bonobos ALBUM「HYPER FOLK」ディスクレビュー

HYPER FOLK

ALBUM

bonobos

HYPER FOLK

SPACE SHOWER MUSIC

2014.03.05 release

<CD>


心躍る、極楽浄土のBGM

 生きることは、パッとしない。何がどうというわけではないけど、釈然としない。安定した日常はありがたいけれど、爆発的な新鮮味がどこかに落ちていないか、心はソワソワしている。漠然とした不安と焦燥感を抱えながら日々を生きる人が、今の世の中では大半だと思う。それこそ、“死にたい”と思っているような人にこそ、今作をぜひ聴いてほしい。

 前作『ULTRA』から2年3ヵ月ぶりに放たれた、bonobos通算6枚目のアルバムとなる今作『HYPER FOLK』。全14曲、そのすべてが、絶対的な悦びと圧倒的な希望に満ち満ちている。原始的なまでにダイナミズム溢れる重厚なリズム、過剰なまでにときめきを掻き立てる管弦楽、眩しく煌めくシンセサウンド、蔡忠浩(vo、g)の紡ぐ、年代や国境さえも容易く飛び越えてしまうような言葉とストーリーの連なり。まるで、古来より口承されてきた民謡か、はたまた遠い未来のポップスかのような、揺るぎない音楽がここにある。

 311以降の日本で、リスナーの耳も大きく変わった。耳触りの良い言葉を並べたキレイな曲というのは、どこか芝居がかっていて白々しく感じてしまうようになった。誤魔化しのきかない現状で求めるのは、暗澹(あんたん)たる気持ちを麻痺させてくれる、享楽的なもの。もしくは、本当の意味で、己が必要とする有意義な音色や言葉だ。この時代に、彼らの音楽は必然性を持って生まれている。言葉の一欠片、一瞬の一音が叫んでいる。“世界は、命は、光に溢れている!”と。きっと、極楽浄土に流れているBGMは、こんな音楽たちだ!

 前人未到、最早神々しささえも感じるステージへと彼らは到達した。その領域にありながら、独自のポピュラリティを保持する才能は間違いなく唯一無二。聴き終えて残るのは、ある種の信仰心にも似たようなリスペクトと恍惚感。新感覚の愉楽を、ぜひ多くの人に体験してほしい。

(小島双葉)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人