paionia MINI ALBUM「rutsubo」ディスクレビュー

rutsubo

MINI ALBUM

paionia

rutsubo

DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT

2013.12.04 release

<CD>


3.11から生まれた名曲「東京」を歌うための8曲

昨年3月にミニ・アルバム『さよならパイオニア』でデビューした3人組の2作目だが、その前作と本作は別物と捉えてもいいんじゃないだろうか。前作の青臭い葛藤と矛盾に溢れた6曲は、本作に向かう助走だったと今は捉えたい。そして本作は「東京」という曲のためのものではないかと思える。

福島県出身の高橋勇成(vo、g)と菅野岳大(b)は、高橋の母校である小学校に招かれ卒業生たちの前で挨拶をしているときに3.11の大震災に遭遇したのだそうだ。菅野がバンドのブログで綴っている本作についてのライナーノーツに詳しく書かれているので読むことをおすすめするが、その経験がこのバンドの佇まいや作品に影響していることは否めないだろう。菅野が“いわば高橋勇成による3.11以降の手記”と記す「東京」は、心に焼き付いている故郷の風景への望郷の思いだろうか。すでにライブでは演奏してきている曲だそうだが、それをアルバムに収録するまでに逡巡もあったことだろう。そんなことも透けて見える重みのある曲だ。歌詞が2行だけの「boredom」で始まり、アグレッシブなジャム・セッションの「tobacco」で幕を閉じる8曲からは、言葉とメロディを絞り出している高橋も浮かび上がる。

根底にあるのは変わらず青臭い葛藤と矛盾。未来への希望も不安も見分けがつかず、そこから横溢する内省とも呼べない混沌とした叫びが濾過されて、彼の言葉になるのだろう。“rutsubo”と名づけたのも頷ける。ともすれば太宰治あたりを引き合いに出したくなるような偏屈さと純粋さの混淆は、ちょっと探れば誰もが心の底に溜め込んでいるものではなかろうか。それに気付くかどうかで青春の過ごし方はまったく変わる。そんなリトマス試験紙のような曲をpaioniaはやっているのだ。だから一度は聴いてみたほうがいい。

(今井智子)

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