Dragon Ash – EX THEATER ROPPONGIにて開催された、シングル「Lily」のリリースを記念したプレミアムなライブ。そこで感じたこととは──?

Dragon Ash

シングル「Lily」のリリースを記念したライブを、あらたにオープンしたライブハウス、EX THEATER ROPPONGIにて開催したDragon Ash。年明け1月にリリースされる3年ぶりのオリジナル・アルバム『THE FACES』への期待も高まる、熱いパフォーマンスは圧巻だった。この日のプレミアムなステージを、先日「Lily」のインタビューを行った唐澤和也の目線でレポート。彼がそこで感じたこととは何か?

TEXT BY 唐澤和也 PHOTOGRAPHY BY Kentaro Kambe

 

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1発目の「Fantasista」から観客の大合唱が鳴り止まない

 2013年12月4日。EX THEATER ROPPONGI。キャパ1,700人の会場は、まっさらなにおいがする。そのこけら落としウィークのステージに立ったDragon Ashにとって、この日のライブは久しぶりのワンマンである。

 

 開演前のしばしの喧噪。ステージ上を隠すように覆われた白い布。まるで、ばかでかいキャンバスのようなその布に咲くユリの花。Dragon Ashの花だ。そろそろ始まるぞというムードが流れだすと、そのユリに向かって客が詰め寄っていく。日本人の髪はまだまだ黒いのだなぁと思う。2階席の関係者席から見下ろすと、前へ前へとにじりよる黒のうねりが、この日の熱狂を予感させる。

 

 ほぼ定刻どおりに開演。予感は的中する。

 

 1発目の「Fantasista」から観客の大合唱が鳴り止まない。まるで、Dragon Ashには1,700人の裏ボーカリストたちがいるかのようだ。

 

 客席の興奮、歓喜、ダイブ。

 

 なのに、2階席で観ている僕は、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。その最大の理由は、僕が音楽に詳しいわけでもなく、いわゆる音楽ライターでもないという、やましさからだ。今日この夜、Dragon Ashの裏ボーカリストな彼らは、シングル「Lily」購入者特典として熾烈なるチケット争奪戦を勝ち抜いたコアなファン=どDragon Ashファンである。全国各地から駆けつけた熱いファンがいるだろうし、チケットを取れなかった人が全国にいる。なのに、“お前はどの面さげてそんな人たちを見下ろしてんだ?”と自分で自分にツッコみたくなる。いやいやいや。できることをしようと決めたではないか。

 

 そう思えたのは、「Lily」のリリース・タイミングで担当させてもらった、WHAT’s IN? WEBのインタビューでのkjの言葉によるところが大きい。

 

「例えば、ミュージシャンにかぎらず芸人さんでもいいんだけど、プロフェッショナルは、人に喜んでもらってなんぼだと俺は思っていて。どんなコアコアなことをやってもいいし、どんなチャラチャラしたことをやってもいいけど、人に喜んでもらって初めてエンターテインメントと為す。だから、人気やセールスにまったく興味がないという人は、プロになるべきではない」

 

 音楽ライターではない自分が、プロのインタビュアーとしてできることはなんだ? 読者が喜んでくれるかもしれないこととは? 僕は、質問する者として、その素となるものを探すために、このライブを観ようと決めていた。

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2曲目は「Run to the Sun」。エモい。1,700人が「走らせてくれ」と歌う。もしもその光が絵の具だったら全身ぐちゃぐちゃのごちゃ混ぜ色になっているであろう七色のスポットライトを浴びながら、観客のクラップハンズとダイブが会場を揺らす。僕は考える。なぜ、kjは“走らせろ”でもなく“突っ走ってやる”でもなく、「走らせてくれ」と願うのだろうと。

