asobius – 1stアルバム『pray&grow』に込めた祈りとは? 結成から現在に至るまで、そしてこれからどのような成長を遂げるのか? asobius、初登場。

asobius

ダイナミックで躍動感に溢れ、包容力があってロマンチックで、でも少し下世話でユーモアもある。ギターやシンセのリフもあればボーカルは甘美な旋律を奏で、リズムは歌に寄り添いながらも抑揚をつけてグルーヴを抽出する。そんな贅沢な表現に挑んでいるのが東京で結成された5人組、asobiusだ。まもなく届けられる1stアルバム『pray&grow』は、結成当初はひたすら曲作りに専念していたという意外にストイックな彼らが初めて自分たちの足元を見据えて制作した大きな第一歩となる作品。英語バージョンと日本語バージョンの2枚のディスクを合わせたボリューミーな内容で、彼ら自身の成長を見せつけてくれている。ライブでは指揮者のごとくタクトを振るパフォーマンスも話題のボーカル、甲斐一斗と、ギターの杉本広太に話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 岡村詩野

 

何をやってもそれがasobiusなんだと思える確固たるもの

──アルバムを聴かせてもらって、こういう緻密な構成によってできている曲はどうやって作っているのかが知りたくなりました。曲作りのとっかかりはどこからなのですか?

甲斐一斗 このバンドはまず(パソコンとの)“同期”ありなんです。なのでおおざっぱに作っても必然的に緻密になっていっちゃう。だから……シーケンサーなどを使って音を鳴らすようなところから作る曲もあるんです。

──最初から同期させることがこのバンドのコンセプトだったのですか?

甲斐 そうです。もともと僕とベースの海北(真)くんとでバンドやろうって始めて、そこからメンバー募集していくような流れだったんですけど、それって僕がゲーム音楽や映画音楽が好きでそこから音作りをするようになったからなんですね。で、その後、高校生くらいの頃からミューとかシガー・ロスとかを聴くようになって。ああいうシンフォニックというかダイナミックな音を作りたくなったんですよ。もともと3ピースでも4ピースでも昔からあるバンド編成って、ストイックっていうか制限があるでしょう? ストリングスは入れられない、入れるならほかから来てもらわないととか。そういう制限をとっぱらったところでやりたかったんですよ。

──逆に言えば、なんでも柔軟にやっていける余地を残したバンドでいたいと。

甲斐 そうです。で、僕自身はそのバンドらしさっていうものが、ジャンルとかスタイルじゃなく、何をやってもそれがasobiusなんだと思える確固たるものがあればいいなと思ってやっているんです。もちろん、オーソドックスなギター・バンドとか4つ打ちの音楽とか、そういうものも好きなんですよ。でも、僕がやらなくてもいいなって思うんです。みんなそれやってるよね、っていうのはやりたくなかったっていうか。もちろん、みんなそれぞれ自分たちだけの音っていうのを求めてやっているわけでしょうけれども、自分は節操がない感じでもいいから取り入れたいものはどんどん取り入れる、やりたいことは好きなようにやっていくようなことができればいいなと結成したときに思ったんです。それは今も変わらないですね。

3曲だけを最初の半年間、ずーっとコツコツと仕上げていた

──ただ、asobiusの場合、無軌道に好きなことを取り入れているわけではなく、ちゃんとある程度交通整理されている。つまり、曲をしっかり練って仕上げられているから単になんでもアリな状態ではないですよね?

甲斐 それは多分結成して最初のうちはライブをまったくやらずに曲をひたすら作っていたからじゃないかと思います。それも3曲だけを最初の半年間、ずーっとコツコツと仕上げていたんです。

──その3曲と言うのは?

甲斐 「I’m in the love」と「antheme」と「golden wombs」です。で、この3曲を仕上げることで、僕らの楽曲の基準を作ったんです。これからはこれ以上の曲を作らないとダメなんだっていう。だから僕らのスタンダードになる3曲をまずは丁寧に仕上げることに専念したんです。その3曲を最初にデモとして録音したあとにメンバー・チェンジがあったから、いちばん最初はまだ杉くん(杉本広太)は加入していなかったんですけど、杉くんが加入してからミニ・アルバムを正式にレコーディングしたので……まあ、今の編成の基礎がやっぱりその3曲のレコーディングで出来上がったんじゃないかと思います。でも、それを経験したことで、自分たちの擦り合わせができたと思っていて。そこで、僕が曲の基本を書いているから、こういうことができます、こういうふうにしたいんです、ということをメンバーに伝えることができたんです。だから、今回のアルバムはそのお返しというか、僕はこういうことができるしやりたい、じゃあ、みんなはどうかな? どうやってそこにアイデアを出してくれるかな? みたいなのがちゃんと出せたというか。

──それは甲斐くんとメンバーとのキャッチボールが曲作りの場で行なわれたということ?

甲斐 そうです。ただ、僕が投げるボールは明後日の方向に飛んでいっちゃうんです。“本当はこうやりたいんだよ〜!”って感じで投げて、それを頑張ってみんなが受け止めて、またこっちに返してくれて……の繰り返し。今も基本的にはそういう感じで曲を作っています。で、最近はみんな僕がどこにボールを投げてくるのか予測がつくようになったのか、明後日の方向に投げても黙ってシュッとキャッチしてくれるようになりましたね(笑)。

──バンドを結成したらまずライブをやりたくなる人が多いと思うのですが、ストイックに曲作りに専念したのはなぜですか?

甲斐 正直、ライブをやりたい気持ちはあったんです。でも、半年の間に3曲だけを作っていたわけですけど、3曲じゃライブはできないわけです。それがいちばんの理由。それと、そもそも自分たちはどういうことがやりたいのか、これでいいのか、どういう曲が合うのか、みたいなことを考えてしまったんですね。
杉本広太 そもそもギター2本いるの? みたいな疑問が最初はあったし。シンセも使っていてまだ上モノがいるのかどうかってことをちゃんと位置づける必要とかがあったんですよね。
甲斐 18歳くらいだったらすぐライブハウスに出たい! って走ったと思うんです。でも、このバンドを始めたとき、僕は24歳くらいだったんですけど、その時点で一度挫折みたいなものを味わっていて。実際、18、19歳くらいのときに最初のバンドを始めて、すぐライブをやったけど全然お客さん来ないし……みたいなことを体験したんです。で、繰り返しライブはやるけど、だんだんと楽しくなくなってきて……。その後、ライブハウスで店員のバイトをしたりもしました。友達のバンドのスタッフもやったり……そういう裏方的なことをやったことで、やりたいからすぐライブをやる! って気持ちを押さえることができたんですね。落ち着いて考えられたというか。
杉本 僕がこのバンドに入って、曲が増えてライブができるようになっても、2ヵ月に1回くらいしかしませんでしたね。
甲斐 いや3ヵ月に一本(笑)。
杉本 (笑)でも、ライブをやるだけやって赤字になって疲弊してしまうんだったら、そのぶんしっかりとしたいい曲を作って作品にして……のほうがいいかなっていうのは確かにあるんですよ。
甲斐 そういう考え方を共有できるからこのバンドは面白いんですよ。今の時代って、素晴らしい音楽が生でしか体験できない時代でもないでしょう? もちろん、生だからこそというのもあります。でも、いくらでも再生して楽しめる時代でもある。それなりのものを作って「う〜ん、これならシガー・ロス聴くかな……」って言われてしまうようなものを作ったら終わりだなって思うんですよ。

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