THE NOVEMBERS ALBUM「zeitgeist」ディスクレビュー

zeitgeist

ALBUM

THE NOVEMBERS

zeitgeist

MERZ

2013.11.30 release

<CD>


貫かれたスタイルから浮かび上がるメッセージ

“MERZ”という屋号を掲げて独立してから、第一弾となるアルバム『zeitgeist』。聴いてみると、独立が彼らにとって必然だったことが、改めてわかる。いや、今までの彼らが窮屈に映っていたわけではもちろんないのだけれど、今作は、テーマを知らずとも、ジャンルに当てはめずとも、THE NOVEMBERSとは何者であるかの筋が通っているように聴こえてくるのだ。

収録曲10曲のうち3曲のプロデューサーは、先日9年振りのアルバムを発表した、日本のオルタナ・シーンにずっしりと刻印を残す伝説の存在であるdownyの青木ロビン。その手腕が、今のTHE NOVEMBERSのモードとガッチリハマっている印象だ。重厚であり、緻密であり、森の中に迷い込んでしまったような深いサウンドに仕上がっている。しかし、異世界のものには聴こえず、むしろかつてないほどに生々しく聴こえてくるところが、今作の大きなポイントだと思う。タイトルの“zeitgeist”は、“時代精神”という意味を持つ造語。歌詞には、美しく詩的でありながら、私たちの日々からも寸分もブレていないと思えるような言葉が並んでいる。“冷たく干乾びた天国を/白日のもとに晒す/対岸の美しい火/後になってから/戦火だと知ったら”(「zeitgeist」)、“400m走/遅い人を待て/みんな1位になって誰もがビリ ビリ ビリ”(「D-503」)──こうしてみると、小林祐介という人は、歌っていきたいという信念を持っている人であり、歌っていくべきである才能を持っている人であるとつくづく思う。

なお、彼らは意思を、作品のみならず販売方法でも表明している。自らのオフィシャル・サイトとライブ会場、そして彼らがセレクトした全国のいくつかの店舗のみで、今作は入手できる。サウンド、歌詞、活動、すべてにおいて私たちに“どうする?”と投げ掛けているようだ。まるごと受け止めると、今現在の音楽そのものの居場所はここにあるのではないだろうか、そんなふうにさえ思えてくる。

(高橋美穂)

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