Dragon Ash SINGLE「Lily」ディスクレビュー

Lily

SINGLE

Dragon Ash

Lily

MOBSQUAD/ビクターエンタテインメント

2013.11.27 release

初回限定盤
通常盤
※ボーナストラック収録内容が違います。


生身のロック・バンド、Dragon Ashの再起動宣言

 “あらたなデビュー曲”と位置づけた「Here I Am」から約半年で届いたニュー・シングル。「Here I Am」がDragon Ashというバンドの歴史と故IKÜZÖNEへ贈るKjの肉声と言える作品で、力強さの裏側に涙の跡が見え隠れするものだったのに対し、ここでのKjははっきりと前を向いて胸を張っている。どちらの曲も“明日”というワードが出てくるが、前作が「起死回生手延ばす明日」で、今回は「僕が君の為の明日へ」だということからも違いはあきらか。“Lily(百合)”がDragon Ashとファンを繋ぐ共通のモチーフであることは言うまでもないが、純潔の象徴として聖書の中にも現れるこの花の高貴なイメージを今再び掲げるに際して、これほどふさわしい曲はないだろう。

 サウンドは『MIXTURE』以降のバンドの特徴である完全生演奏によるもので、桜井 誠の変幻自在のドラミングが素晴らしく、アップ・テンポのロック・ナンバーながらバラード的な情緒もたっぷり詰まっている。変わった点ではストリングスの使用で、やや控えめなエレクトリック・ギターの代わりに壮大さと温かみを加えているのがいい。そしてKjのボーカルはこれまで以上に情感を大切にしたていねいなもので、今さら“歌もの”という表現を使うのもおかしいが、例えば『INDEPENDIENTE』や『FREEDOM』の頃はどちらかと言えばサウンド志向だったのと比べると、あきらかに歌の重みが増している。「Here I Am」と「Lily」、そしてきたるべきニュー・アルバムが、原点に回帰した生身のロック・バンドとしてのDragon Ashの再起動宣言になることはおそらく間違いない。

 カップリング「Somewhere」はKjのよりパーソナルな音楽志向に沿って作られた、ミニマルなビートの繰り返しと翳りのあるメロディ、内省的なメッセージに彩られた静かな作品。さらにボーナストラックには今年の夏フェス“RUSH BALL”からのライブ・テイクが収められているが、通常盤が「For divers area」1曲なのに対し、初回限定盤はイントロを含む4曲入りなので断然初回盤を薦める。“ライブはその場に来てくれた人のもの”というポリシーを貫き、今年の夏に映像作品集『LIVE&PIECE』をリリースするまでいっさいライブ音源を発表してこなかったDragon Ashの姿勢は見事だが、ファンとしては最新音源が聴けることが単純にうれしい。新体制Dragon Ashがどれほど素晴らしいライブをやっているか、とてつもないパワーと躍動感を感じる貴重な記録だ。

(宮本英夫)

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