIUM 2014 “SAKANATRIBE”>。昨年行われたバンド史上最大規模のツアーでは6.1chサラウンド・システムを導入する(幕張&大阪公演のみ)など、つねに斬新で最新のエンターテインメント・ステージを見せてくれる彼ら。今回のツアーは、“SAKANATRIBE”と銘打たれ、“0から100”というテーマを持って臨んだとフロントマンの山口一郎は言う。そのパフォーマンスとはいったいどんなものだったのか? バンドは昨年末にNHK「紅白歌合戦」にも出演。今や知名度を上げ、アンダーグラウンドとオーバーグラウンド、どちらの両域をも行き来できる自由さを増した。そんなサカナクションの現在のバンドのテンションを、東京公演最終日の模様とともに探る。

TEXT BY 森朋之 PHOTOGRAPHY BY 石阪大輔(hatos)

まさに“ロックから得られる、あらたな感動”だった

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ライブの終盤における、山口一郎(vo、g)のMCをまずは紹介したい。

「2013年は、僕ら、苦手なテレビにもたくさん出演させていただいて。“紅白”も出演させていただきましたけれども、ほんとに、やっぱり違うね、世界が。音楽の種類が違うから、届け方も違う。でも、テレビに挑戦して良かったのは、たくさんの人に自分たちのことを知ってもらえたんですね。で、(今回のツアーで)ライブが終わったあとに出待ちしてくれてる人たちとお話すると、“初めて来ました”とか“生まれて初めてのライブでした”とか言う人がいっぱいいるの。“紅白観てきました”とか。つまりさ、そういうテレビで知ってくれた人たち、メディアで知ってくれた人たちを、ここに呼びたいよね。ここに足を運んでもらうために僕らはどういうことをしたらいいのか? っていうのを考えていくのが、たぶん、これからのバンドの未来だと思うし。ロックから得られる感動の種類をもっと増やしたい。それが、今、ツアーをここまでやってきて感じてることです」

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山口のコメントどおり、サカナクションは昨年の2013年、テレビをはじめとする様々なメディアに登場した。最も注目されたのはおそらくNHK「紅白歌合戦」で「ミュージック」を披露したことだが、その効果は非常に大きく、サカナクションの知名度は飛躍的に上がった。そして、今年1月には約1年ぶりとなるシングル「グッドバイ/ユリイカ」をリリースし、全国ツアー<SAKANAQUARIUM 2014 “SAKANATRIBE”>へと繋がったわけだが、言うまでもなくこのツアーはサカナクションにとってきわめて大きな意味を持っていたはずだ。それを端的に説明すると、“メディアでサカナクションを知って、ライブに初めて来た”という新しいオーディエンスを楽しませつつ、従来のファンの“次は何を見せてくれるんだろう?”という期待にもこたえるということになるだろうか。結果的に言うと、今回のツアーで、彼らは自ら設定したハードル──誰もが楽しめるエンターテインメント性と音楽的な進化の共存──をしっかりとクリアしてみせた。それはまさに“ロックから得られる、あらたな感動”だったと思う。

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全国ツアー<SAKANAQUARIUM 2014 “SAKANATRIBE”>の終盤、TOKYO DOME CITY HALL 2デイズ公演の2日目。この日、サカナクションは“原点回帰”と“あらたなトライアル”を両輪にした、きわめて刺激的なライブを体現した。

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開演前の会場は、水の中をイメージさせる効果音、色とりどりの花〜都市の風景が交互に映し出される映像によって、おだやかな雰囲気に包まれていた。そこにわずかなフィードバック音が加わった瞬間、客電が落とされ、草刈愛美(b)、岡崎英美(key)、江島啓一(ds)、岩寺基晴(g)が登場。続いて山口一郎が姿を見せ、まるでクラシックのコンサートのような雰囲気の中でチューニングを行ったあと、観客に向かってていねいに一礼し、静かにギターを鳴らし始める。オープニングは2ndアルバム『NIGHT FISHING』(2008年)の収録曲「サンプル」。耳をすまさないと聴こえないほどの音量から始まり、ギター、ベース、キーボードの音を静かに重ねることで、少しずつ音楽の形状を変化させていく。さらに「僕は」「それとなく」「息をして」「笑った」という言葉が深いリバーブとともに空間に広がり、最後はすべての音と歌が結びつきながら、圧倒的な高揚感へと結びつける──音楽を構成する要素に直接触れられるような、本当に素晴らしい演出だった。

