シナリオアート MINI ALBUM「night walking」ディスクレビュー

night walking

MINI ALBUM

シナリオアート

night walking

キューンミュージック

2014.01.15 release

初回限定仕様盤 <デジパック限定特殊仕様>
通常盤


夜の国で泣いている君と歩く、夜明けを探す夢の旅

きゃりーぱみゅぱみゅ、SEKAI NO OWARI、黒沼英之、チェコ・ノーリパブリック……。最近、よく耳にする彼/彼女らの曲を聴いて思うのは、今、夢みたいな歌が求められているのではないか、ということだ。現実の世界は厳しく、面白いことは見つけにくい。だったら、せめて音楽を聴いているときくらいは、現実そのままではない、日常レベルのリアルな夢の世界に浸りたい。そう感じているのは、きっと僕だけではないはず。空想や妄想、夢というと、現実から逃避しているように見えるかもしれないけれども、つらい現実に肌身をさらし、目の前の問題を乗り越えていくためには、イメージの世界で展開される物語が必要なこともあるし、私たちが普段、生活している“この舞台”とは別の“もうひとつの舞台”は甘いだけのものでもないだろう。

関西発の男女ボーカルによる3ピースのロック・バンド、シナリオアートも現実の世界からふわりと心を浮かさせくれるようなファンタジックな夢を見せてくれる。<自分じゃない誰か><ここではないどこか><今じゃないいつか>に夢を馳せるという点では前述のアーティストと共通しているが、シナリオ=物語、アート=表現という名を持つ彼らの方法論(出し方)は異なり、より静謐で透き通った風景を引き連れてくる印象を受けた。

夜明けを求めて彷徨う散歩の旅は、4匹の弱虫な動物たちがブレーメンをめざして旅をする童話「ブレーメンの音楽隊」になぞらえた「ブレーメンドリームオーケストラ」で幕を開ける。バンド・メンバー3人に、聴き手ひとりの4人は、深い夜の中、「ここじゃない/どこかへ」と向けた旅を始める。現実と非現実の狭間で、守りたい“君”とはぐれてしまった“僕”は(「ホワイトレインコートマン」)、手を鳴らなしながら“君”との繋がりを求め(「ハロウシンパシー」)、孤独と不安を抱えたまま、ひとり歩き続ける(「ウォーキングムーン」)。漆黒の夜空に希望と理想で満ちた未来を思い描きながら(「スペイシー」)、やがて、過去の記憶や思い出がだんだんとぼやけていってしまっていることに気づく(「ポートレイトボヤケル」)。続く、記憶喪失の男を主人公にした6分超えの大作「ハジメマシテ」は、喪失と再生の物語。アルバムを通して聴いていると、はぐれたふたりが、記憶を失った状態で再会したような切なさも感じる。そして、ラスト・ナンバー「アサノシズク」で、朝もやの中、ようやく長い夢から醒める。「夜の国で泣いてる 君へ」向けた、「僕がもらった 夜明けを/あなたに あげるからさ/繋げてゆこうよ 少しずつ」というフレーズが、彼らが音を鳴らす意味であり、聴き手に向けた最大のメッセージではないかと思う。

(永堀アツオ)

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