星野 源 – 病気療養のため延期されていた初の日本武道館公演がついに実現。星野源らしい復活のパフォーマンス。

星野 源

主演映画「箱入り息子の恋」で日本アカデミー賞新人俳優賞ほか数多くの賞を受賞、絶大な評価を得る俳優であり、2010年のソロ・デビュー以降立て続けにヒットを飛ばし、昨年5月に発表された3rdアルバム『Stranger』を筆頭に、その才能に信頼が集まるシンガー・ソングライターとしても人気を誇る星野源。彼がついに、初の日本武道館公演のステージで完全復活を果たした──。

TEXT BY 森朋之 PHOTOGRAPHY BY 三浦知也

その個性と才能を“これでもか!”と言わんばかりの濃度とともに示した

星野源が、星野源のまま、星野源らしく戻ってきた! いきなり“なんのこっちゃ!?”みたいな話で申し訳ないが、この日のライブで星野源は、その個性と才能を“これでもか!”と言わんばかりの濃度とともに示してくれた。

<星野 源 ワンマンライブ “STRANGER IN BUDOKAN”>──2012年12月にクモ膜下出血の治療のために活動休止。昨年の3月に復帰を果たし、5月にはアルバム『Stranger』を発表したのだが、6月末に再び療養へ。日本中に星野源の存在が認知され、本格的なブレイクを目前にして停滞を余儀なくされたわけだが、復帰後初めてのライブとなった日本武道館公演(このライブは当初、昨年の7月19日に行われるはずだった)によって、彼は、完全なる帰還をしっかりと印象づけた。

武道館は当然のように超満員。ライブ中の本人のMCによると「ライブを延期したあとも、(チケットの)キャンセルがほとんどなかった」ということで、星野源の歌を愛するオーディエンスによって、開演前から実に温かいムードが広がっている。ようやくこの日がやってきた──と、まだ何も始まってないのに(勝手に)ジーンとしていると、客席の照明が落とされ、ついにライブがスタート。「源ちゃん〜待ってたよ!!」「おかえり〜」という歓声の中、星野はミニスカートのセクシー系ナースふたりに連れられて登場、客席に向けて満面の笑顔でVサイン。さらにハケようとするナースのパンツを覗き込もうと追いかけ、会場の笑いを誘う。クレイジーキャッツ的な(?)オープニングに“病気に打ち勝ち、ついに源ちゃんが戻ってきた……”という感涙ムードが吹き飛んでしまう。泣いていいのか笑っていいのかわからないけど、最高に楽しいぞ、なんて思っているうちにバンド・メンバーがステージに姿を見せ、1曲目の「化物」が始まる。トロピカルなムードをたっぷり含んだサウンドの中で星野の力強いボーカルが響きわたり、一瞬にして会場の熱が上がっていく。“うわー、活動休止前よりも歌が強くなってる! すげえ!!”なんて驚いていると、曲の途中で「こんばんは! 星野源です!!」とまたしても満面の笑顔で挨拶、観客も大きな拍手で応える。何をやっても、何が起きてもすべてにグッときてしまう。

続いて、高田漣の個性的なペダル・スティール・ギター、高野寛の切れ味鋭いギター・ソロを取り入れた「ダンサー」、伊藤大地(SAKEROCK)のドラム、伊賀航のベース、野村卓史(グッドラックヘイワ)の鍵盤が気持ちよく絡み合う「ギャグ」を披露。才能豊かなミュージシャンたちによるバンド・サウンドも、めちゃくちゃ鮮烈だ。

WW_livereport_hoshino_gen_04

「こんばんは! 星野源です!」という2度目の挨拶から始まった最初のMCでも、“らしさ”全開。「おかえりー!」というたくさんの声に「いやあ、ただいま」と笑顔で応え、「うわー、すげえー! 後ろまで(人が)いる。ちゃんと見えてますよ」と語りかける。さらに「いやいやいや、ちょっと下ネタ言っていい?」と前置きしつつ、「ただいま○こ〜!」とドヤ顔で絶叫。「これ、ずっと考えてたの、病院のベッドで。“ただいま○こ”って絶対言おうって(笑)」ということだが、いや、これぞまさに星野源。ホントに戻ってきたんだな〜と感動すら覚えてしまった。

オーディエンスの音頭の手拍子とノスタルジックなメロディによってホンワカとした一体感が生まれた「パロディ」(5人編成のホーン・セクションを交えたアンサンブルも素晴らしかった!)、スティールペダルを軸にしたサイケデリックかつフォーキーな音像が印象的だった「くだらないの中に」では、彼の奥深い歌の世界をじっくりと味わうことができた。

「ぜんぶ嘘さ 汗の混じった/妄想がつくる川 海へつづく」(「パロディ」)

「希望がないと不便だよな マンガみたいに」(「くだらないの中に」)

誰にでもわかる言葉と穏やかなメロディによって、“そんなものの見方があるんだな”という発見と“ちょっと気持ちが楽になったかも”というゆったりした解放感を与えてくれる──星野源の歌の魅力は、日本武道館という大舞台でもしっかり伝わってきた。この人の歌の力はやはりすごい。

