亀田誠治×津野米咲(赤い公園)絶対的なスペシャル対談 後編 –

亀田誠治×津野米咲(赤い公園)

前編としてお読みいただいたのは、亀田誠治サウンド・プロデュースによる赤い公園の新曲「風が知ってる」を中心とした音楽談義でしたが、後半ではテーマを広げ、おふたりが考えるJ-POPの特性、および、これからの可能性について語り合っていただきました。とはいえ決してカタい話ではありませーん。なお、J-WAVE「TOKYO REAL-EYES“SPEAK OUT!”」の番組内で津野米咲が亀田誠治に対して聞いた“日本の音楽のなかでいちばん好きな歌詞”に関しては、この後編で、その完全版を再収録させていただいております。

FACILITATION & TEXT BY 小貫信昭 / PHOTOGRAPHY BY 冨田望

J-POPって聞き手に心を込めた “おもてなし”

津野 J-POPの定義ということですが、なんでしょうね。歌詞が良くて、メロディが良くて、ふと歌いたくなる、みたいなことなんでしょうか。

亀田 そうだね。あとはなんだろう……。エバーグリーン性というか、永く残っていくものが僕は好きだけど。

津野 特色と言えば、J-POP特有のコード進行というのがあると思うんですけどね。いきものがかり、とか、スキマスイッチ、とか、泣けるポイントがあるというか……。もちろん海外のアーティストも泣けるポイントはあるんですけど、それとはちょっと種類が違うんですよね。J-POPのいいところは、切なくても、それをアップテンポで笑い飛ばしたりもできるところですよね。そこからのワビサビというか……。それが私は好きですね。

亀田 (作る側としては)いろいろな聴き方のチャンスを提案したいと思うんですけど、J-POPって聞き手に心を込めた “おもてなし”をしているというかね。売れるとか売れないとかとは別に、聴く人のその時々の気持ちに届くよう、それこそコード進行であったりメロディであったり歌詞であったり、アレンジだったりで、すっごく丁寧に作られている音楽だと思う。自分も作っていて本当にそこを考えますよね。北は北海道、南は沖縄、おじいちゃんから小学生、もしかしたらお腹の中の赤ちゃん、胎教としても聴いてもらえるみたいな、そういう“体にいい音楽”、“染みる音楽”というのを自分も作りたいと思ってます。そしてそういう観点で作ると、不思議とJ-POPと呼ばれる音になるんです。ある意味それって“日本人そのもの”とも言えるんじゃないかな? すべてを合理的に片付けることができなかったり、ついついセンチメンタルに引っ張られたり、でも手先は器用だったり、困難なときでも、決して暴動とかは起こさないのが日本人だから。

津野 良い意味でも悪い意味でも、保守的と思えるようなところは、音に出てるとは思いますけどね。

亀田 逆に言うと、今言ったようなポイントを外すとJ-POPっぽくなくなるんだよね。ある意味洋楽っぽいのかもしれないけど、なんか物足りなくなっちゃう。僕自身がどれくらいのことやってこれたかはわからないけど、これまでにいろいろな素晴らしいチームがJ-POPを作ってきたなかで、品質は上がっているんじゃないかなってポジティブに捉えてる。どうにか自分が生きている間に、音楽単体で世界中から愛されるJ-POPが生まれるといいなぁとは思っているんですけど。

ここからはJ-POPの逆襲が始まる

津野 意外と海外のパンク・シーンとかにはJ-POPをカバーする人たちが何人もいるし、ウィーザーとかBoAの「メリクリ」をカバーしてたりとか、メチャクチャ好きじゃないですか? でもそれは、さっきも言ったコード進行の泣きの種類の違いへの“ないものねだり”というか、音楽をやってる人たちにとって憧れるものというのが今(の段階)なんでしょうけど、一般の向こうの方たちが憧れとともに聴いてくださるのも時間の問題な気がするんですよ。今はまだ、アニメを抜きにしては世界に発信する場所がないにしても……。最近は日本のフェスにJ-POPの方たちも出るようになってますけど、海外のフェスなんかにも出ていけるようになっていったらいいなぁって思うんですけどね。

亀田 でも、きっとそうなっていくんじゃないかな。僕はそれが自分の取り組むべきライフワークのような気がする。自信を持ってそのことを伝えていきたい。ねえ、ときどきいるじゃないですか?J-POPに対してネガティブなこと言うヒト。僕は洋楽と較べても全然カッコ悪いと思わないし、単純に洋楽にもいいものがあってJ-POPにもいいものがあるだけだと思う。なのにわざわざその違いを定義づけようとする気持ちがわからない(笑)。

