FUNKIST ALBUM「Gypsy」ディスクレビュー

Gypsy

ALBUM

FUNKIST

Gypsy

EARTH MATES MUSIC

2014.03.05 release

<CD>


現実という名の荒野を生きるためのライフ・ミュージック

 前作『7』以降、ドラマーの脱退、メジャー・レベールから離れ自身のレーベル“EARTH MATES MUSIC”を立ち上げ、昨年6月にはマキシ・シングル「ORACION」をリリース。そして全国各地でクリエーターたちとライブを展開した“Japarican Gypsy”ツアー。しかもこのツアー、東北と南アフリカの子どもたちへ楽器を届けるという目的も擁していた。まったく、試練を前進のガソリンに変換するFUNKISTらしい活動ぶりだ。

 さて、約2年ぶりの本作。普通というか、バンド・フォーマットに則って運営される集合体なら、これだけ様々なサウンド志向を持つ曲がアルバム1枚に混在したら、物理的には支離滅裂になりそうなものを、むしろ爆発するエネルギーの素直な発露にしか受けとれない。こんなアルバムはFUNKISTにしか作れないだろう。

 ギター・ロックとレゲエやアフロ・ミュージックが同じように背景にある彼らだが、今回は1曲1曲さらに振りきっている。冒頭の「54bombs」「VOICE」からしてソリッドなロックとレゲエが並走しているし、続く「5seconds」はパーカッションで作ったようなドラムンベースから8ビートに熱さとクールなセンスを同時に感じることができる。言葉にすると”融合”のイメージが沸くだろうが、いい意味でこのアルバムはもっと粗い。溢れでたインスピレーションをそのまま録って出し! そんな勢いのあるテイクだらけなのである。

 そして前述の南アフリカの親が育てられない子どもたちが暮らす養護施設“Village Safe Haven”の子どもたちの声が愛らしく、心の底から温かなものが込み上げる、ラフなテイク「Where the sun can shine」のドキュメントも素晴らしいし、ストリングス隊の中にはTHEラブ人間の谷崎航大の名前も見つけられる「Blind world」の仰々しくないスケール感も無二。まさにひとところに安住しないジプシーのような音楽の旅を続けてきたからこそ自ずと誕生した、様々な味の音楽の果実たち。そして極めつけは、ギター・ロックの疾走感とレゲエの体温がだんご状に突進してくるラストの「ペンギン」のがむしゃらさったらない。思わずその勢いに笑ってしまったぐらいだ。ボーカルの染谷西郷は、いつも自分のすべてを賭けて、目の前にいる誰かを笑顔にすることばかり考えている、と思う。でもそれは命に限りがあることを彼の感性が無視できないからだろう。

 ポジティブでタフ、行動力に溢れるバンドは、その感性を音楽的なアップデートに変換することに成功した。こんなバンド、やっぱりほかにいない。

(石角友香)

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