この胸に突き刺さる“a little more”感はなんなのだろう

ライブの2ブロック目では、観客の反応が変わった。まるで宝くじに当たったような歓喜。フェスではまず聴けない「Los Lobos」「Ivory」「few light till night」といった曲たちが続いたのである。目の前の客を喜ばすというDragon Ashらしい、優れた芸人ばりのサービス精神だ。もちろん、この夜の観客が、そんなサプライズに盛り上がらぬわけがない。
2階席の僕は、なぜか、ある天才芸人が口にした言葉を思い出していた。その人への質問は、“他者との比較ではなく、己の中で最大の才能はなんだと思いますか?”であった。
「サービス精神ですね。それを突き詰めていくから、すでに誰かがやってしまったことじゃなくて、“誰も見たことがないもので人を楽しませたい”となり、オリジナリティとなる。サービス精神ってね、僕は生きとし生けるものすべてにおいていちばん大事だと思います。動物だってそうだし、道ばたで咲いてる花だってそう。もしサービス精神がなかったら、僕はこの世界で生きてる意味がないとすら思いますから」
冒頭のkjの言葉と天才芸人の想いは、どこかで繋がっているような気がする。

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ライブは疾走を続ける。9曲目には、あの「Here I Am」。のちにDragon Ashの轍を振り返ったのなら、第何章目の始まりの曲に数えられるのか。「Here I Am」の数分間、僕はこの夜初めて“居心地の悪い2階席にも、いいことがあるんだなぁ”と思わされていた。もしも黒いうねりの中、同曲を聴いていたのなら、涙をこらえられなかったからだ。今日のステージの上にあの人はいない。
「Here I Am」のリリース・タイミングでのインタビューにおいて、kjは「その先」という短い言葉に込めた想いについて、次のように語っている。
「俺たちは“憂いの果て”まで行ったから。もうその先に行くか、ここにとどまるかしかない。そういうことを全部踏まえたうえで、“その先”へ行くために、この曲をやっているわけだよね。“その先”が超ハッピーかどうかなんてわかんないよ? そんなの全然わかんないんだけど、ここにいるよりはいいよね、そういうことだから。先が見えてるから行ってるわけでは全然ない」
ステージのkjが「let me sing a little more」とささやくように歌っている。「Run to the Sun」だけでなく、「Here I Am」でもそうなのだ。なぜ、“もっと歌わせろ!”ではなく、「少しだけでいいから歌わせてくれ」と、彼は小さく願うのだろう。

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突然に、圧巻のアクトが訪れた。それは、ライブ中にも関わらず質問の素を探すというおかしなことをしている僕を、一瞬にしてただの観客に変えてしまった瞬間だった。奏でられたのは、Yalla Familyをフィーチャリングした「Still Gonin’ On」と、ライブ・アクトでDragon Ashのベースを担当するKENKENとの合作「The Live」。どちらも、来年1月15日に発売される『THE FACES』に収められた新曲である。その2曲ともが尋常じゃなくカッコよくて、座ったままの足が勝手にリズムを刻みだす。客席のテンションもすごい。新曲だというのに、まるで待ち望んでいたお目当ての曲が流れたような興奮状態で、無数の拳が見えない空に向かって突き上げられる。

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そして、「Lily」。
kjは「あと少し咲いて 泣いて 笑っていたいから」と歌う。“もっと咲きたい”でも、“絶対笑ってやる”でもなく、「あと少し」。まだうまく言葉にできないが、この胸に突き刺さる“a little more”感はなんなのだろう。「Run to the Sun」も「Here I Am」も「Lily」も、詰まるところひとつの想いで紡がれている気がする。先ほどの新曲×2発にやられてしまった元質問者、現ただの観客の胸にも、だからこそ刺さるのだと思う。人が前に進むためには、大きな望みも時に必要だ。でも、ささやかな願いは切実で、その人が本当に願っていることで、だからこそ切なくもある。そして僕らの人生にも、その切なさはいつだってつきまとってくる。