津野 私、自分の世代のこと考えて思うんですけど、J-POPと言っても、槇原敬之さんとかを聴く機会は減ってきてるんですね。J-POPが様々な要素を取り入れて、違うカルチャーに寄ったもののほうが面白いとされることが多くなると、まずみんな、そっちに注目するので。もちろんパッと新しいものに飛びつくこともすごくいいことだと思うし、それも進化だと思うからいいんだけど、どんなときもいい曲はいい曲のはずなのに、何かおざなりというか“もったいないことになってる”ものがあるような気がしていて……。でも、今は洋楽のロックがカッコいいっていうヒトもちゃんと聴いてみればわかるだろうし、ここからはJ-POPの逆襲が始まると思うんです。

亀田 赤い公園がそう言ってのけるというのが本当に素晴らしいし、僕が君たちの音楽を愛してしまう理由でもあるんだけどね。

津野 一応、ずっと言っているんですけどね、「私たちはJ-POPだ」って(笑)。ここのところシングルでカバーをやっているのもJ-POPへの愛を込めて、ですから。「風が知ってる」でも平井堅さんの「POP STAR」をやらせていただいてます。

亀田 あの曲はまさに僕のプロデュース作なので感無量ですよ。しかも、10年20年経ったものじゃなく、まだ出てから7〜8年のものに機会が巡ってカバーしてもらえるというのはね。しかも自分の娘と言ってもいい世代の赤い公園のみんなが、なんのケレン味もなくやってくれて、「亀田さん、聴いて〜」って(笑)。

津野 それは自分でも“怖い物知らず”すぎた(笑)。

亀田 でも、そうして世代が繋がっていっているというのはうれしいことだし、そこには光が見えるなぁって。

津野 「POP STAR」、いい曲ですから!

亀田 そう。そこだけこだわればいいんだよね。

津野 私たちがやったのはネガティブでもポジティブでもないカバーというか、自然な気持ちで“カバ−したらどうなるんだろう?”ってやってみたんです。でも、いい曲はどうやってもいい曲なんで。

亀田 そのとおり! 心配いらないよ。今度は、曲のほうが赤い公園の個性を引き出してくれるんだよ。カバーというのはそういうものだから。

歌詞って歌ってみて“涙が出るかどうか”が最大の基準

津野 改めて質問したいことがあるんですけど、いいでしょうか。ここまでJ-POPの話をしてますが、改めて亀田さんの好きな“日本の音楽のなかでいちばん好きな歌詞”を教えてください。

亀田 いっぱいあるけれど、まず東京事変の「閃光少女」。生きているって感じがする。自分が書いたメロディに林檎さんが歌詞をつけてくれたんだけど、大好きですね。

津野 わたしもあの曲、すごい大好きで、今のバンドでもコピーしましたね。“刹那に生きることは、特別切ないことじゃないんだぞ”っていうメッセージが込められていて、大好きです。

亀田 結局、歌詞って歌ってみて“涙が出るかどうか”が最大の基準になってて、例えば「閃光少女」も“切り取ってよ、一瞬の光を”の“光を〜”のところを口ずさむと、毎度泣けちゃって自分の声が震えてしまう。それくらい五感を刺激されるんです。

津野 コード進行がキュンとくるっていうのもありますし、そこにくる言葉の選び方がやはり林檎さんは自分で曲を作れる人だっていうのもあって、マッチング感がたまらないというか……。私もいつもそう思います。

亀田 もう一曲言っていい? 槇原敬之くんの「ペンギン」なんですよ。

津野 これはなぜですか?

亀田 出会ってしまった人と一緒に居れなくなる瞬間……。それも、もう永遠に居られなくなるかもしれないという、人生のなかでしょっちゅう起こることを、すごく美しい背景でマッキーが代弁していて、もうホント僕、この曲ダメなの。泣いちゃうの。サビのところの“たぶん君と僕とじゃ行けない場所が 二人の行かなきゃいけない場所”っていう、ここに人生のすべての物語が詰まっている気がする。例えば今米咲ちゃんと話してて、こういうことが起こらなければいいなぁと思うし、でも起こってしまったときも受け入れて、音楽家として何かを作っていかなきゃいけないんだろうな、という決意になる曲なの。

亀田さんの笑顔はいろいろなこと知ってる笑顔

津野 お聞きしてて、「閃光少女」と「ペンギン」には共通している部分があるように思うんです。どちらも生きてきたということはサヨナラもあるし、当たり前に悲しいことだったりするのは特別なことじゃなくて、それを受け入れて、ただ落ち込んでるだけじゃなく、時間に忠実に前を向いていく曲のように思えるんですよね。