2度目のMCでは「あの……ご存じだと思いますけど、去年の夏に(武道館ライブを)やろうと思ってたんですけど、いろいろあって、延期してしまって……」とこれまでの経過を改めて説明。「人前で歌うの、どのくらいぶりだ? たぶん、1年と3〜4ヵ月ぶりくらいなんですけど……ありがとう、みんなのおかげでここに立ってる。ここにも立ってるし、さっきのナースの下がすごすぎて、別の意味でも立ってる(笑)」。感謝と照れが混ざったトークも、本当に楽しい。

WW_livereport_hoshino_gen_07

「これも久しぶりだわ。『湯気』という曲をやります」というコメントに導かれた「湯気」からは、色彩豊かな歌が続いていく。伊藤、伊賀、野村が生み出すしなやかで力強いビートの中で、お墓参りをモチーフにした歌詞を軽やかに歌い上げる「ステップ」、ソウル・ミュージックのテイストをさりげなく取り入れたアレンジ、ファルセットを交えた叙情的なメロデイ・ラインがひとつになった「季節」、「寂しいと叫ぶには/僕はあまりにくだらない」というフレーズが心に染みるミディアム・バラード「くせのうた」。やばい、涙腺が緩む……と感極まっていたら、いきなりスクリーンに「一流ミュージシャンからのメッセージ」が映し出される。その一流ミュージシャンとは、バービーボーイズの杏子とKONTAに扮した椿鬼奴とレイザーラモンRG、そして、アン・ルイスに成り切った森三中の黒沢かずこ。両者とも渾身の芸を披露し、会場を爆笑の渦に巻き込む。さっきまでのシミジミした雰囲気は遥か彼方へ。どこまでも星野源らしい演出である。

星野源というシンガー・ソングライターの魅力を改めて実感できる時間

続いては、星野の弾き語りを中心にしたアコースティック・コーナー。マリンバとホーンを交えたアンサンブルの中で「何もない日々よ/幸福も今はいらぬ」と歌う「スカート」、おかずのにおいと秋の風といつかは忘れてしまう感情を描き出す「キッチン」、「“東京タワーは戦車を溶かして、その鉄を使って作った”っていう話を聞いて。それで思いついたのがこの曲です」という「電波塔」。何気ない日常、その中で生まれるなんでもない想いを普遍的な歌へと導く——それは星野源というシンガー・ソングライターの魅力を改めて実感できる時間だった。

ここで星野はギターを爪弾きながら、再びオーディエンスに語りかける。手術後の検査のとき、太ももの付け根からカテーテルを通して、ずっと寝てなくてはいけなかったときのこと。「すごくおしっこしたくなっちゃって、尿瓶をもらったんだけど、全然出なくて。もう限界ってことになって、尿道カテーテルをやったんですよ。看護師さんは、尿瓶と俺のチ○コを持ってくれてるわけ。この状況すげえなと思って、何かトークしようと思ったんですよね。“あの、休日とかは何やってるんですか?”“そうですね、DJやってます”“エーッ! マジっすか!?”“星野さん、イベント出れなくなっちゃって残念ですね”“知ってたんですね!”」。

ちょっとどうかと思うほどクオリティの高いネタのあと、「本当にあの子には助けられた。風のように去っていった、あの女。そんなあの子は“透明少女”」という言葉とともに「透明少女」(NUMBER GIRL)のカバーを披露。原曲の中に潜む、震えるような叙情性に焦点を当てたボーカルはまさに絶品だった。

巨大なミラーボールの光、浮遊感のあるエレピの音色によって、まるで宇宙の中にいるような感覚をもたらした「レコードノイズ」(イントロから歌い出しで「間違えたから、もう1回やろうかな」とやり直したのはご愛嬌)を経て、2度目の「一流アーティストからのメッセージ」(バナナマンが演じるフォーク・デュオ“赤えんぴつ”、友近の演歌歌手キャラ“水谷千恵子”が登場)。「いやあ、ホントにありがとうございました」という星野もめちゃくちゃうれしそう。

本当に奥深い音楽世界を持ったミュージャンだな、と感じ入ってしまう

「みなさん、ここから盛り上がっていくよ。スタンド・アップ、プリーズ! 長いこと休みましたけど、ライブがやれてうれしい。あと、休んでるときも、病院の中で武道館の映像をこうしようとか考えてたから、全然寂しくなかった。面白かった」という言葉によって、ライブは後半へ。ストリングス・セクションのゴージャス&ストレンジなサウンドを取り入れた「ワークソング」、ギターのイントロが始まった瞬間に歓声と拍手が沸き、「どうせなら 作れ作れ/目の前の景色を/そうだろ」というメッセージに心を打たれた「フィルム」、サイトウ“JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)、オラリー(片想い)、辻村豪文(キセル)がコーラスで参加、心地よい郷愁に満ちたメロディとハーモニーが広がった「生まれ変わり」、クラシカルなストリングス〜タイトなバンド・サウンドが溶け合う中で、ドラマチックな旋律を高らかに歌い上げた「知らない」。本当に奥深い音楽世界を持ったミュージャンだな、と感じ入ってしまう。

