ヒトリエ – デビュー・シングルに続く1stミニ『イマジナリー・モノフィクション』から見えた、“想像上の女の子”の存在に迫る。

ヒトリエ

 ひとたびライブを体感したら“感電”するかのような衝撃を受けるはず。目まぐるしいフレーズと中毒性を持ったメロディ、一人ひとりの演奏が塊になって襲いかかってくるかのような強烈な楽曲を鳴らす4人組ロック・バンド、ヒトリエ。先日シングル「センスレス・ワンダー」で自主レーベル“非日常レコーズ”からデビューを果たした彼らから、早くもメジャー1stミニ・アルバム『イマジナリー・モノフィクション』が届いた。
バンドの独特の音楽性を紐解いた前回のインタビューに続き、今回はアルバムに収録されている楽曲の世界観、歌詞についてじっくりと聞いていった。中心人物のwowakaは、すべての楽曲において「想像上の女の子を設定して、その女の子にしゃべらせて曲を作っている」と語る。独特のメカニズムと感性から音楽を生み出しているバンドなのだ。

INTERVIEW & TEXT BY 柴 那典

 

“wowakaフィルター”を通ったものだけが残る

──バンドの成り立ちについては前回の記事<「センスレス・ワンダー」インタビューはこちら>で詳しく話してもらったので、今回はアルバム『イマジナリー・モノフィクション』の話をじっくりと聞いていければと思います。

全員 よろしくお願いします。

──まず、こういう形でシングルとアルバムを2ヵ月連続リリースしようというのは、どういうところから決まったんでしょう?

wowaka 非日常レコーズという形でリリースをさせていただくことが決まって、そこで最初に出すものは何かを考えたときに、まずは僕らの名刺代わりになる、いちばんシンプルにヒトリエというバンドが伝わるものを出しておくべきだということが決まって。で、「センスレス・ワンダー」というシングルを発売したんですね。で、そこをひとつの入り口として考えたときに、作品っぽい部分だったり、単純な曲数としてのボリュームだったり、そういうところを見せていきたかったということですね。どんどん出していきたかったっていうのもあるんです。僕らが自主制作で2012年の末に出した『ルームシック・ガールズエスケープ』っていうアルバムがあるんですけど、あれから1年以上間があいているので。メジャーというフィールドにうつってじっくりと曲を作り始めるというより、すぐに7曲をバンと出したかった、っていうのが大きいです。

──ということは、ヒトリエは曲作りのスピードも速かったりするんでしょうか。

wowaka いや、全然そんなことはないです。とにかく遅いです。まずみんなに聴かせるデモや簡単な形を作るまでに“あれでもない、これでもない”っていう作業をしていて。アレンジもいろんなパターンから選んでいくので、とにかく時間がかかるんですよね。

──基本的にはヒトリエの曲のクレジットは、作詞作曲がwowakaさん、アレンジがバンド名義になっていますよね。これ、実際はどんなふうに作っていくんでしょうか?

wowaka いろんなパターンがありますね。僕が家で1コーラスくらいのデモを作ってきてバンドに聴かせて、それを原型にそれぞれのアプローチを持ってくるパターンもあるし、リフやフレーズやコード進行で“あ、それいいね”ってなったものに歌をかぶせて作ったパターンもあります。その両方かな。

──皆さんプレイヤーとしてもかなり自己主張の激しい方々だと思うんですが、そのへんはどういう感じで曲に反映されるんでしょうか。

イガラシ とりあえず、デモなりの曲の原型を聴いたうえで、みんなそれぞれ好きに提示していて。そこで“wowakaフィルター”を通ったものだけが残るみたいな感じですね。

──“wowakaフィルター”というのは?