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アンコールは、「百合の咲く場所で」と新曲の「Curtain Call」。
「百合の咲く場所で」の大合唱の前に、実はkjが今回のワンマンに乗り気ではなかったという衝撃のMCに会場の全員が笑った。もちろん、非サービス精神からではない。タイトでかぎられた新作アルバムの制作時間。3年ぶりのそれは「キャリア15年を越えたバンドが、まだここまで化けるのかという永遠進化論みたいなものを見せつけたい」と語るほどにすべてを賭けたアルバムだった。そんな制作期間から時間をおかず臨むライブは、万全な状態ではないかもしれない。そんな状態で客前に立つことは“?”ではないかという、彼なりのプロフェッショナルイズムであり、サービス精神の裏返しだったのだ。ラストにふさわしいタイトルの曲を持って、この夜のライブは疾走を終えた。

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前作、『MIXTURE』のインタビューでkjはこんな言葉を残している。彼への問いかけは“小説にも映画にもない、音楽だけが持つ魅力とは?”であった。
「心を揺さぶる表現もあるし、身体を揺さぶる表現もある。でも、心と身体を同時に揺さぶる可能性があるのは音楽だけだよね。そのどちらも射抜く可能性を秘めているっていうのは、かなりすごいことだと思う」
心と身体を同時に揺さぶる、音楽だけが持つ魅力。2013年12月4日の夜は、まさにその魅力が詰まったライブだった。質問する者として、その素を探すと決めていた男を、ただの観客に戻してしまうほどの衝動があったのだから。

SETLIST

M01. Fantasista
M02. Run to the Sun
M03. Trigger
M04. For divers area
M05. Los Lobos
M06. Ivory
M07. few lights till night
M08. Velvet Touch
M09. Here I Am
M10. Still Goin’ On feat.Yalla Family
M11. The Live feat.KENKEN
M12. AMBITIOUS
M13. ROCK BAND
M14. Lily
M15. TIME OF YOUR LIFE
【ENCORE】
EN01. 百合の咲く場所で
EN02. Curtain Call

DISC INFORMATION

ALBUM 2014.1.15 release
『THE FACES』
MOBSQUAD/ビクターエンタテインメント

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初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>

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SINGLE 2013.11.27 release
「Lily」
MOBSQUAD/ビクターエンタテインメント

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初回限定盤 ※Bonus Track付き
通常盤

Lily(MUSIC VIDEO YouTube Ver.)

LIVE INFORMATION

“Dragon Ash Tour THE SHOW MUST GO ON”
2014年2月1日(土)SHIBUYA-AX
2014年2月17(金)Zepp Tokyo
2014年2月9日(日)京都KBSホール
2014年2月10日(月)なんばHatch
2014年3月1日(土)Zepp Fukuoka
2014年3月2日(日)T.O.P.S Bitts HALL
2014年3月7日(金)Zepp Nagoya
2014年3月9日(日)CLUB CITTA’
2014年3月14日(金)岡山オルガホール
2014年3月15日(土)BLUE LIVE 広島
2014年3月23日(日)キッセイ文化ホール 中ホール
2014年4月5日(土)富山・南砺市福野文化創造センターヘリオス
2014年4月6日(日)福井県県民ホール
2014年4月12日(土)桐生市市民文化会館 小ホール
2014年4月13日(日)新潟LOTS

PROFILE

1996年にKj(vo、g)、IKÜZÖNE(b)桜井誠(ds)で結成。1997年に1stミニ・アルバム『The Day dragged on』でデビュー。その後、BOTS(dj)、HIROKI(g)、ATSUSHI(dance)、DRI-V(dance)が加入し7人編成で活動を行う。2012年4月にIKÜZÖNEが急逝。2012年8月にはデビュー15周年を記念したベスト・アルバム『LOUD & PEACE』、9月にはIKÜZÖNEのラスト・レコーディング音源を収録したシングル「Run to the Sun/Walk with Dreams」を発表。2013年は、5月にシングル「Here I Am」、7月にバンド初のライブ映像作品、DVD & Blu-ray「LIVE & PIECE」、11月にシングル「Lily」をリリース。

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