亀田 多分、僕はそういう曲が好きなんだと思います。あともう一曲。チャットモンチーの「染まるよ」。

津野 わーこれはもう、いっつも話しますよね。赤い公園のメンバーとも。

亀田 これもさ、“手放していかなきゃいけないものがある”ときの気持ちを歌ってると思うんですよ。

津野 言葉が痛々しかったり生々しかったりするんですけど、曲調によっても聴こえ方が違ってきたりするんだと思うんですよね。この曲の場合は最小限のサウンドで、最小限の楽器でやってるからこそ出てくる女性の力強さみたいなものがこの歌詞を引っ張っていってる気がします。リズム(のスタッカート)とのかみ合いもあって、特に“わたしより好きな”の“わぁ、たぁ、し”のとこがたまらん。

亀田 たまらんよねぇ。挙げればもっと山ほどあるんだけどねー、好きな歌詞。僕が選ぶものって共通してるものってあるかな?

津野 ありますよー。亀田さん、いつも笑顔じゃないですか? でも“亀田さんの笑顔はいろいろなこと知ってる笑顔なんだな”ってことが、これでバレちゃいました。

亀田 あれあれ〜。

津野 亀田さんに“日本の音楽のなかでいちばん好きな歌詞”を挙げていただきましたが、音楽の聴き方っていろいろあるし、J-POPにしても、その一面だけをみて敬遠するのではなくて、よく聴いてみてほしいし、みんながいいなって思う曲が、私たちの曲だけじゃなくてもこの世にもっと増えたら幸せだなって思いますけどね。

亀田 そう。自分のものじゃなくてもいい。それをみんなの持ち物にしたいよね。“亀田音楽専門学校”みたいなことやらせていただいているのも、そのためなんです。もはやこれは僕の性ですね。

津野 亀田さんはまさに、J-POPの伝道師ですね!


赤い公園

あかいこうえん/佐藤千明(vo)、津野米咲(g)、藤本ひかり(b)、歌川菜穂(ds)。高校の軽音部の先輩後輩により’10年に結成されたバンド。2012年2月と5月のミニ盤『透明なのか黒なのか』『ランドリーで漂白を』でメジャー・デビューを果たす。約半年の活動休止期間を経て2013年7月3日に復帰第一弾作となるシングル「今更/交信/さよならは言わない」をリリースし、同年8月に1stフル・アルバム『公園デビュー』を発表している。発売されたばかりの「風が知ってる/ひつじ屋さん」に続き、3月12日にはこちらも亀田誠治がプロデュースを手がけた「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」をリリースすることも決定している。

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ラジオ番組情報

J-WAVE(81.3FM)「TOKYO REAL-EYES」
毎週金曜日24:00〜28:00
この番組内にて佐藤千明の“SPEAK OUT!”(25:30頃〜25:50頃登場)が放送中。初回に佐藤千明の実のおばあちゃんが登場したり、自身で原作・脚本・出演を行ったラジオ・ドラマ「クリスタル・ストーン」をオンエアしたり、かと思えばリスナーの恋愛相談に答えたりと、深夜にいろんなことしてます。ぜひチェックしてみてください!

亀田誠治

かめだせいじ/‘64年、アメリカ、ニューヨーク生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。‘89年、音楽プロデューサー、ベースプレイヤーとして活動を始める。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツをはじめ、スガ シカオ、アンジェラ・アキ、JUJU、秦 基博、いきものがかり、チャットモンチー、MIYAVIなど数多くのアーティストのプロデュース、アレンジを手がける。椎名林檎らと東京事変を結成し‘12年閏日に解散。‘07年、第49回日本レコード大賞、編曲賞を受賞。昨年には4年ぶり2度目となる自身の主催ライブイベント「亀の恩返し」を武道館にて開催。映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の音楽監督を務めるなど、様々なかたちで作品を届けている。また、オフィシャルサイトなどで、自身の知識をフリーでシェアし、新しい才能を応援する「恩返し」プロジェクトを展開中。

インフォメーション

“第二回亀田杯 ベース選手権大会” 開催
現在、第一次審査の応募受付中!
くわしくは、第二回亀田杯 ベース選手権大会”オフィシャルページ

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ラジオ番組情報

J-WAVE(81.3FM)「BEAT PLANET」
毎週月〜木曜日
この番組内にて「BEHIND THE MELODY〜FM KAMEDA」(13:00〜13:10登場)がオンエア中。2012年からスタートしまもなく400回を迎えるこのコーナーでは、亀田誠治がリスナーの疑問に答えたりおすすめの曲を紹介したりと音楽のアレコレを解き明かしてくれる濃厚な30分です。公式ブログにはオンエア分の凝縮バージョンがUPされているので、聴き逃した方や過去の放送内容が知りたい方はぜひそちらもチェックしてみてください!

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