plenty ALBUM「r e ( construction )」ディスクレビュー

r e ( construction )

ALBUM

plenty

r e ( construction )

headphone music label

2013.12.04 release

<CD>


バンドマンから音楽家へ——その大いなる一歩

 plentyが5月にリリースした2ndフル・アルバム『this』は、バンドのステージを一気に何段階も上げる、まごうことなき傑作だった。特にかつてないほど多面的な広がりを見せながら歌をていねいに育み、力強く息吹かせ、刺激するサウンド・アレンジは、江沼郁弥の音楽的な求道精神が高まりに高まっていることを浮き彫りにしていた。まだまだ過小評価されているきらいもあるが、江沼はボーカリストとしても、ソング・ライターとしても元来とてつもない天分に恵まれているミュージシャンである。彼はそこにおごることなく、作品ごとに誠実かつストイックなアプローチで自らの音楽力とバンド・サウンドのクオリティを研ぎ澄ませてきた。『this』のリリース時のインタビューで彼はこんなことを言っていた。

「僕にとっての“いい歌”ってメロディには情感があって、歌詞には奥深さを感じられるもので。リスナーが何年経っても聴けるものでもあり。だから、感覚的には演歌やフォーク、童謡を作っているような気分でもあるんですよ(笑)。今の時代ってサラッと消費される音楽が多いと思うんですけど。リスナーのなかに留まらずにすぐ忘れ去られてしまうような。それは仕方のないことかもしれないけど、やっぱり音楽家としてはその流れに抗いたいと思うんです」

“音楽家”として時代の消費に抗う楽曲を作りたい——。『this』から続く彼のそんな思いが形象化されているのが、この『re(construction)』である。本作では6曲の既発曲が江沼自身の手によってリアレンジされているのだが、大きな特徴はなんといってもストリングスが全面的にフィーチャーされていることだ。これまでも過不足のないバンド・サウンドを構築してきたplentyだが、ストリングスを導入しているからといって大仰なサウンド・スケープになるのではなく、あくまで歌の深度と普遍性が増すことに念頭が置かれているのが、すごくいい。さらに、リズム・セクションに対するこだわりも強く感じさる。唯一、ストリングスを入れずにパーカッションとソリッドなベースを押し出しながら漆黒のモータウン・ビートを刻む3曲目「少年」からはアトムス・フォー・ピース『Amok』の影響が見え隠れし、ダイナミックなワルツのリズムでサビの シンボリックなフレーズとストリングスを豊潤に絡ませる5曲目「理由」では、バンドの原風景が閉じ込められた楽曲に鮮やかな色合いを与えている。6曲目「人との距離のはかりかた」で招かれている世武裕子の“楽曲の尊い理解者”として鳴っているピアノも素晴らしい。また本作のコンセプトは12月27日、28日に東京グローブ座で開催されるライブへと引き継がれる。ぜひ多くの人に目撃してもらいたい。

(三宅正一)

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