佐々木健太郎 ALBUM「佐々木健太郎」ディスクレビュー

佐々木健太郎

ALBUM

佐々木健太郎

佐々木健太郎

felicity

2014.02.05 release

<CD>


Analogfishのエモーショナル野・佐々木、充実の初ソロ作

 セルフ・タイトルにしているのが、じつにこの男らしい。そして収められている曲たちには、すべて“佐々木健太郎”印が強く刻まれている。Analogfishの佐々木、初のソロ・アルバムである。

 ここ数作のAnalogfishは、下岡 晃の楽曲に重きを置いた批評的でリアルなメッセージを発信する路線を突き進んでいたわけだが、その意味でもうひとりのシンガーである佐々木のこのソロを、新鮮に、または意外に感じるリスナーもいるだろう。と言うのは、彼の歌は、エモーションを包み隠さずにストレートに表現するところに最大の魅力があるからだ。そしてここでは佐々木の内面が様々な形で表現されている。輝いていた青春の日々、大人になっていくこと。女の子への思い、大切な人への愛、自分の子供に対する感情。そんな中での音楽、バンド……。そんなに複雑なことを好むようなアーティストではないぶん、深読みは不要。こちらは大らかなメロディ・ラインと、それを大きな声で歌うのを真っ正面から存分に浴びればいい。

 吉田 仁のプロデュースである本作で、佐々木はすべての楽器を演奏していて、そこも宅録少年だった自分らしさを貫いているということか。ことに彼流のウォール・オブ・サウンドが構築されている「クリスマス・イヴ」は見事なポップ・ソング。ポップで優しいメロディの「STAY GOLD」には、ついHi-STANDARDの名曲のタイトルを重ねてしまう(そう、佐々木はハイスタ世代だ)。

 このアルバムの曲を聴いていると、もうすぐ35歳になる佐々木の現在が伝わってくる。音楽を奏でることの楽しさ、素晴らしさ。だけど歳を重ねていってる自分のことも、その自分の周りにいる人たちのことも大切に思う。そこには充実感や喜びもあれば、しんどさや苦みも、切なさも、ほんのりとした悲しみもある。そうした諸々が、大人になっていくということそのものだと、僕は思う。これから大人になろうとしている人、もう大人になってしまった人、どちらにも浸ってほしい好アルバムである。

(青木 優)

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