the pillows – 来年、バンド結成25周年を迎える彼らが、11月より敢行していたツアー“TOUR 2013 LOSTMAN GO TO CITY”の最終公演の模様をレポート。

the pillows

今夏、約1年の活動休止から復活。来年バンド結成25周年を迎える彼らが、11月より敢行していたツアー“TOUR 2013 LOSTMAN GO TO CITY”。9月に発表されたシングル「ハッピー・バースデー」インタビュー時に、アルバムを掲げたツアーではないので新旧織り交ぜ選曲しようかなと山中さわおは語っていた。そしてそのとおり、新曲も含み、久しぶりにライブで披露される曲など、レアなセット・リストでオーディエンスを沸かせた。そのパフォーマンス、最終日のZepp Tokyoのレポートを。

TEXT BY 森朋之

the-pillows_live01

 このバンドを好きでいて良かった。いきなりセンチメンタルになってしまって申し訳ないが、この日のライブを観て、本当にそう思った。
 the pillowsの全国ツアー“TOUR 2013 LOSTMAN GO TO CITY”の最終日、Zepp Tokyo公演。24年のキャリアの中で生まれた“知る人ぞ知る名曲”を中心としたこのツアーで彼らは、ロック・バンドとして活動を続けていく意志を力強く示してくれた。

the pillowsは今回のツアーによって、完全復活を果たしたと言っていい

 まず、今回のツアーの背景について少しだけ記しておきたい。2012年から2013年にかけて、the pillowsは活動休止状態にあった。1989年の結成以来、1年以上も活動を行わなかったことはこのときが初めて。その理由は山中さわおがインタビューなどで語っているとおり、メンバー間の温度差、音楽に対するモチベーションの違いにあったという。ファンは本当にやきもきさせられたと思うが(もちろん筆者も同じです)、2013年の夏頃から彼らは再びthe pillowsとしての活動を再開させる。まずは7月に大阪で復活ライブを開催。さらに9月にはシングル「ハッピー・バースデー」をリリースし、約1年半ぶりのツアー“LOSTMAN GO TO CITY”へといたったというわけだ。その手ごたえは、冒頭で書いたとおり。the pillowsは今回のツアーによって、完全復活を果たしたと言っていいだろう。

the-pillows_live04

 ライブは「White Ash」からスタート。1999年のアルバム『RUNNERS HIGH』に収録されたこの曲は、‘90年代後半のオルタナ・ミュージックのテイストを色濃く反映させたロック・チューン。ライブで聴いたのはかなり久しぶりだが、もちろん楽曲の魅力はまったく変わっていない。続く「NO SELF CONTROL」(1998年のシングル)では、「僕らは気づかずに/同じ夢を見た」というサビのフレーズで大合唱が起こり、会場の一体感が高まっていく。この時点でバンドのテンションはすでに最高潮。よし! と拳を握りたくなる。

MCからも、山中の気合いが伝わってきた

「久しぶりじゃないか。みんな、元気?」といういつもの挨拶から始まったMCからも、山中の気合いが伝わってきた。「ライブ、楽しみにしてました!」という観客の声にこたえ、「だとしたら、俺らと同じだ。最後まで仲良く、楽しく、よろしくね」と言葉を投げ返す姿も印象的。the pillowsとしてステージに立つことを心から待ち望んでいた——そんな想いがはっきりと感じられる。

the-pillows_live03-1

 彼らのライブでは極めて稀なことだが、エンターテインメント性のある演出も。「都会のアリス」(シングル「ハッピー・バースデー」収録)のときにふたりのキッズ・ダンサーが登場、アリスとトランプ兵に扮して踊りまくったのだ(そう、ミュージック・ビデオにも出演していたふたりです)。このダンスが信じられないほどキレキレで、オーディエンスのテンションもさらに上がっていく。「すごい身体能力。生で観るとすごいでしょ?」という山中もめちゃくちゃ楽しそうだ。

