曽我部恵一 ALBUM「まぶしい」ディスクレビュー

まぶしい

ALBUM

曽我部恵一

まぶしい

ROSE RECORDS

2014.03.05 release

初回限定盤 <CD+3Dメガネ> ※3Dジャケット仕様
通常盤 <CD>
アナログ盤 <2LP+CD+3Dメガネ> 


キミの音楽をボクは聴きたい

 一説によると、面白いテレビ番組を探してチャンネルをザッピングするとき、その番組を観るかどうかを判断する時間は平均3秒らしい。だからテレビというのは3秒に1回、人の興味を引くトピックを盛り込んで作るそうだ。テレビ、ラジオ、インターネット。多様なメディア・ツールが進歩して、いろんなことがインスタントになった。より早く、より簡単に、よりわかりやすく。送り手は、せわしい受け手にウケるトピックを狙い撃たなければならない。

 そんな時代だから、当然音楽もせわしくなってくる。リスナーの耳を意識して、わかりやすくてなんだか面白そうな楽曲をドシドシ作らなければならない。そうでなければ売れないし、つまり職業として成立しない。もちろん、そのニーズを狙い撃てる才能は尊くて素晴らしい。けれど、その風潮が本来ミュージシャンの持つピュアな創作欲求をねじ曲げてしまうことも少なくないだろう。“ミュージシャンが”音楽を楽しむ、というのは、どういうことか? 本末転倒はなはだしい問題ではあるが、そんな問いに、曽我部恵一の『まぶしい』は答えてくれた気がする。

 バンド、弾き語り、アカペラ、ラップ、ポエトリー、実験的なアプローチ……かつてない幅広いスタイルで、真っ向から表現することに向き合った全23曲、トータルタイム67分。男女のこと、希望のこと、孤独のこと、漠然とした何か。ありのままに歌われた楽曲たちは、時にマニアックで、ニッチだったりもする。けれど、それが世界のどこかにいる受け手に届き、同調し、心を揺らすことこそが、ミュージシャンと聞き手の元来あるべき関係性だと思うのだ。音楽を自分らしく探求し、楽しむこと。それがいとりよがりになってしまうかどうかが、優れた表現者の線引きになるだろう。それで言うと、曽我部恵一は間違いなく、優れたミュージシャンだ。アルバムのラスト、表題曲のなかで、彼は当たり前のことを、当たり前のように歌う。その一節は、この時代においてあまりにも美しく、強く、輝いているように感じる。

“例えばうまく歌えなくても完璧じゃなくても/歌おうと思ったことが歌なのだから”

 優れたミュージシャンには、つねに自由であってほしい。カッコよくて、大切なことを教えてくれる、憧れのヒーローであってほしい。そんな、まぶしい存在でいてほしい。そういれる世界であってほしい。そう強く願う。

(小島双葉)

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