高橋 優 SINGLE「パイオニア/旅人」ディスクレビュー

パイオニア/旅人

SINGLE

高橋 優

パイオニア/旅人

ワーナーミュージック・ジャパン

2014.03.12 release

1万枚限定初回TP盤 <CD+オリジナルトイレットペーパー>
通常盤/写真 <CD>


今をいかに生きるかを問いかけてくる骨太な歌と深遠な歌

 歌を聴く前と聴き終わったあとでは、胸の中の有り様があきらかに変化していく。これは聴き手の内面に影響を及ぼしていく強い力を備えた作品だ。両A面シングルの1曲目に収録されているのはパワフルに跳ねるビートに乗って、骨太なメッセージが届いてくる「パイオニア」。この歌が強い説得力を持っているのは歌詞に嘘がないから、そして強い覚悟を持って踏み込んで言葉が紡がれているから、さらには今の時代に焦点を当てて、鋭く切り込んでいるからだろう。

 己を信じて、独自の道を切り開き、パイオニアとなっていくのは今も昔も簡単なことではないが、情報過多の現在は難易度はさらに増しているように思える。マニュアルや自己啓発本が溢れかえり、ネットの発達によって、自らの発言や行動に対する周囲の反応までもがダイレクトに伝わる機会が増えて、情報という名の凶器が“人と違うこと”への恐怖心を煽っていったりする。そんな時代だからこそ、「胸の中で疼く衝動」「信じて歩み続けよう」といったフレーズがズシッとくる。現代社会のコンサバティブな風潮に喧嘩を売っていくような闘志溢れる歌と演奏は痛快だ。ただし、この歌の根底にあるのは闘志だけではない。「光探すより自分が照らせる暗闇を見つけていたい」など、グッとくるフレーズもたくさんある。愛と闘志とが表裏一体になっているからこそ、胸に響いてくるのだ。

 もう1曲のA面曲「旅人」は時代性を越えて、人間という存在の根源的なテーマを描いた曲。未来を切り拓いていくのが「パイオニア」だとすると、自己の内面へと深く掘り下げているのが「旅人」。抑制の効いた歌と演奏だからこそ、歌に込めた想いの深さ、大きさが伝わってくる。「パイオニア」と「旅人」、異なるモチーフを描いていながら、最終的にはどちらの曲も今をどう生きるかという現在進行形のテーマへと回帰していく。

 3曲目は6thシングル「卒業」のアコギの弾き語りによるバージョン。さりげない素の歌声が歌詞とマッチしている。この曲の表現を借りるならば、「地金」の歌声に宿るたくましさと温かさに胸を揺さぶられた。このシングルのリリース日は震災から丸3年たって、4年目に突入する2014年3月12日。それぞれの想いを重ねていくこともできる懐の深い作品だ。

(長谷川誠)

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