シノダ なんか、あるんだよね。正体不明のフィルターが。
イガラシ wowakaさんがかっこいいと思うかどうかだよね。
wowaka うん、そうです。僕のジャッジで“それはダサい”“それはよくない”“それはかっこいい”“それは使える”“これは良い”っていうのがあるので、そこは主に僕がやってますね。

すべての曲で想像上の女の子を設定して、その女の子にしゃべらせて曲を作っているんです

──アルバムの全体像についても聞ければと思うんですけれども。まず“イマジナリー・モノフィクション”というタイトルは、どういうところから?

wowaka これは、“こういうことを僕らは歌ってるし演奏してる”“こういうことが根っこにあってバンドをやってるし音楽をやってるんだよ”っていうのをいちばんわかりやすい形で表した言葉ですね。アルバムは作品性を伴うものになるので、ちゃんと大きな括りにしたかったというか。自分の根底にあって、モノ作りの土台になっている部分をタイトルにしたという。

──土台になっている部分というのは?

wowaka 僕はすべての曲で想像上の女の子を設定して、その女の子にしゃべらせて曲を作っているんです。それがまずフィクションだし。“モノ”っていう言葉にも、いろんな意味があって。モノクロームだったりモノローグだったり、いわゆる“単一の”とか“ひとりの”という言葉ですよね。これは“ヒトリエ”っていうバンド名にも通じるんですけど、そういう一人ひとりの内向きの力をゴッチャゴチャにして吐き出したらこういうものになりましたよ、っていうのを示したかったんですよね。

──なるほど。ヒトリエというバンドを始めたときに、そういう“一人ひとりの内向きの力が爆発する”というイメージを持っていた。

wowaka そうですね。それは最初からありました。もともと“ヒトリアトリエ”だったんですけど、それはずっとモノを作ったり表現するうえでの自分のテーマになっているところなので。すべての活動においてそれは意識してるし、意識しなくても出てる部分だと思いますね。

──で、さっき言われたように“想像上の少女”がすべての曲に登場しているという。その独白が歌詞になっているわけですよね。これはかなり独特な作り方だと思うんですけれど、これはヒトリエ以前からそういうふうに曲を作っていた?

wowaka 以前からそうです。ずっとですね。歌詞は特にそうです。まず曲を作ろうってなったときに、頭の中に女の子をひとり設定するんですよ、こういう子で、何歳くらいで、髪型はこんなんで、身長はどのくらいで、みたいなのを、細かく決めるんです。その子があるテーマのもとで、何を言うだろう、何を思うだろう、何を吐き出すだろう、って考えながら作る。そうすると、その子が動いて、喋ってくれるんですね。それを自分に重ねあわせて、自分の口で歌う。そういう感じで曲を作ってます。ヒトリエを始める前までは、そのままその作り方がボーカロイドに呼応してたんです。だから、ボーカロイドの自我ともまた違うものを重ねていて。今は自分の口と彼女の口が重なって歌っている感覚でやってますね。

──憑依してるみたいな?

wowaka 憑依というか、その少女っていうのは僕が想像したものなので。結局、僕が僕に戻ってくるっていう感じでやってるんですよね。一回フィルターを通してる感じです。

──なるほど、それはすごく面白い作り方ですね。それって、別に誰かに教えてもらったものではないですよね?

wowaka ではない……ですよね(笑)。

──うん。“頭の中に女の子を設定すると曲が作りやすい”みたいな話は聞いたことないし、そういうことを書いた作曲の教科書はどこにもない(笑)。

wowaka でも、そうやって作ると本当にスムーズに出てくるんですよね。その感覚は……それこそボカロのときに学んだのかな。初めてボーカロイドで曲を作ったときはそんなに具体的に考えてなかったけど、やってきた結果、こういう形がいつの間にか確立していた感じですね。

──なるほどね。アイドルやシンガーのような実在の女の子に楽曲を提供するっていうのとはまた違う回路な感じが働いている感じですね。

wowaka うんうん、そうですね。歌詞や曲を書くことを始めたそもそもの最初がボーカロイドだった、っていうのがいちばん大きいは大きいと思います。実在の女の子に歌ってもらう、っていう感覚では完全にないので、全然違うんですよね。

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