THE 抱きしめるズ ALBUM「今日から俺は!!」ディスクレビュー

今日から俺は!!

ALBUM

THE 抱きしめるズ

今日から俺は!!

redrec/sputniklab

2014.02.05 release

<CD>


返り討ち覚悟の“居直り強盗”的アルバム

 “居直り強盗”という言葉がある。空き巣に入ったつもりが住人に見つかってしまい、謝るどころか開き直って住人に危害を加えるという極めて悪質な泥棒のことだ。もはや逃げようとも許してもらおうとも思わず、無防備のまま返り討ち覚悟で向かってくるのだから、用意周到な泥棒よりよっぽど怖いし、タチが悪い。THE 抱きしめるズ、約3年ぶりのニュー・アルバム『今日から俺は!!』を聴いて、“居直り強盗じゃん!”と思った。“たまたま運良くCDデビュー出来て”と始まるタイトル曲「今日から俺は!!」で歌うのは、1tアルバムで注目を集めながら、いまだ結果の出せない自分たちへの不満や苛立ち。怨念にも近い感情を込めて掻き鳴らすギターに乗せて、“もう負けねえ! もう逃げねえよ!/何も怖くねえ! マジだぜ!”と自分を奮起させる渡辺のシャウトを“知らねぇよ!”と言ってしまったらそれまでだが、俺も彼の切実な心の叫びを笑い飛ばせるほど大した人間ではない。10代を引きずり倒した現在をドラマチックに表現した「僕らのドラマに大きな花束を」、“だけど奇跡でしかない夜は必ずある”と切望するように歌う「千夜一夜」と楽曲が進むに連れて、僕の心にスルリと入り込んだ空き巣は“俺たち、青臭い10代を引きずり倒すクソ野郎だけど、最高にロッケンロールでロマンチックだろ?”と開き直り、僕を作品世界へと引きずり込む。 
 
 もっともタチが悪いのは、実質アルバム・ラストに収録された「遺書」。頭掻きむしるパンク・サウンドに乗せて、聞いてもないのに自分の住所まで発表した上、“もう一度殺しても殺し足りないくらい今までの俺を殺してやる”と叫ぶ渡辺のシャウトは狂気の沙汰。恐らく「遺書」は大げさでなく、バンドマンとしてこの曲で死んでも構わないくらいの気持ちで作られた曲なのだろう。そして今作自体が、“これが最後の作品になってもいい”と、覚悟をもって作った作品なのだろう。そんなのグッと来ないわけがない、感動しないわけがない。逆に言うと曲もバンドのポテンシャルもないと嘆く彼らは、それくらいの覚悟で作品制作に挑まないと、人の心が動かせないことに気が付いたのだろう。アルバムを聴き終えると、僕は見事、居直り強盗に身ぐるみ剥がされて、スッカラカンになっていた……。
 
 繰り返すが、開き直りほど怖い物はない。負けることや返り討ちに遭うこと、玉砕することさえも恐れないのだから、ある意味、無敵とも言える。THE 抱きしめるズの今日から始まる快進撃に期待したい。

(フジジュン)

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