亀田誠治×津野米咲(赤い公園)絶対的なスペシャル対談 前編 –

亀田誠治×津野米咲(赤い公園)

これからお読みいただくのは、2月14日に放送されたJ-WAVE「TOKYO REAL-EYES“SPEAK OUT!”」における亀田誠治と赤い公園の津野米咲の音楽談義に加え、WHAT’s IN? WEB用にあらたに対談していただいた内容を含め、記事として構成したものです。赤い公園の3rdシングル「風が知ってる/ひつじ屋さん」は、亀田のサウンド・プロデュース(「風が知ってる」のみ)であり、話題の中心をそこに置きつつ、話は多方面に広がっていきます。今回はその前編。でさっそく始めましょう。ほらほら。楽しく弾むふたりの会話が、どこかから聞えてきましたよ。まずは出会いから……。

FACILITATION & TEXT BY 小貫信昭 / PHOTOGRAPHY BY 冨田望

この“知りたい欲”で、亀田さんのいいところ盗みたい!

津野米咲 たしか最初(の出会い)はフェスですよね。

亀田誠治 2年前の、東京事変が解散する直前ですね。“EMI ROCKS”(2012年2月19日 @さいたまスーパーアリーナ)という音楽フェスがあって、そこで本番の前日に、僕は赤い公園のリハ−サルを観ちゃったんだよね。そのとき、“今まで観たことも聴いたこともない音楽”を奏でる少女たちを観てしまって、もうね、一目惚れで。

津野 いやもう、恐れ多いです。ありがとうございます。

亀田 たしかバックステージで楽屋まで押し掛けて行って、「とっても良かったよ、頑張ってね」って声をかけたんだよね。ちょうど東京事変が解散するということもあって、なにか新しい世代にひとつ“バトンを渡したい”というのもあって言ったことでもあったけど。それからは、お互いたまたまとなりのスタジオでレコーディングしてたりとかっていうのがあって……。あと昨年の秋、福島でやった “風とロック芋煮会”でも一緒になって、わいわい楽しく喋ったよね。

津野 私、そのときに“なんか一緒にお仕事する気がするなぁ……”って思ったんです。まだなんにも決まってないときなのに、予感がして。もう、生意気な予感だったんですけど……。そのあと、たまたまスタッフさんから「亀田さんにお声がけしませんか?」って提案いただいたんです。私たち、これまでプロデューサ−さんを立てずにやってきたんですけど、なんの抵抗もなく“ぜひお願いします”ということで、そしたら、一緒にお仕事させていただけることになって……。

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亀田 実は僕はね、赤い公園に一目惚れして、“バトンを渡したい”みたいなことを思いつつ、その一方で赤い公園という唯一無二のバンドのことを考えると、“むしろプロデュ−サ−とか共同制作者みたいなヒトがいないほうが、自分たちの音楽を作れるんじゃないか?”とも思ってたの。実際、そうやっていくのかなって思ってたら、“亀田さんと一緒に作りたい”って話がきたんです。

津野 私も実は、自分たちだけでやっていくんだって思ってた時期もあったんですが、ただ正直、短い間のなかで活動を休止したりだとかもあったし、ヒトと一緒に作る楽しさが、だんだんわかってきて、もっといろいろなことを知りたいと思っていた時期でもあったんです。ならこの“知りたい欲”で、亀田さんのいいところ盗みたい! という(笑)。

亀田 もう、これからもどんどん盗んで!ホント全部あげます。僕の持ってるもの何もかも!(笑)。

“体温は低いけど熱量は高い”みたいな世界

津野 今回、「風が知ってる」のデモが出来た段階で、私はギターを入れてなくて、そのかわり、歌のメロディとは別に、最初はシンセで強烈な対旋律を入れてたんです。それをそのまま亀田さんにお渡ししたら……。なんと、どうなったんでしたっけ?

