TK from 凛として時雨 EP「contrast」ディスクレビュー

contrast

EP

TK from 凛として時雨

contrast

Sony Music Associated Records

2014.03.05 release


TKが初EPで描く初期衝動を越えた先の世界

 2013年にバンド結成10周年を記念して日本武道館でのワンマン・ライブを行った凛として時雨。その後のバンド活動が小休止している最中にフロントマンであるTKのソロ活動が再び活発化。初のEP「contrast」がリリースされた。

 凛として時雨が、絶妙なバランスで三角形を成り立せている動かしがたい3ピースであるからこそ、ソロのTKはなにものにもとらわれずに渡された白いキャンバス上で筆を走らせている、そんなイメージが思い浮かぶ。

 思い返せば、2011年にリリースされた初ソロ作『film A moment』も映像付きの新曲とPHOTO BOOK+DVDという形態であり、パーソナルな心象風景を写実的かつ立体的に描き出すツールとしての音と言葉を意識させるものだった。そして、続く2012年の初ソロ・アルバム『flowering』はベースにストレイテナーの日向秀和、ドラムにBOBO、さらにはピアノやフルート、弦楽器などをフィーチャー。用いる音の絵の具を増やしたことで、彼の描く心象風景がよりリアルに感じられると同時に存在感を増した声が伝える柔らかさや温かみに強い印象を受けた。

 2013年には、『flowering』にも参加したBOBO、日向とともにポストロック・バンド、Spangle call Lilli line「nano」のリミックスを担当。そのほかにもSMAPへの楽曲提供やCM音楽の制作を行うなど、彼がぐっと広げた表現の幅は、今作のボーナス・トラックに凛として時雨「illusion is mine」のピアノ弾き語りセルフ・カバーやゲストとしてライブに参加した初恋の嵐「涙の旅路」のギター弾き語りカバーを収録されている。さらには彼自らベルリンで撮影したというジャケットやブックレット、初回生産限定盤DVD収録の映像を盛り込んだ本作「contrast」にも感じられる。それでいて、肝心の作品はというと、自由を謳歌しつつ、タイトル曲から2曲目の「Dramatic Slow Motion」、3曲目の「Crazy Tampern」へと貫かれているファストなテンポ感は初期衝動的なものではなく、繊細な歌詞世界とピアノやストリングスを織り込んだ複雑かつ緻密なアレンジ、そしてポップ感覚が見事に拮抗しており、早くもソロ活動の進化、深みや奥行きを感じさせる、そんな作品になっている。

 6月にはソロ・ツアーが予定されており、そのままの流れで次なるソロ・アルバムを聴いてみたいし、凛として時雨の次なる展開も大いに気になるところ。いずれにせよ、クリエイティビティが高まっているTKの活動は目が離せない。

(小野田雄)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人