ZEPPET STORE ALBUM「SPICE」ディスクレビュー

SPICE

ALBUM

ZEPPET STORE

SPICE

DELIGHTS RECORDS

2014.01.15 release

<CD>


引用ではない血肉化した’90年代サウンドの進化形

2013年末に出た『hide TRIBUTEⅦ -Rock SPIRITS-』のタイミングで再び“hideが見出し、彼らのためにレーベルまで設立した”デビュー当時の出来事がクローズアップされたZEPPET STORE。良くも悪しくも’90年代初期にはビジュアル系でもなければ、サウンドに比べるといわゆるギター・ロック・バンドとも違う、正体の掴めなさがまとわりついていた。だが20余年の時を経て、それらはいい意味で彼らの多様性に転化し、結果的に入口を増やしたと言えるだろう。

再結成し5人体勢になってからの2作目、通算10作目のアルバムとなる本作。リアルタイムでニュー・オーダーもスマッシング・パンプキンズもマイ・ブラッディ・ヴァレンタインもオアシスもミュージシャンとして吸収・消化してきた彼らならではの、引用ではないすでに血肉化したサウンドの深み、トリプル・ギターがおのおののフレーズとエフェクトをまとった音色で紡ぐシンフォニックで独自の空間、ニューウェーブのシンプルさを根に持ちつつ、さりげなくテクニカルなビートがひとつになったときの快感度数は、ギター・バンドの最高峰と言っていいだろう。

東日本大震災で傷ついた人たちへ自分たちなりに力になりたいという思いを持って復活した福島出身である木村世治(vo、g)の意思は1曲目の「DELIGHT」に明らか。メジャー・キーでありつつ、ZEPPET STOREらしいソリッドさや憂いも含んだサウンドで、ただただ音楽の心地よさや力強さの中で、その傷を癒してほしい。曲、音像そのものがメッセージとして響くことが感動的だ。今回も英語詞と日本語詞は半々だが、そのバランスや言葉が果たす役割にも彼らは自覚的。迷い込んだ森を怖れることなく、森そのものの空気を味わわせてくれるような音像とゆったりしたテンポの「MELODY」。誰もがかけがえのない存在であることをていねいに歌う飾り気のない日本語が深く染み入る。同じスローでも、エバーグリーンな英語圏の名バラードを思わせるメロディを持つ「WALKING IN THE MOONLIGHT」では、英語詞が自ずとハマる。曲が呼ぶ音としての言語感覚はさすがキャリアの成せる技だ。それにしてもこのトルプル・ギター・サウンドの複雑でありつつ自然な聴感は、他のバンドにないセンスだと思う。耳あたりの優しいシューゲイザー、意表を突きつつ押し付けがましさのまったくないエフェクト類。世界でも最高度に洗練されたギター・アンサンブル作品としても評価されるべき。

(石角友香)

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