plenty EP「これから/先生のススメ/good bye」ディスクレビュー

これから/先生のススメ/good bye

EP

plenty

これから/先生のススメ/good bye

headphone music label

2014.01.29 release

<CD>


末恐ろしきバンドの“これから”を示唆するシングル

目を閉じ、耳を澄ませて聴くと、胸の中にまっ白な雪が降り積もっていくようだった。これまでもソング・ライターとしての江沼の才能の破格さに衝撃を受け続けてきたのだが、この新作では彼の生み出す世界がバンド・サウンドによって有機的に共有されることで、よりダイレクトに届いてくる作品となった。昨年12月発表のコンセプト・アルバム『r e(construction)』を制作する過程で、過去の自分たちの楽曲と向き合ったことが、バンドを次なるステージへと向かわせたのだろう。

1曲目の「これから」は深みと広がりのある歌詞、哀しくても美しいメロディ、純度の高いボーカル、そしてエモーションとパッションを秘めた生々しい演奏がいい。雪というモチーフの使い方も見事だ。時間の流れも感情の移ろいも本来は目に見えないものだが、雪を使うことで鮮やかに視覚化している。雨が雪に変わり、雪が積もっていく。その光景が登場人物の心象風景とシンクロしていく。歌の根底に漂っているのは哀しみや無力感や無常観。個人的な歌でありつつも、深く掘り下げているがゆえに、人間の業や性に肉迫していく普遍性を獲得している。タイムマシンが発明されない限り、人間は過去に戻ることはできないし、未来へジャンプすることもできない。可能なのは今を生きることだけだ。この歌が素晴らしいのはただ単に無力であることを受容したり、哀しみに浸ったりするだけでなく、それでもなお進み続けていく意志が伝わってくる点にある。江沼の一見ナイーブな歌声の奥には雪が降り積もった胸の中を照らす光にも似た何かが宿っている。“明日を待つ”“哀しみは愛にかわる”というフレーズが胸を熱くする。

2曲目の「先生のススメ」はバンドの空気感までもが伝わってくるエッジの効いた演奏が魅力的だが、場面転換の役割を担った脇役的な曲だろう。3曲目の「good bye」は「これから」と並ぶ名曲。1曲目から3曲目への流れは冬から春へという季節の流れと緩やかに連動している。テーマ的にも1曲目と3曲目とは重なるところが多い。過去に別れを告げ、今という瞬間を生きていくことを歌った歌。この2曲が共鳴し合い、今の瞬間の連続こそが唯一未来へと繋がっている道なのだということを鮮やかに示していく。タイムマシンがなくても、未来を予測することはできる。plentyは後世に残る名曲を数多く生み出すバンドへ成長していくだろう。“これから”という言葉からはそんなイメージも広がっていく。

(長谷川 誠)

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