クリープハイプ – ツアー“秋、零れる程のクリープハイプ”もついにファイナル。ツアー最終日のZepp DiverCityで彼らはどんなライブを見せてくれたのか? 

クリープハイプ

7月にリリースされたニュー・アルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』を携えてのツアー“秋、零れる程のクリープハイプ”もついにファイナルを迎えた。10月からスタートした全国14ヵ所15公演という彼らにとって最長のツアーを経て、彼らはそこで何を掴み、この最終日のZepp DiverCityでどんなライブを見せてくれたのか?

TEXT BY 河口義一(WHAT’s IN? WEB編集部)

 

「今日、来てくれた人に歌で傷をつけたいなと思っています」

「今日、来てくれた人に歌で傷をつけたいなと思っています。……長くやりたいなと思って、このバンドを。……みなさんに忘れないでほしいなと……思って。一生懸命歌います」
cleepdc_1 ライブの中盤で歌われた「傷つける」を演奏する前の尾崎世界観のMCだ。彼はこの言葉をゆっくりとひと言ひと言選ぶように、とても大事なことを伝えるように語っていた。それは、この曲が彼にとって大事な曲だからだけではなく、“傷つける”ということ自体が彼にとってとても大事なことだったからではないだろうか?
ライブでいえば“格好いい最高の演奏をしたい”というエンタテイナーとしての自分がいる。“格好悪いほど生々しい想いを伝えたい”という表現者の自分もいる。結局それは尾崎世界観という人そのものだ。彼はステージの上で、そんな丸裸の自分をさらけ出さざるをえないからこそ、相手(=観客)にもちゃんと受け止めて(=傷ついて)ほしいということを、言葉少なく訴えかけていたのではないだろうか?
会場中が一体になって盛り上がるのもクリープハイプのライブの醍醐味だ。ただ、彼らのライブを見終わったあと、“ああ、楽しかった”という想いだけでは終わらないのは、そこに丸裸になって、観客のひとりひとりに対峙している尾崎がいるからだ。会場が一体になって盛り上がりながらも、どこか自分と尾崎が一対一で向き合っているような、尾崎の言葉を借りれば“傷つけ、傷つけられる” 関係があるから、彼らのライブを見終わったあと、濃密な印象が残るのだろう。そしてこの日ライブは、そんな印象がしっかり感じられるライブだった。

