BIGMAMA SINGLE「Sweet Dreams」ディスクレビュー

Sweet Dreams

SINGLE

BIGMAMA

Sweet Dreams

RX-RECORDS/UK.PROJECT

2014.02.26 release

<CD>


BIGMAMAが伝えたかったこと

 タイトル曲の中に、“信じる者は皆救われるとは限らない”という歌詞が出てくる。そして、“偽って出し抜いて/迷える子羊(僕ら)は/最後に心から笑えるのかな”と続く。さて、皆さんはこの部分にこの5人たちの思惑をどう聴き取るだろうか。ある種の諦念、またはある種の絶望をそこに見いだす人、もしくは、それさえも通過した後の妬みに読める人もいるかもしれない。だが、こうしたフレーズが、“甘い夢”と題されたこの曲の中に中心に置かれていることの意味を考えたとき、筆者はここにギリギリのところに追い込まれた者たちの断末魔にも近い叫びと、そこから抜け出たときの歓びの雄叫びと横一線になって、どちらとも言えないのっぺらぼうの状況を実感してしまうのだ。

 それは、もしかすると、これは歓びの感情です、これは悲しみの感情です、と断言できないことに対する作り手であるBIGMAMAのジレンマを表現しているのかもしれない。例えば、今、震災から3年が経過した今も避難所暮らしをしている方々は、今ここで流す涙がどういう涙なのかがわからなくなる瞬間が訪れるという。もしくは、本当に楽しいと思えることがどこまで楽しいものなのかの尺度がわからなくなるということもあるに違いない。BPM130強の疾走感を伝えるシンプルなビートと、小刻みに言葉をつなげていく金井政人のボーカルが表出するのは、そうした正しい感情に対して麻痺した感覚へのどうしようもない憤りと、喜怒哀楽の差が失われていることへの畏怖ではないかと思う。ダイナミックに叫ばれるサビ部分で金井は“良い夜を、良い笑顔を、良い叫びを……”と綴っている。どんな人にとっても泣き叫ぶようなことはないほうがもちろんいい。だが、もし、そういう状況になったら、思いきり泣き叫ぶがいい。それから、もう何の迷いもなく笑顔を見せればいい。あるいはこの曲で彼らが伝えようとしているのは、笑顔と涙の意味が明確にならなくなっている我々の感覚へのちょっとした警鐘ではないだろうか。

 そこに“甘い夢”とタイトルを与える彼らはあまりにも青く情熱的に過ぎるところがあるかもしれない。甘くて溶けない夢などどこにもない。ないからこそ求めるのだ、というロマンティシズムと、それをてらいなく言葉にできる器の大きさを実感する。ジャミロクワイとJUJUの代表曲をそれぞれカバーしたカップリングの選曲にも、彼らのそうした理想郷が見て取れるのではないだろうか。回答はどこにもない、目の前で起こった事実に対する本能だけが真実なのだ。

(岡村詩野)

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