cero SINGLE「Yellow Magus」ディスクレビュー

Yellow Magus

SINGLE

cero

Yellow Magus

カクバリズム

2013.12.18 release

<CD+DVD>


針路を問う声に向けた濃厚な回答

昨年リリースされた2ndアルバム『My Lost City』で、高い文学性と音楽性を誇るシティ・ポップを作り上げ、キッズから玄人まで幅広い支持を集めたcero。この1stシングル「Yellow Magus」は、さらにその先を行く仕上がりだ。

ブラック・ミュージックのにおいがするとか、3ピースながら様々な音色が飛び出してくるとか、細かいトピックも幾らでも挙げられるのだけれど、もっと全体像で語るべき作品のように思う。収録されている4曲には、それぞれに詩だけでも読み応えがある物語性があって、その内容には、まるでオフビートな映画を眺めているような、リアリティと残酷さと心地好さがある。そう、航海や砂漠といった、我々の日常からかけ離れているように見えるキーワードが多用されているものの、そこに流れているのは紛れもなく今の時代の空気なのである。彼らが内向きに文学性や音楽性を磨くだけではなく、外向きに良いことも悪いこともキャッチするアンテナを張っているからだろう。それでいて、言葉使いや音使いには、堅苦しくない遊び心が滲み出ていて、あくまで音楽というエンターテインメントとして味わうことができる。それらの手腕は魔法のように見えるし、こういう人たちこそアーティストと呼ぶべきだな、と思わずにはいられない。

これまで彼らは、’00年代以降に都会で多感な時期を過ごした世代の価値観が映し出された音楽を生み出している印象があったが、そういう枠組みからも抜け出して、ひたすら己の道を突きつめているように聴こえてくる。そう感じた理由のひとつが、実はポップスにとってとても重要である色気が増しているところ。歌声がもっとも顕著だが、メロディがいい、以上! で終わらない、隅々まで惹き付ける音楽を生み出せるバンドはなかなかいない。これからも楽しみになる、大きな一歩だ。

(高橋美穂)

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