宇宙まお ALBUM「ロックンロール・ファンタジー」ディスクレビュー

ロックンロール・ファンタジー

ALBUM

宇宙まお

ロックンロール・ファンタジー

ランデブー

2014.03.05 release

<CD>


“割り切れなさ”が引き寄せた、向こう側の景色。

 学習机の小さな灯りに照らされた交換日記を、すぐ後ろから覗き見しているような気持ちにさせられる、非常にパーソナルなロック・アルバムだ。“ロックンロール”、そして“ファンタジー”という大技をアルバム・タイトルに並べ、限界までハードルを上げたうえで爽快な背面跳びを決めてみせる、恐いもの知らずのまっすぐさ。すべての楽器が本来の姿のままに鳴り響く、カラリと乾いたナチュラル・サウンド。そこに、ささやかな喜びを忘れないための付箋のようでもあり、悲しみを鋭く研ぐための備忘録のようでもある言葉たちが、じっくりと焼きつけられている。

 ゴツゴツとしたアコースティック・ギターのストロークに乗せ“生きるように ただ 歌いたい”と宣言する「ドアー」から、亀田誠治のプロデュースによる向かい風のドライブ感に“あんた”という二人称を突きつけた「つま先」へ。それでも鎮火することのない憤りを歌にして残すことで“新しい誰かが そばにいても あなたに 聴かせることがあるように”と願う「わたしが死んでも」は、まさに現代の恨み節だが、そのメロディのあっけらかんとした跳躍力こそは前半戦のハイライト。宇宙まお流のフィラデルフィア・ソウルにして決定的名曲「あの子がすき 2014 mix」への流れも素晴らしい。ボーイッシュな語り口と柔らかで女性的なハイトーンを見事に使い分けた「声」。ニュー・バージョンで届けられた「ロックの神様」。そして“去り際の君が 一番好き”という終わりの情景を刻んだ「哀しみの帆」で、アルバムはゆっくりと幕を閉じる。

 デビューから2年、ついに届けられたフル・アルバムだが、まさにこれは宇宙まおのマイルストーン。同じ壁の同じ場所にボールを当て続けたからこそのブレイクスルーであり、だからこそ勝ち得ることのできた“向こう側の景色”なのだと思う。本音だけで生きることはできないという本音や、裏返しの感情にこそ潜む本当の自分。そんな“割り切れなさ”を歌にして吐き出すことで、なんとか明日を引き寄せていく。そんな表現にこそロックを感じる向きには、このアルバムは宝物になるはずだ。

 ペンローズの三角形を翼に銀河を進むアートワークの変化には驚かされたが、これも自らのその先をしっかりと見つめる音楽航海を表現したものなのかもしれない。

(祭蓮しずか)

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