亀田 シンセがなくなり、シンセが奏でていたメロディがギターになっていたという……。

津野 あれは衝撃でした。あの丸いシンセの音が、ギターにより歪んだことによって逆に美しさが増すというのはすごいことで……。あの日のことは忘れられません。亀田さんのところへ行って、初めてギターを入れてくださった音源を聴いたときは、“こんなに綺麗な曲がこの世にあるのか”って。きっと私なら、何十時間考えても思いつかなかったです。

亀田 実は、“体温は低いけど熱量は高い”みたいな世界を作りたかったんですよ。だったら“ギターかもしれない”って思って。たしかあのときは、わりと調子いいこと言ったんだよね。「とにかく一回、オレに任せて」って(笑)。

津野 そう。頼もしいことをおっしゃってくださって。でもホント、死ぬまで忘れられない日になったと思います。

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歪んでいても美しいものは美しい

亀田 あの日はじめて僕のデモを聞いたとき、米咲ちゃん、たしか、ちょっとウルっときてた?

津野 きてましたねー。自分の曲で初めて涙が出るような……。あの日の空の感じだとか、吹いてる風の感じだとかも覚えてます。あの、亀田さんはプロデュース頼まれて、歪んだサウンドにするのか綺麗なサウンドにするのかを選ぶときって、基準はあるんですか?

亀田 マイクに向かってワーッって大声を出すと音は割れるでしょ? 歪みって、そんな押し出されて込み上げてくる感情の分量を表しているような気がするんです。もしかして僕は、それを歪みの量で表現しようとしているのかもしれないね。これがまずひとつ分析できていることです。もうひとつは、今言ってくれたように、周りに歪んだ音色があることで、ほかのものがクッキリ見えたり美しく見えたりする気がするんです。僕は歪んでるからロックだとか全然思ってなくて、歪んでいても美しいものは美しいし、それと同時に、歪んでいない、綺麗で透明なものも大事にしたい。スタジオで僕は、だから“透明感”という言葉もよく使うんですよ。

津野 私は今回、亀田さんとご一緒させていただいて、そのことを初めて知りました。すごい勉強になりました。

亀田 あまり汚しすぎても人はそれを美しいと思えなくなる。そのことを常にニュートラルに判断できるようにしたいなって思いますね。感覚的にやったとしても、検証もちゃんとするというか。さっき「なんでも盗んで」とか言ったけど、亀田誠治、僕もまだまだ勉強中でございます(笑)。

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津野 「風が知ってる」では、ほかにも間奏のふたつの鍵盤の音のバランスのこととか、いろいろなやりとりをさせていただきましたけど、ともかくギターのことが衝撃的でした。

亀田 あとは全体のミックスをするとき、僕がいちばん最初に提案したのは歌が大きめのバランスのもので、そしたら米咲ちゃんに「メロディやハーモニーともっと調和の保てるバランスにしたい」と言われてドキッとした。“あ、そうか!”って。

いろんな時間をいろんなヒトと過ごせる曲が、私は好きです

津野 あの曲は、ちーちゃん(佐藤千明)の声の出方が沈まない感じだったし、なのでちょっと下げても、いい感じになりましたよね?

亀田 米咲ちゃんは、的確にハッキリその場で感じてることを言ってくれるので、こちらもすごく気持ち良くスピーディーに対応できるんです。“自分はこうしたい”ということを、ちゃんと表明してくれるから。「ちょっと微妙なところなんですけど……」みたいな単位では、僕たちは会話してない感じがする。万事うまくいってるときはふたりで“うぁぁぁー最高!”って盛り上がって、逆に、違うときにはちゃんと“違うね!”って話になる。

津野 顔(の表情)も固まったままで「あのぉ……」って。でも、言うの結構緊張するんです。ハキハキと言いつつも緊張してる(笑)。

亀田 ホント? でも主体性をもって自分がいいと思ったこと言わないと、光るものは作れない気がするな。プロデュースしてる僕の立場って、そうじゃないとアーティストに一発で見抜かれてしまう。迷いのあるものを投げると、必ず砕かれる。