the-pillows_live11

「最近はまったくやってなかった隠れた名曲を織り交ぜたツアーです」

「最近はまったくやってなかった隠れた名曲を織り交ぜたツアーです。次の曲もほとんどの人はライブで聴いたことないんじゃないかな」(山中)という言葉に導かれた「ウィノナ」も心に残った。2002年のアルバム『Thank you, my twilight』に収録されたこの曲は、愁いを帯びたメロディを軸にしたラブ・ソング。「キミをいつの日か/独り占めしたいけど/きっと無理だって知ってんだ」というラインを聴いているとどうしても当時のことを思い出してしまうし、それはきっと観客の多くも同じだったはず。それにしても、この頃(’00年代前半)のウィノナ・ライダーは本当に素敵だったな……。

the-pillows_live08
the-pillows_live09

 ライブ中盤では、新曲「About A Rock‘n’Roll Band」が披露された。「結構たくさん新曲を作ったんだけど、その中でいちばん軽いヤツをやります」(山中)ということだったが、ライブで聴くかぎり、この曲が持っているテーマは決して軽くはないと感じた。サウンド自体は軽快なロックンロールなのだが、“ロック・バンドのメッセージを受け取り、強く生きるイメージを握りしめた”という切実なメッセージがまっすぐに突き刺さってくるのだ。好きな音楽から受け取った大事なことを、生きていくうえでの糧にする──言うまでもなく、それはthe pillowsとオーディエンスの関係にもそのまま当てはまるはずだ。

 このあと、山中は2014年2月にリリースされるトリビュート・アルバム(『ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-』)について触れた。
「15周年のトリビュートはちょっと特殊で、(参加したバンドに)俺からお願いしたんだけど、今回は世間一般のスタンダードなトリビュート・アルバム。尊敬されてる感じがするし(笑)、どれも本当に素晴らしい」「2回もトリビュートを出せて、シンパシーとエネルギーを感じることができたのは、とても幸せだと思う」と。年齢や音楽性を超え、幅広いアーティストに支持されてきたthe pillows。今回のトリビュート盤の充実ぶりも、彼らの音楽性が高く評価されている証左と言えるだろう。

ダイナミックなボーカルを響かせる山中にも、本気で心を揺さぶられた

 「ハッピー・バースデー」「クオーター 莫逆の友」も、このツアーの大きなポイントだった。
「思い出したんだ 生きて来たこと」「先入観でくすんだ未来図も/塗り替わっていく」と歌われる「ハッピー・バースデー」、そして、リリース・インタビューの際に山中が「“またthe pillowsをやるんだ”っていうのがわかりやすく出た曲じゃないかな」「壮大なことを歌うよりも、“少しでも先に進もう”というほうがリアルな感じがしたし」とコメントしていた「クオーター 莫逆の友」は、このバンドの復活を象徴していると言っていい。全身に感情を漲らせながら、ダイナミックなボーカルを響かせる山中にも、本気で心を揺さぶられてしまった。

 そしてライブはクライマックスへ。「Sleepy Head」からは高揚感に溢れたロックンロールが続けざまに放たれ、会場はさらなる熱狂へと突き進んでいく。圧巻は本編ラストの「POISON ROCK‘N’ROLL」「Ready Steady Go!」。オルタナの感覚を(まるで遊んでいるように)取り入れながら、エッジーかつポップなロック・ミュージックをダイナミックに体現するメンバー。山中、真鍋吉明(g)、佐藤シンイチロウ(ds)そして、鈴木淳(b/サポート・メンバー)が生み出す個性豊かなアンサンブルを含めて、このバンドの魅力をストレートに体感できる場面だったと思う。

「歴史だけにこだわっているわけじゃないけど、歴史は無意味ではない」

the-pillows_live07

 アンコールではまず、「Blues Drive Monster」「WAITING AT THE BUSSTOP」を披露。どちらもマニアックな楽曲だが、オーディエンスは最初から最後までガッツリ踊りまくり、一緒に歌っている。この絆の強さもまた、the pillowsのライブの素晴らしさだろう。

 さらに2度目のアンコールの前に山中は、観客に向かってこんなふうに語りかけた。

「昔の曲をやってると、当時の気持ち、感情、記憶が甦ってくる。俺たちは歴史だけにこだわっているわけじゃないけど、歴史は無意味ではないと思っていて。そこから音やエネルギーが生まれてくることを信じてるんだ」