そして、この日のクライマックスは「いやもう……もうすぐ終わっちゃうんですよね」「いやあ、幸せですね。この曲がここでやれてうれしい」というコメントとともに放たれた「夢の外へ」だった。華やかな高揚感を持った歌、カントリーとポップスが混ざり合ったサウンドがストリングス、ホーンとともに響きわたる。この曲に関するインタビューの中で星野は「狂っていてカッコいいJ-POPを、自分なりにやってみたかった」と話していたのだが、楽しさと狂気、虚構とリアルの境目がなくなるような感覚は、星野源の真骨頂と言えるだろう。それにしても、こんなにもオルタナティブなポップスが満員の武道館で鳴らされているとは……。この素敵すぎるシーンに直面して、“日本って、ホントに楽しい国だな”とさえ思ってしまった。

WW_livereport_hoshino_gen_06

観客にウェーブを促して「俺のためにドミノしてくれてありがとう。いい思い出になったね。みんながひとつになったね」とハシャイだり、「内密の話なんですけど、アンコールもあるんで……」と呟いたり、「この場でライブができて、ホントにうれしかったです。これからもよろしくお願いします」とマジメに挨拶したあと、アルバム『Stranger』のラストに収録されている「ある車掌」で本編は終了。再びナースに連れられてステージを去った……と思ったら、すぐにアンコールへ。まずは「思えば、今日の日を迎える前に、星野 源さん、いろいろなことがありました」という放送作家の寺坂直毅によるアナウンス。「休養中、Wiiカラオケを購入、名曲の数々をひとりで熱唱いたしました。そして、ある運命の1曲に出会いました。さあ、星野さん、君を愛するすべての人に心を込めて歌ってください!」という紹介を挟み、「君は薔薇より美しい」(布施明)が始まる。長髪のカツラ、派手なスーツ、サングラスで決めた星野がステージに現れ、昭和の歌謡史に輝くこのスタンダード・ナンバーを熱唱! 「やあ、みなさん、ニセ明です! 楽しんでる? ちなみにここは料金に入ってないから、クレームとかやめてね」という星野からもこのステージを全身で楽しんでいることが伝わってくる。いいぞ、源ちゃん! 

さらにメンバー紹介を行い(野村と伊藤には「おまえとここに来れてうれしいぜ!」と言ってました)、再びナースとともに退場。星野が出演した映画「地獄でなぜ悪い」(監督/園子温)のシーンが映された直後、映画と同じ衣装を着た星野が日本刀を片手にステージに現れ、この映画の主題歌「地獄でなぜ悪い」をド派手に披露。華やかな盛り上がりとともに記念すべき復活ライブを締め括った。

WW_livereport_hoshino_gen_05

特異な音楽センスと愛すべきキャラクターを存分に見せつけた星野は、3月10日から全国ツアー“星野 源ライブツアー『星野 源の復活アアアアア!』”をスタートさせる。星野源という才能がここから、さらに大きく広がっていく──そんな実感がはっきりと伝わってくる、本当に素晴らしいライブだったと思う。

SETLIST

M01. 化物
M02. ダンサー
M03. ギャグ
M04. パロディ
M05. くだらないの中に
M06. 湯気
M07. ステップ
M08. 季節
M09. くせのうた
M10. スカート
M11. キッチン
M12. 電波塔
M13. 透明少女
M14. レコードノイズ
M15. ワークソング
M16. フィルム
M17. 生まれ変わり
M18. 知らない
M19. 夢の外へ
M20. ある車掌
〈ENCORE〉
EN1. 君は薔薇より美しい
EN2. 地獄でなぜ悪い

LIVE INFORMATION

“星野 源ライブツアー『星野 源の復活アアアアア!』”
2014年3月10日(月)・11日(火) 大阪 オリックス劇場
2014年3月13日(木)名古屋国際会議場センチュリーホール
2014年3月15日(土)福岡市民会館
2014年3月18日(火)広島 上野学園ホール
2014年3月25日(火)札幌市民ホール
2014年3月27日(木)仙台市民会館大ホール
2014年3月29日(土)金沢 本多の森ホール
“星野 源ライブツアー『星野 源の復活アアアア了!』”
2014年4月9日(水)東京 NHKホール

“VIVA LA ROCK”
2014年5月5日(月)さいたまスーパーアリーナ
“METROCK”
2014年5月24日(土)新木場若洲公園

PROFILE

1981年、埼玉県生まれ。音楽家、俳優、文筆家として多方面で活躍。2000年に自身が中心となってインスト・バンド“SAKEROCK”を結成。2010年に、アルバム『ばかのうた』でソロ・デビューを果たし、昨年5月に3rdアルバム『Stranger』、10月にシングル「地獄でなぜ悪い」をリリース。「化物」のMVがSPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARD」の2013年優秀作品50選「MVA BEST VIDEO」に選出された。また、本公演の模様のWOWOWオンエアも3月8日に決定。この日はライブの模様だけでなく「星野 源スペシャル」プログラムが組まれ、初主演映画「箱入り息子の恋」をはじめ、バラエティ番組も放送される。

関連リンク

OFFICIAL WEB SITE

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人