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静かな感動で包まれた会場の雰囲気は「アルクアラウンド」「セントレイ」によって一新し、瞬く間にダンス・モードへと突入していく。最新鋭のダンス・ミュージックを反映させたこれらの楽曲は、今回のツアーによって大きな進化を遂げていた。あくまでもバンド・サウンドに重点を置きつつ、繊細なリアレンジを加えることで、楽曲のあらたな魅力を引き出すことに成功していたのだ。その精度はツアー序盤に比べても、あきらかに高まっていた。その後も、このバンドの奥深い表現力が体感できるシーンが続いた。草刈がサビのパートを歌う「表参道26時」、ボーカルとシンセが効果的に絡み合いながら、メロディの美しさを際立たせていた「哀愁トレイン」。さらにエッジの効いたギター・サウンドを軸にした「Klee」では、楽曲の展開と完璧にリンクしたライティングによって、オーディエンスの興奮を引き出していく(照明を担当する平山和裕氏は、まるでDJのようにリズムを取りながら、めちゃくちゃうれしそうな笑顔で機材を操作していました)。

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「誰かを笑う人の後ろにもそれを笑う人」というフレーズによって現在のコミュニケーションの在り方を描いた「エンドレス」では山口の歌に焦点を当てたアレンジを施し、「シーラカンスと僕」は海の底をイメージさせる音響と山口を取り囲むようなレーザー・ライトで楽曲の世界観を表現。フォーキーかつサイケデリックな手触りを持つ「流線」では、今や彼らのライブに欠かせない演出となったオイル・アートを交え、音響と空間を歪めるようなパフォーマンスを繰り広げる。音響、照明、映像、楽曲のアレンジ、パフォーマンスをていねいに精査し、ライブの表現を極限まで高めていくサカナクション。MCの中で山口は「僕らはマジメだけが取り柄なんで」と冗談交じりに話していたが、彼らの音楽に対する真摯な姿勢は本当にすごい。

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ライブ前半で個人的に最も印象に残ったのは、ニュー・シングルの収録曲「ユリイカ」だった。ミニマル・テクノのテイストを肉体的なバンド・サウンドとともに描き出し、その中で郷愁の想いと東京の風景を交差させた歌を響かせる。“故郷と都会”“クラブ・ミュージックとロック”“オーバーグラウンドとアンダーグランド”をテーマにしながら音楽表現を広げてきたサカナクションだが、その最も新しい形が「ユリイカ」なのだと思う。ライブ当日の会場の様子を写した映像からも、“現在のサカナクションはここにある”という意思がストレートに伝わってきた。

「さあ、一緒に踊ろう!」という山口の声に導かれた「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」からは、新旧の楽曲をバランスよく交えながら、“踊る”ことに特化したステージへと突き進む。1stアルバム『GO TO THE FUTURE』(2007年)の収録曲「インナーワールド」「三日月サンセット」では“人力のダンス・ミュージック”とでも呼びたくなるようなダイナミズムを発揮。さらにツアーのタイトル・チューン「SAKANATRIBE」ではロック・ミュージック本来の爆発力でフロアを煽りまくり、鋭いギター・リフを中心にした「モノクロトーキョー」によってライブの興奮はついにピークに達する。「まだまだ踊れる?」という山口のシャウトとともに放たれた「夜の踊り子」、会場全体から大合唱が生まれた「アイデンティティ」、そして、プリミティブなビートに貫かれた「ルーキー」。感情剥き出しの生々しいバンド・サウンドによって、すべてのオーディエンスが本能的に踊りまくっている。“4つ打ちのアッパー・チューンで観客を踊らせる”というのが現在のバンド・シーンのトレンドだが、サカナクションのステージングは完全に別格。音楽性、演出を含め、シーンの未来を担うのはやはりこのバンドなのだと思う。

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ロック・バンドとしての強さを改めて示したかったのではないだろうか

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アンコールではまず、デスクトップ・コンピューターを並べて「Ame(B)-SAKANATRIBE MIX-」を披露、オーディエンスの身体をさらに激しく揺らす。途中から生のベースが加わり、そのままバンド・スタイルへ移行、「ミュージック」「Aoi」が演奏される。軸になっているのはやはり、リアルな肉体性を伴ったバンド・サウンド。去年、幕張メッセ2デイズという巨大なスケールのライブを成功させている彼らだが、ライブ・ハウスを中心とした今回のツアーではおそらく、ロック・バンドとしての強さを改めて示したかったのではないだろうか。特に「Aoi」における直線的なサウンド(江島の強靭な8ビート、草刈のダウンピッキングがめちゃくちゃカッコいい!)は、このツアーにおける彼らのスタンスを象徴していたと思う。

