[Champagne] – 初の武道館公演を控えた彼らから届く新作「Run Away/Oblivion」について、フロントマンの川上洋平のインタビューをお届けする。

[Champagne]

[Champagne]の4thアルバム『Me No Do Karate.』は今年のロック・アルバムのベストに名を連ねる快作だった。言わずもがなUKロック直系の美メロ、EDM的な同時代感から、エクストリームなメタルのスピード感まで貪欲に昇華しながら、音像は過去最高に無駄を削ぎ落とした物理的なキャッチーさ。それは“バンドで世界のてっぺん取ったる”的なバンドのメンタリティを“現物”で証明したと言っていいだろう。加えて今年1月リリースのシングル「starrrrrrr」で見せた、自分の至らなさや悔しさの正直な吐露はバンドとファンを強く繋げる物語をより大きなフィールドで疾走させ始めたのではないか。今回、2013年を走り続けてきた締めくくりにリリースする両A面ダブル・タイアップのシングル「Run Away/Oblivion」は、そのまた先にあるリアルなビジョンそのもののような作品だ。走り続けて上がる心拍、でもまだ走り続けたいという欲望をアルバムでも新機軸を感じさせた「Kick&Spin」にも似たスリリングなリズムで加速させる「Run Away」、ピアノのアルペジオが溢れる情動を表現するメロディを彩る「Oblivion(feat. LITHIUM HOMME)」。両曲のソング・ライターでありフロントマンの川上洋平、そしてバンドの物語が共有され始めた今、深い感銘を持ってリスナー個々の内で鳴り響くに違いない。ま、川上本人に気負いはなく相変わらず超感覚の人に違いはないのだが。

INTERVIEW & TEXT BY 石角友香


[Champagne]の総括的なもの

──少し前になりますけど、Zepp Tokyo2デイズは痛快でした。よく“明日からまた勉強や仕事頑張れます!”みたいな感想がありますけど、そういう感じじゃなく、“楽しかったー! もう明日とかどうでもいい”みたいな。ロック・バンドならではの後味でした。

あー、ははは。なるほど。ま、どういう気持ちになってほしいとか僕はないので、楽しくなる人もいれば、明日から頑張ろうと思う人もいれば、すべてを忘れちゃってどうでもいいやと思う……たぶん俺はそっちに近いんですけど。それよりも“お客さんまた来てくれるかな?”っていう(笑)、そこは思ったりしますね。

──全然そうは見えないですけど。

危機感はつねに持ってますよ。特に今年はアルバム聴いて“良いじゃん、じゃ、ライブ1回観に行ってやるかな”ぐらいの人は[Champagne]がいちばん好きだっていう人ではないと思うんですよ。そういう意味では“このバンドよかったな”じゃなくて、“このバンド追っていたいな”って思わせられないととは思ってますけどね。そのためにはカリスマ性や魅力が必要だし、そういうところを自分の中で育てていかなきゃなと思いますね。

──そうした飽くなき欲求はこのシングルにも強く感じます。今年の年末にリリースすることの意味は感じてたりしますか?

リリースの時期は僕が決めることじゃないんでなんとも言えないですけど、どうしてもアルバムが出たあとに“こうしたかったな、ああしたかったな”っていうのは出てくるんですね。だからアルバムを引き継いではいるんだけど、さらに新しいとこに行きたいなぁとは思って。でもなかには1stや2ndの頃の、ちょっとまくしたてる的な要素もあったりして、だからいろんな[Champagne]
の総括的なものが、自分の中ではありますね。今年の、というよりは今までの[Champagne]のっていう。歌詞の内容とかじゃないんですけど、この時期にシングルを出す意味っていうところではそういうふうに感じてます。

──なるほどね。早くも『Me No Do Karate.』以降の課題が浮上したとも言えますね。

やっぱ伝わりやすさって言うのかな? それは毎回思うんですけど、メロディをいちばん大事にするっていうところをさらに改善、っていうのかな。でも、どうしたらメロディを……例えば歌ってもらえるか? とか、耳に残るようになるか? っていうのは計算できなくて。セオリーみたいなものを持ってないし、理論を学んだこともないんで、感覚で作っていくしかないんですよね。でも、今回のレコーディングはツアーと重なってるのが良かったなと思ってて。アルバムの曲を人前でやるのが初めてだったんで、「Kick&Spin」とか「Rise」、あとは「This Is Teenage」とか、“あ、こんなノってくれるんだ”とか、意外とバラードの曲では男子が歌うんだとか、そういう実感があって。あと、[Champagne]史上初めてホントの意味でのシングアロングが起こったツアーでもあって。これはメロディが伝わってる証拠だな、でもまだまだだな、それってなんだろうな? ってときに出来たのが今回の曲だったりもするんです。

──初めてのことが起こっていても、まだその先を見てたと。

そうですね。もっともっといろんな人に聴いてほしいなっていう、結果的にはそこに辿り着くんですよ。自分の中ではもっともっとデカイものを想像してたので。もちろん『Me No Do Karate.』ってアルバムは完成されて、自分の中では完結してるんだけど、ミュージシャンとしては余白はあって、まだまだやれることあるよなって思ったので、そこの伸びしろを感じることができたのは良かったと思うし。

作品を良くしたいからって欲求に駆られると、柔軟に対応できるようになっていった

──そして今回のシングルはタイアップ絡みの2曲ということで、そうした要素は曲作りに影響しますか?

お話をいただくことによって影響される部分は大きいんで、ロック・バンドだから突っぱねてとかあまり思わないタイプなんですよ。

──「Run Away」にはどんな影響が?

普段から僕、ジョギングするんで、逆に書きやすい部分もあって。でも今回も特にビジョンはなかったですね。僕の場合、曲は出たとこ勝負ってのが正直なところあるので。

──今回も弾き語りから?

そう。弾き語りだったり、鼻歌だったり。今回、なにがつらかったって、ツアー中の制作だったから声が出せないんですよ。曲作ってるときこそいちばん声出さなきゃいけないし、地声出しながら、ドラム叩いてもらったり、自分の中にあるコードを弾いてもらって、その場でメロディを重ねていく作り方なんで、自ずと声を張り上げちゃうんですけど、今回はそれをやると翌日からまたライブが2連チャン、3連チャンだったりで、そうすると今度はライブがダメになってしまうんで、そこのバランスは相当むずかしかったですね。

──じゃあ“歌えるだろう”と想像して作る感じ?

えっとね、結局試せないから“これだったらいけるだろう”って想像して。もうね、ホントに時間がなかったから、レコーディング前日の仙台か? 「また会おう!愛してるぜ!」って言った次の瞬間、みんな汗だくのまま楽屋で、パソコンでプロトゥールズ用意して作ってましたからね(笑)。すごい経験しましたよ。

──(笑)、たしかに。その作り方のせいかどうかはわからないですけど、両A面の2曲はピアノが印象的で。

うんうん。なんとなく気づいたんですけど、僕の声ってピアノに合うなと思ったので。あと、このメロディ・ラインも単純にピアノがあったら映えるなぁと思ったので、そこはメンバーにキーボードの人はいないけど、恐れずに出していきたいなと。そういうことができるようなバンドになって良かったなと思いますね。昔はやっぱり(キーボード担当が)メンバーにいないから、サポートどうすんの? とか、打ち込みはヤだねとかあったんですけど、だんだんそういうことよりも、まず作品を良くしたいからって欲求に駆られると、柔軟に対応できるようになっていったというのかな。そこはいいなと思うところですけどね。

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