THE BACK HORN SINGLE「シンメトリー/コワレモノ」ディスクレビュー

シンメトリー/コワレモノ

SINGLE

THE BACK HORN

シンメトリー/コワレモノ

ビクターエンタテインメント

2014.02.19 release


バンドの本質を照らし出す両A面シングル

 THE BACK HORN流の人生賛歌と言えるような、どこまでもポジティブで希望の光に満ちた「シンメトリー」。対照的に、我ら人間の営みの暗部を抉り出すような、山田将司のラップ(!)が不敵かつスリリングな「コワレモノ」。そして以前ライブで披露されたというユーミン(松任谷由実)の大名曲「春よ、来い」の清新なカバーと、何しろ収録された3曲がえらい飛距離かつ振れ幅で、バイきんぐ・小峠風に言えば“なんてシングルだ!!”な本作。最初に聴いたときは、三者三様すぎて正直かなり面喰らいました。迷走? 否、散漫な印象は微塵もないし、力強いアンサンブルはいずれもが俺らの直球だ! と言わんばかり。そう、この飛距離こそが今のTHE BACK HORNの筋力であり、この振れ幅こそ艱難辛苦とともに彼らが血肉化してきたロック表現のダイナミズムだ。15年にわたる歩みは、やっぱ伊達じゃない。

 とりわけ素晴らしいのは、冒頭を飾る「シンメトリー」。新譜資料にある菅波栄純のコメントを参照すると、「メロディの断片が生まれたのは5年以上前。そこから一滴ずつ水滴を溜めるように音を紡いで」いき、精神状態がポジティブなときにだけ作曲作業を進めていったそう。つまり偶然の産物ではなく、極めて自覚的にこういったブライトな曲が記述されたことになる。「何度でも 何度でも 光の絵筆重ねて/どうかノーミスよりも濃密な人生を」とリリックも優れて希望的だし、聴き手を巻き込んで輝かしい未来へ突き進まんとするバンドの意志がビビッドに伝わってくる。東日本大震災直後に生まれたという「コワレモノ」には彼ららしい狂気じみたムードが満ちているが、両者に通底しているのは、業深き人間や世界に対する、慈悲深い眼差しのようなもの──。「不器用に他者の存在を必要とするこの2つの曲で、THE BACK HORNの本質のひとつを表現した」(新譜資料より)との言葉どおり、必然の元に生み落とされた両A面シングルなのだ。

 昨年は結成15周年を迎え、日本武道館公演など充実した活動でひとつの総決算を果たしたTHE BACK HORN。彼らがどんなネクストを見せてくれるのか──本作は、その期待を否応なしに高めてくれることだろう。

(奥村明裕)

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