「みなさん、本能で踊られて……。最高!」という山口のうれしそうなコメントをきっかけに、ツアーに関するトークへ。まずは「今日、実はファイナルになるはずだったんですけど……テヘペロ(笑)」と、山口のインフルエンザによって仙台公演を延期したことを謝罪。「仙台、あと2公演、頑張ってきますね」と宣言したあとは、メンバーに向かって質問をする。
山口「古い曲がたくさんあるセット・リストの中で、どの曲がいちばん育ったと思った?」
岩寺「『哀愁トレイン』はすごい久しぶりだった。2ndの曲だから、7年ぶりとかかな、ライブでやったのは。結構いい感じにできるようになったと思ったら、(ツアーが)終わっちゃうっていう(笑)」
岡崎「『三日月サンセット』が前とは違う感じがしました。グルーヴが」
草刈「『SAKANATRIBE』のときの一郎くんの“キューーーーーン”(←ギターのピックスクラッチ)ってヤツ。最初は冗談でやってたんだけど、だんだんサマになってきた」
江島「1曲目の『サンプル』。尺が決まってないから、その場の空気とかで変わってくるんだけど、みんなの気持ちがわかるようになってきたよ」
という彼らの返答からも、このツアーに対する手ごたえの大きさが感じられた。
また「音楽ってさ、ホントにメンタルってあるよね。メンバー5人の気持ちが揃わないと、グルーヴが整わないんだよね」「音楽は心!」という山口の言葉も強く心に残った。

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さらに山口はツアー全体のテーマについても言及。「原点に返ろうと、“0から100”というのがテーマで。1曲目(『サンプル』)というのは、現実的なボリュームの“0から100”を体現したのね。どういうことかっていうと……ちょっと実験するよ」と、その過程を改めて説明。マイクを通してない声、アンプから出ている楽器の生音、PAによって増幅された音を実際の演奏を通して聴かせる。続いてPAを担当する佐々木幸生氏、照明の平山和裕氏、レーザーの七条美礼氏を紹介、ライブにおける“チーム・サカナクション”の機能と役割についても詳しく話していく。「ここでは説明しきれないくらい、たくさんの人が関わってます。みんなライブを観に行ったときに、そういうことを意識したら、もっと音楽を多面的に見れるかもしれないね」。そんな言葉からは“自分たちの存在を通して、音楽のいろいろな楽しみ方を紹介したい”という一貫した想いが伝わってきた。

アンコール最後に演奏されたのは、最新シングルの収録曲「グッドバイ」。叙情的なメロディとともに響く「探してた答えはない 此処には多分ないな だけど僕は敢えて歌うんだ」というラインは、“新しい場所に向かって進むんだ”という彼らの意思そのものだと思う。

3月28日、29日の仙台・東京エレクトロンホール宮城公演によって<SAKANAQUARIUM 2014 “SAKANATRIBE”>は終了。4月27日には、この日のライブの映像、メンバーの密着取材などで構成されるドキュメント番組「サカナクション LIVE 2014〜不確かな未来へ舵を切る〜(仮)」(NHK BSプレミアム)が放送される。アルバム『sakanaction』がチャート1位を獲得、幕張メッセ2デイズ・ライブで合計4万人の観客を集め、NHK「紅白歌合戦」にも出演するなど、ロック・シーン、メイン・ストリームの両方で大きな成功を手にしているサカナクションだが、その視点はさらに先を見つめている。山口の「ロックから得られる感動の種類をもっと増やしたい」という言葉は、近い将来、必ず現実となる。この日のライブを観れば、誰もがそのことを確信するはずだ。

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SETLIST

M1. サンプル
M2. アルクアラウンド
M3. セントレイ
M4. 表参道26時
M5. 哀愁トレイン
M6. Klee
M7. エンドレス
M8. シーラカンスと僕
M9. 流線
M10. ユリイカ
M11.『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
M12. インナーワールド
M12. 三日月サンセット
M13. SAKANATRIBE
M14. モノクロトーキョー
M15. 夜の踊り子
M16. アイデンティティ
M17. ルーキー
<ENCORE>
EN1. Ame(B) -SAKANATRIBE MIX-
EN2. ミュージック
EN3. Aoi
EN4. グッドバイ

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DISC INFORMATION

SINGLE 2014.01.15 release
「グッドバイ/ユリイカ」
ビクターエンタテインメント

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「グッドバイ」(MUSIC VIDEO)

「ユリイカ」(MUSIC VIDEO)

LIVE INFORMATION

“VIVA LA ROCK”
2014年5月5日(月)さいたまスーパーアリーナ

“TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTRIVAL 2014”
2014年5月25日(日)新木場若洲公園

“TAICOCLUB’14”
2014年5月31日(土)〜6月1日(日)長野県木曽郡木祖村「こだまの森」

PROFILE

山口一郎(vo、g)、江島啓一(ds)、岩寺基晴(g)、草刈愛美(b)、岡崎英美(key)。2005年から札幌を中心にライブ活動を開始。2007年にアルバム『GO TO THE FUTURE』でメジャー・デビュー。2013年には、全国ツアー<SAKANAQUARIUM 2013“sakanaction”>の幕張メッセ2デイズ&大阪城ホール公演でドルビーラボラトリーズの協力による6.1chサラウンド・システムを実現したほか、NHK「紅白歌合戦」にも出演を果たす。2014年1月にはシングル「グッドバイ/ユリイカ」をリリース。

関連リンク

・ サカナクション OFFICIAL WEBSITE
・ YouTube Channel
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