 そんな言葉とともに演奏された「ハイブリッド レインボウ」は、本気で感動的だった。1997年にシングルとしてリリースされたこの曲は、今さら言うまでもなく、このバンドを象徴するナンバーのひとつだ。しっかりと抑制されたメロディはサビに入った瞬間に大きく解き放たれ、ノイジーなギター・サウンドとともに「Can you feel that hybrid rainbow?/昨日まで選ばれなかった僕らでも/明日を待ってる」というフレーズが響きわたる。ライブで聴くたびに鮮烈な感情を呼び起こしてくれる楽曲だが、この日の「ハイブリッド レインボウ」は格別だった。約1年間の活動休止を経て、再び前進を始めたバンドをこの目でしっかりと確認できた──そのことがきっと、この曲のパワーを増幅させてくれたのだと思う。

the-pillows_live10

 すべての楽曲が終わったあと、山中はひとりステージに残って、最後の言葉を投げかけた。
「24年間バンドをやってきて、楽しいことばかりでなかったし、つらい道を選ばなくてはいけないこともあった。その理由はロック・バンド、音楽の価値、美しさを求めているからなんだ——」

「俺はまた楽しくなった。誰にお礼を言っていいかわからないから、君たちに言うよ。ありがとう」という言葉とともに山中はステージをあとにした。

 2014年、the pillowsは結成25周年を迎える。アニバーサリー・イヤーならではのイベントもめちゃくちゃ楽しみだが、それ以上にうれしいのは、このバンドがこれからも続いていくという事実そのものだ。山中さわおの孤高の魂から生み出される楽曲、そして、オルタナティブなセンスに貫かれたバンド・サウンドはこの先も、数多くのオーディエンスを強烈に惹きつけていくことになるだろう。そのことを改めて確信できた、意義深いライブだった。

the-pillows_live06

SETLIST

M01. White Ash
M02. NO SELF CONTROL
M03. ROCK’N’ROLL SINNERS
M04. Hello, Welcome to Bubbletown’s Happy Zoo(instant show)
M05. Mr.Droopy
M06. 都会のアリス
M07. ウィノナ
M08. Last Holiday
M09. Rush
M10. About A Rock’n’Roll Band
M11. FUN FUN FUN O.K!
M12. Skim heaven
M13. Crazy Sunshine
M14. ハッピー・バースデー
M15. クオーター 莫逆の友
M16. Wake Up, Frenzy!
M17. Sleepy Head
M18. モールタウン プリズナー
M19. POISON ROCKN’NROLL
M20. Ready Steady Go!
【ENCORE-1】
01. Blue Drive Monster
02. WAITING AT THE BUSSTOP
【ENCORE-2】
01. ハイブリッド レインボウ

the-pillows_live05

DISC INFORMATION

ALBUM 2014.02.26 release
『ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-』
avex trax
ww_tokusyu_the-pillows04
【参加アーティスト(収録曲)※収録順不同】Base Ball Bear(Funny Bunny)/THE BOHEMIANS(No Substance)/髭(ストレンジ カメレオン)/UNISON SQUARE GARDEN(Fool on the planet)/シュリスペイロフ(カーニバル)/WHITE ASH(White Ash)/Scars Borough(エネルギヤ)/東京カランコロン(ノンフィクション)/カミナリグモ(開かない扉の前で)/WEAVER(スケアクロウ)/ふくろうず(ハイブリッド レインボウ)/グッドモーニングアメリカ(この世の果てまで)/a flood of circle(Blues Drive Monster)/9mm Parabellum Bullet(インスタント ミュージック)

LIVE INFORMATION

the pillows 25th Anniversary

NEVER ENDING STORY “Do You Remember The 1st Movement?”

2014年1月19日(日)新宿LOFT

PROFILE

山中さわお(vo、g)、真鍋吉明(g)、佐藤シンイチロウ(ds)。’89年に結成、‘91年にシングル「雨に唄えば」でメジャー・デビュー。2012年7月に一時活動休止を発表しつつ、それぞれソロ活動を行う。2013年に活動を再開し、9月にシングル「ハッピー・バースデー」を発表。2014年に、結成25周年を迎え、2月26日にトリビュート・アルバムのリリースをするほか、アニバーサリー・イヤーの企画を進行中。

関連リンク

the pillows Official Website
YouTube
Twitter
facebook

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人