津野 私も亀田さんにデモとか持って行くときは、“もうこれ以上ない”ぐらいに思うものを持っていかないと意味がないと思いながらやってましたから。

亀田 今回、「風が知ってる」を一緒に作らせてもらったけど、僕は名曲だと信じて疑わない。文句無しの太鼓判!ただ、これから5年、10年経っていくうちに、いろんなものが、純粋なこの曲に “食いついてくる”ような気がする。でも、どんな悪い奴にも食いつかれても生き残っていくのがエバーグリーンな名曲なんだと思う。だから僕らが作る時点で“弱っちいもの”だけは作っちゃダメなんだ。それをやると、時の流れやヒトの気持ちの変化のなかで先細りしていっちゃう。でも今回、そうならない音楽が確かに作れた気がしますね。

津野 残っていかないと、そのヒトが歳を取っていくとき、思い出と一緒に居られないですからね。すぐになくなっちゃうんだったら、思い出すことすらできない。いろんな時間をいろんなヒトと過ごせる曲が、私は好きですね。

進行役 「風が知ってる」が耐久性と体力があるものになってたらうれしいですね。

亀田 耐久性ねー。いいこと言う(笑)。

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赤い公園

あかいこうえん/佐藤千明(vo)、津野米咲(g)、藤本ひかり(b)、歌川菜穂(ds)。高校の軽音部の先輩後輩により’10年に結成されたバンド。2012年2月と5月のミニ盤『透明なのか黒なのか』『ランドリーで漂白を』でメジャー・デビューを果たす。約半年の活動休止期間を経て2013年7月3日に復帰第一弾作となるシングル「今更/交信/さよならは言わない」をリリースし、同年8月に1stフル・アルバム『公園デビュー』を発表している。発売されたばかりの「風が知ってる/ひつじ屋さん」に続き、3月12日にはこちらも亀田誠治がプロデュースを手がけた「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」をリリースすることも決定している。

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ラジオ番組情報

J-WAVE(81.3FM)「TOKYO REAL-EYES」
毎週金曜日24:00〜28:00
この番組内にて佐藤千明の“SPEAK OUT!”(25:30頃〜25:50頃登場)が放送中。初回に佐藤千明の実のおばあちゃんが登場したり、自身で原作・脚本・出演を行ったラジオ・ドラマ「クリスタル・ストーン」をオンエアしたり、かと思えばリスナーの恋愛相談に答えたりと、深夜にいろんなことしてます。ぜひチェックしてみてください!

亀田誠治

かめだせいじ/‘64年、アメリカ、ニューヨーク生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。‘89年、音楽プロデューサー、ベースプレイヤーとして活動を始める。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツをはじめ、スガ シカオ、アンジェラ・アキ、JUJU、秦 基博、いきものがかり、チャットモンチー、MIYAVIなど数多くのアーティストのプロデュース、アレンジを手がける。椎名林檎らと東京事変を結成し‘12年閏日に解散。‘07年、第49回日本レコード大賞、編曲賞を受賞。昨年には4年ぶり2度目となる自身の主催ライブイベント「亀の恩返し」を武道館にて開催。映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の音楽監督を務めるなど、様々なかたちで作品を届けている。また、オフィシャルサイトなどで、自身の知識をフリーでシェアし、新しい才能を応援する「恩返し」プロジェクトを展開中。

インフォメーション

“第二回亀田杯 ベース選手権大会” 開催
現在、第一次審査の応募受付中!
くわしくは、第二回亀田杯 ベース選手権大会”オフィシャルページ

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ラジオ番組情報

J-WAVE(81.3FM)「BEAT PLANET」
毎週月〜木曜日
この番組内にて「BEHIND THE MELODY〜FM KAMEDA」(13:00〜13:10登場)がオンエア中。2012年からスタートしまもなく400回を迎えるこのコーナーでは、亀田誠治がリスナーの疑問に答えたりおすすめの曲を紹介したりと音楽のアレコレを解き明かしてくれる濃厚な30分です。公式ブログにはオンエア分の凝縮バージョンがUPされているので、聴き逃した方や過去の放送内容が知りたい方はぜひそちらもチェックしてみてください!

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