ハナエ ALBUM「十戒クイズ」ディスクレビュー

十戒クイズ

ALBUM

ハナエ

十戒クイズ

EMI Records Japan

2013.11.27 release

初回生産限定盤/写真 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


ボーダーレスな時代ならではのポップ・ヒロイン、誕生

あらたなポップ・ヒロイン、ハナエの誕生を高らかに宣言する1stアルバムである。

ノーブルなルックス、その裏側に抱えるダークな趣向など、じつに魅力的で多層的なものを持つハナエだが、その焦点が今作ではウィスパー・ボイスという声質に凝縮されているように感じる。それぐらい、シンガーに徹しているのだ。プロデュースと全曲の作詞作曲は、かつての相対性理論のメンバーで、現在は進行方向別通行区分、アゼル&バイジャンで活動する真部脩一。彼によるシンセ・ポップが描く思わせぶりな乙女心をハナエは見事に歌いこなしていて、萌え成分も高め。「キストピックス」の♪チュッチュチュチュチュチュ、なんて声には悶死するファンも続出するのではないだろうか。

それにしても、よくぞここまで振り切れたものだと思う。現在19歳のハナエは、そもそもはシンガー・ソングライターとしての才覚を追求するために福岡から上京してきた子で、一昨年の6月に自作曲のシングル「羽根」でデビュー。ただ、この頃に観たライヴでは、コンサバティブな雰囲気の歌の奥に毒性をかすかにチラつかせるなど、自身のポテンシャルの方向性を模索している印象があった。そんな資質は去年3月のシングル「BLACK BERRY」で明確になったものの、それでもまだエンジンがかかりきっていなかった。ギヤがトップに入ったのは、自分で曲を書くことを棚上げし、初の真部プロデュースとなった3枚目のシングル「神様はじめました」からだ。その頃、アイドル系のイベントに和傘を翻して登場した彼女の姿には、どこか突き抜けた雰囲気を感じた次第である。そう、今のハナエが放つ萌え感は、現在のアイドル・シーンとシンクロする気配もある。

「神様はじめました」以降のシングル4作品をメインに構成されたこのアルバムに、シンガー・ソングライターとしてのハナエの像は、潔いくらいに皆無だ。もはやアーティストとアイドルのボーダーもなくなりつつある今だけに、彼女はここからもっと面白い存在になっていきそうな予感がする。そんな期待を抱かせてくれる1枚だ。

(青木 優)

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