THE NOVEMBERS – 所属事務所を離れ自主レーベル“MERZを設立した彼らの今作は、あるテーマに沿ってリスナーへの届け方まですべて4人が考え行動したーー

THE NOVEMBERS

唯一無二の美学を貫きながら、作品ごとに音楽的な冒険と挑戦を繰り返している4人組、THE NOVEMBERSが自主レーベル・MERZからの第1弾作品となる4作目のフル・アルバム『zeitgeist』をリリースする。殺伐・荒涼としたディストピアを歌いながら、最後には希望を見出して未来に繋げる今回の作品を、メンバーたちは作品の届け方も含め、アルバムのテーマである問いかけと選択を追求するひとつのプロジェクトと考えているようだ。THE NOVEMBERSのあらたな挑戦について、フロントマンの小林祐介(vo、g)にインタビュー。

INTERVIEW & TEXT BY 山口智男

 

実家を出た子供の心境

──今回、新作をリリースするにあたって、7年間在籍していたUK PROJECTを離れ、自主レーベル、MERZを作ったいきさつをまず教えてください。

『zeitgeist』を作りながら、どんな人に届けたいとか、どんなふうに届けたいとか話し合っているうちに、たくさんの人に届けたいという最終目的は一緒だったんですけど、UK PROJECTと僕らの間で、そこに行き着くまでの考え方がちょっとずつずれていることに気づいて……。お互いのためになる方法を見出せなかったというか。特に今回のアルバムはただ広くあまねく、むやみやたらに拡散すればいいという作品ではありませんでした。まず最初に目的とか作品の価値観とかにふさわしいやりかたで提示したいというアイデアを、僕たちなりに持っていたし、そういうことをやってこそ意味があると考えていたので。一度、自分たちですべてうまくいったこともいかなかったことも責任を負ったうえで、筋を通そうと。これまでさんざん、「ああしたい、こうしたい」と言って人に関わってもらいながら、そのパートナーとは一緒にできないということになったとき、途方に暮れているだけではあまりにもダサいし、文句や不満を言うだけではただの子供ですから。UK PROJECTも僕らもずっと一緒にやれたらよかったという気持ちはあったので、お互いに寂しかったんですけど、円満に、子供が実家を出るみたいな感じで(笑)、おつかれさまって。今は、ああ、こんな仕事もあるのかというのが山積みで、リアルに実家を出た子供の心境を、洗濯物って誰かがたたまないとしまえないんだって、そういうレベルで実感しています(笑)。

──リリースにまつわる諸々をすべて、自分たちでやっていると聞きましたけど。

ええ。その気になったらもっと頼れるところはあるんですけどね。例えば、流通会社を通していないこともあえてなんですけど、流通会社さんも大手のレコード・ショップさんも声をかけていただきました。ただ、今回は、こういうお店……たくさん商品が置いてあるわけじゃないけど、あるべきものだけが置いてある店にまず足を運んでもらいたいとか、目を向けてもらいたいとかってことを実践したかったので。『zeitgeist』のテーマに売り方や届け方も近づけたかったんですよ。最初から広くあまねくではなく、ここに行ってもらいたいという想いから流通会社さんも通さなかったんですけど、その代わりに自分たちで一店舗一店舗、電話したりファックスしたりしているうちに、「これは大変だぞ」って話になって(笑)。もちろん、最初からわかってはいたんですけど、独立後、最初にやることがリスキーすぎたってところが逆に自分たちのモチベーションを上げている(苦笑)。中途半端にやると、サムいことになるだけだから、とことんリスクを背負って、ちゃんと自分たちの態度と言うか姿勢をモニュメント的に残せることをしようと考えながら、今、やっているところです。

──メンバー全員で電話かけてるんですか?

かけてますね。話しているうちに、どうやらメンバーらしいと向こうが気づくと、「実は昔、タワーレコードでバイトしてて、サインもらいました」とか、「店のバイトの子がファンなんです」とかって、そういうのが面白かったですね。これまでは作品を作ったあとは、作品が広まるのを見守るだけで、そこに力を貸してくれる人たちの存在を想像はしていたけど、実際には知らなかったんだなって。お店なりに持っているポリシーとか、THE NOVEMBERSの音楽は好きだけど、うちには合わないから今回は見送らせてもらいますとか、そういう、お店それぞれとかスタッフさんそれぞれの思想とか姿勢とか、実際の声を聞かせてもらえるので、やりながら僕らも張り合いがあるんですよ。

あなたが今、選んでいる価値観はどこから来たんだろう?

──最終的に、たくさんの人に届けたいと考えながら、なぜ、今回は広く、あまねくという方法をとらなかったんですか?

今回の作品は、今の状況を取り囲む価値観や慣例、慣習……「こういうのが普通だよね」とか、「こういうのが今、いちばん多いよね」っていう考え方とか、そういうものを否定するのではなく、「こういう考え方もあると思うんだけど」とか「あなたが今、選んでいる価値観はどこから来たんだろう?」とかって問いかけることや選別することがテーマになっているんです。それを販売方法や、誰かへの届け方としても形にできないかなって考えたのがこういうやり方にしたいちばんのきっかけでしたね。たくさんの人に届けたいという気持ちは変わらないので、ここをスタートに徐々に広げていくつもりです。

──否定するわけではないとおっしゃいましたけど、『zeitgeist』の曲調や歌詞を考えると、かなり攻撃的ですよね? 攻撃的と言うか、底意地の悪さが感じられると言うか(笑)。

それは鋭い(笑)。底意地の悪さという例えはまさに、ですね。そうなんです。完全にアイロニーです。「おまえが嫌いだ」「おまえは間違っている」というステレオタイプの否定は、僕からしたらたやすいことだし、効果がないと言うか、「おまえは間違っている」と言っても「間違っていない」と言われたらそれでおしまいじゃないですか。

──それは確かに。

それだったら、「こういう考え方をしたほうがいいと少なくとも僕は思うけど、君はどうなんだろう?」って問いかけることで、その人が考えるきっかけになったほうがいいと思うし、考えた結果、自分の考えが正しかったと思ってもらえたらならそれでも全然よくて、今回はそういうポジティブな考えをモチベーションにしつつ、シリアスさやアイロニーに繋がっている曲が結構あるんですよね。って言うか、そういう曲ばかりですね。8曲目の「Sky Crawlers」までは(笑)。

──そうですね。「Sky Crawlers」まではなんて言うんだろう? デスな感じと言うか(笑)。

ああ。感情を高ぶらせてウワー!!!! って言うよりも、ずっと真顔で何か言っているというテンションにしたかったんですよ。

──ああ、確かにずっとロー・キーでダウナーなんだけど、すごみはありますね。

そういうふうに言ってもらえるとうれしいです。

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