phatmans after school SINGLE「ツキヨミ」ディスクレビュー

ツキヨミ

SINGLE

phatmans after school

ツキヨミ

トイズファクトリー

2013.12.04 release

初回限定盤/写真 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


眠れる熊がついに覚醒っ!?

2010年に北海道で結成された4人組バンド・phatmans after school。本人たちのプロフィール写真などは一切非公表で、“pasくん”なる熊のキャラクターをバンド・イメージに起用したどこかミステリアスな存在の彼らだが、昨年2012年はあえて活動をペース・ダウンさせ、地元・北海道でのみライブを敢行。腰を据えて楽曲制作に取り組んできたそうで、4月に発表された久々のシングル「メディアリテラシー」、そして矢継ぎ早に放たれる本作「ツキヨミ」には、“眠れる熊がいよいよ目覚めの時を迎えた!”と胸が高鳴るような、見事な成長と成果が刻まれたものとなった。

テレビ・アニメ「夜桜四重奏~ハナノウタ~」のエンディング・テーマにも抜擢された表題曲「ツキヨミ」は、躍動的な4つ打ちビートが否応なしに青春性を加速させる、間違いなくバンドを代表するものになるであろう強力ナンバー。ヨシダタクミ(vo、g)が歌うその物語の中心には、“愛しい人”を思いながらどこにも行けない主人公がいて、“死にたいのに死ねないのは/どうしてなんだろう”なんてドキッとするようなことまで独りごちながら、ついには“いきたい 行きたい 逝きたい イキタイ 生きたい”と力強く前を向いて走り出す、ドラマチックな成長譚が描かれている。タイトルの「ツキヨミ」とは“月の神様”を意味するそうで、永遠に重なり合うことはない太陽との関係性が“愛しい人”とのメタファーとなっていて、明言こそされないものの、結局ふたりが出会うことはなく……。それでもこの歌がまったく悲壮的にならないのは、主人公が現実に立ち向かい、それを丸ごと受容したからであり、センチメントがある種のエネルギーになるという、ポップ・ソングの魔法が鮮やかに宿っているからだろう。

カップリングの「アオノヒメ」は、瑞々しい8ビートが疾走する佳曲。誤解を恐れずに言えば、いずれもバンプ(BUMP OF CHICKEN)やラッド(RADWIMPS)直系の音楽性だが、そこには野心的とも言える音楽的実験精神があって、煌びやかなシンセやダンス・ビートの導入がカラフルな情景を立ち上げ、エモーショナルな昂揚感を生み出し、楽曲にビビッドな説得力とリアリティを付与しているのだ。そんな未来志向の実験精神こそ、このバンドの希望だろう。年明けには初のワンマン・ツアーも控え、きっとandropに続くような快進撃を見せてくれるんじゃないか!? と勝手にデカい期待を寄せている次第。

(奥村明裕)

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