「ありがとうって素直に言えないから曲を作ったんだけど、
言えるようになりましたね。よかった、ツアーやってホントに」

cleepdc_2
Zepp DiverCityTOKYO公演の2日目、そしてアルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』を携えてのツアーの最終日。この日の冒頭、「なんか帰ってきたような気がして。だからひと言だけ……ただいま」という言葉のあと、つい体からあふれ出るように放たれた「よろしくっ」という言葉にまずグッときた。その言葉のスピード感、少しざらっとした声質に、尾崎の本気の気合いを感じる。その勢いにつられるように1曲目の「愛の標識」の演奏がスタートした。
1stアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』の1曲目でもあるこの曲は、やはり“始まり”がよく似合う。フロントの3人を引っ張るようなグルーヴを生み出す小泉拓のドラム。そこに印象的なフレーズの小川幸慈のギターが絡む(この細かいフレーズをグルーヴに乗せてプレイするのは、相当難易度が高いはず)。それを長谷川カオナシのベースが支える。そして尾崎の歌。バンドがひとつになって楽曲を鳴らすことの醍醐味をわかっている演奏だ。
その勢いのまま演奏される「ウワノソラ」、「左耳」、「手と手」からは、4人の興奮がこちらまで伝わってくる。最初の4曲がニュー・アルバムからではなく、ライブでの定番曲であるのは、まずは今の4人が生み出すグルーヴをピュアに感じてほしいという彼らのメッセージだろうか?。
そこでひと区切りを付けたあとは、ニュー・アルバムから「マルコ」。シャッフルのリズムがファニーなテイストのこの曲で、場の雰囲気をちょっと和らげたかと思うと、すかさず「週刊誌」を繰り出し、緊張感を再び生み出す。この辺りの縦横無人ぶりに彼らのライブ・パフォーマーとしての成長を感じずにはいられない。一曲一曲にメリハリを利かせて曲の世界観を生々しく放ちながらも、それらが一体となることで、また新しいライブとしての世界観を生み出しているのだ。
このライブは全15公演という彼らの中で最長のツアーだった。先日、金沢公演へ訪れた際に、尾崎は15本という長さを活かして、試行錯誤をしてきたと語っていた。前作よりさらに表現の幅を広げた『吹き零れる程のI、哀、愛』というアルバムの楽曲たち、そのアルバムの制作を通して明確になってきたメンバーそれぞれの役割と個性、パフォーマーとしての成長、一方でバンドが大きくなるにつれて、ツアーが長くなるにつれて多くなる初めてクリープハイプを観に来る人たち。そんないろんな要素をふまえた上で彼らがこの流れを作り上げたことが伝わってくる。そしてそれはこのライブを観る限り、成功していると言っていいだろう。
cleepdc_3
中盤、カオナシと尾崎のボーカルが絡むミドル・テンポの名曲「グレーマンのせいにする」を演奏して会場をクールダウンさせた後に、冒頭で書いた「傷つける」が歌われた。まさにこれから彼らのライブの中で、重要な位置を占める楽曲に育っていくのは間違いないだろう。まるで1メートル前に座った尾崎から語り掛けられているような印象さえ覚える瞬間。そんな瞬間を生めることに、今の彼らの凄みを感じる。
ただ、それだけが彼らの真髄ではない。「傷つける」を歌い終わると、張り詰めた会場内の緊張感を緩めるように「やりすぎた! 傷つけすぎた!」と笑いを誘う尾崎。それに続いてカオナシは「私発信でもひとつ傷を付けたいな」と言いつつステージのセンターに進み、「HE IS MINE」のべース・フレーズを弾きはじめた。
そのフレーズに弾かれたように、今度は会場内の熱度が一気に上がる。この一体感も彼らの真骨頂だ。ここからの攻撃的な怒涛の攻めはすごかった。新作からのライブ・ナンバー「あ」の、前につんのめるような8ビートから、リズムをためたヘビーな8ビートの「身も蓋もない水槽」へ瞬間的に色を変える表現の豊かさには、特にリズム隊の素晴らしさを感じた。
そこからは新作に入っているカオナシ作のアッパー・チューン「かえるの唄」を挟みながら、彼らの代表曲が続く。彼らの本音がぶつけられた「社会の窓」、シングルではないもののすっかり彼らの代表曲のひとつとなった「ラブホテル」、そしてクリープハイプに多くの人が注目するきっかけになった「オレンジ」や「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」、彼らがより多くの人たちへのアプローチを目指しながらも逆にその個性的な表現を極めた「憂、燦々」などの曲を聴いていると、この2年あまりの彼らの歩みの充実ぶりを思わずにいられない。
cleepdc_4
ここまでで、あっという間の90分が過ぎた。そして「お客さんにありがとうという気持ちを伝えたいです。本当にありがとう」「ありがとうって素直に言えないから曲を作ったんだけど、言えるようになりましたね。よかった、ツアーやってホントに」というMCを挟み、本編最後の曲「さっきはごめんね。ありがとう」が始まった。この曲も、また今回のアルバム、ライブの中で重要な位置を占める曲だろう。「傷つける」のちょっとヒリヒリした感情とはまた違った、優しくて温かな感情。ツアーに関わってくれた人への愛情、メンバーへの愛情、ファンへの愛情、そんないろんな愛情で会場を満たした。これもまた尾崎の本質だ。(そんなことを言うと、本人は否定するかもしれないが……)
アンコールでは、バイオリンを持ったカオナシと、尾崎のふたりで演奏した「自分の事ばかりで情けなくなるよ」、レギュラーを務めていたラジオ番組の最終回で弾き語られた新曲「ラジオ」(ライブではライブ・アレンジで演奏)、そして新作から珠玉のバラード「女の子」を演奏。
cleepdc_5 続くダブル・アンコールでは尾崎がファンである東京ヤクルトスワローズのマスコット・キャラクターである「つば九郎」が突然、登場。そのつば九郎から、4月に行われる日本武道館2デイズ公演の決定が発表された。そして最後の最後に「イノチミジカシコイセヨオトメ」を演奏して、約2時間のライブの、そしてツアーの幕は閉じた。
「オレンジ」を歌う前に、その歌詞になぞらえて尾崎は「今日でツアーは終わるけど、またその先に行きたいなと思って」と語っていた。
アルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』とこのツアーを経て確実に成長をした4人。現状に向き合い、自分たち自身に向き合い、つねに挑戦して、「一生懸命」やってきたからの結果が、この日のライブにも詰まっていた。(もちろん音楽って一生懸命やっていたら結果が出るものではないのだけれど)。
彼らはこれからもそうやって音楽を作り、演奏していくに違いない。今、約束されているのは武道館だけだが、新曲も楽しみだ。彼らが行くその先で、僕たちはいったいどんな景色を見ることができるのだろうか?

SETLIST

M01. 愛の標識
M02. ウワノソラ
M03. 左耳
M04. 手と手
M05. マルコ
M06. 週刊誌
M07. リグレット
M08. NE-TAXI
M09. グレーマンのせいにする
M10. 傷つける
M11. HE IS MINE
M12. あ
M13. 身も蓋もない水槽
M14. 社会の窓
M15. ラブホテル
M16. かえるの唄
M17. オレンジ
M18. おやすみ泣き声、さよなら歌姫
M19. 憂、燦々
M20. さっきはごめんね、ありがとう

【ENCORE-1】
EN01. 自分の事ばかりで情けなくなるよ
EN02. ラジオ
EN03. 女の子

【ENCORE-2】
W-EN01. イノチミジカシコイセヨオトメ

RELEASE INFORMATION

ALBUM 2013.7.24 release
『吹き零れる程のI、哀、愛』
Getting Better/ビクターエンタテインメント

【通常盤/CD】

DVD 2013.10.9 release
「クリープハイプの窓、ツアーファイナル、中野サンプラザ」
Getting Better/ビクターエンタテインメント

131009_creephyp_nakanojk

PROFILE

尾崎世界観(vo、g)、小川幸慈(g)、長谷川カオナシ(b、vo)、小泉拓(ds)。’01年に結成。’09年に現メンバー、スタイルで本格的に活動がスタート。’12年4月にアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャー・デビュー。今年7月にシングル「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」「社会の窓」、資生堂「アネッサ 2013」CMソング「憂、燦々」などを収録したアルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』をリリース。今回のライブ・レポートはそのアルバムを携えてのツアー・ファイナルである。

LIVE INFORMATION

日本武道館2デイズ公演決定!
2014年4月16日(水)・17日(木)  東京 日本武道館

<EVENT>
cross fm 20th anniversary special ~Challe Rock Festival 2013~
2013年12月26日(木)福岡 Zepp Fukuoka
W/back number

FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
2013年12月28日(土)大阪 インテックス大阪

rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 13/14
2013年12月30日(月)千葉 幕張メッセ国際展示場

EX THEATER OPENING SERIES GO LIVE VOL.1
2014年1月23日(木)東京 EX THEATER ROPPONGI
W/NICO Touches the Walls

関連リンク

クリープハイプ Official web site
Twitter(クリープハイプ公式)
YouTube(Victor Music Channel)
アルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』特設サイト

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人