蜜 ALBUM「キス アンド クライ」ディスクレビュー

キス アンド クライ

ALBUM

キス アンド クライ

EMI Records Japan

2013.11.27 release

<CD>


違うことの哀しさと面白さ、蜜の味

寄り添ったり、ぶつかったり、融け合ったり、ぷつりと離れたり。木村ウニと橋詰遼のふたりが描き出すのは、男と女という生き物が相容れぬゆえに生まれる不協和のハーモニーだ。思考も嗜好も異なりながら、同じ生物系にカテゴライズされてしまったふたつの生き物の悲喜劇こそが恋愛であると私は思う。元来無理のある関係性から生み出されるひずみ、そこに介在する喜怒哀楽というのは、ここで論ずるまでもなく、誰しもが経験してきたものであろう。木村と橋詰は、歌声、詩作、恐らくはキャラクターに至るまで、大きく違う。その個としての差異と性差がユニットとして融合した上で、音楽的ジャンルさえもクロスオーバーし、相いれぬ生き物のストーリーを紡ぐ。その乱雑な連立方程式の面白さこそが、蜜の魅力だ。そう、哀しいかな男と女は、無理があるとわかっていても違うからこそ惹かれ合い、キス アンド クライを繰り返しながら、同性同士では不可能なものを出産するのだ。

今回生み落とされた3rdアルバムは、そんな蜜の面白みがふんだんに盛り込まれた聴き応えのある1枚となった。ブラック・ミュージックの渋みも持つ「絶体絶命」、「すったもんだ」のまくし立てるような毒気のあるリリックと掛け合いの面白さ、「恋と呼ぶには」の甘ったるいポップスの多幸感。半端じゃない自由度を保ちながらも、オープニングの「箱の中のランデブー」やエンディングの「kiss and cry」では、突き刺さるようなメロディで真正面からリスナーの耳をシッカリ掴む。特に木村のソウルフルで多彩な歌声は、女性ボーカルとして間違いなく稀有であるし、それに呼応する橋詰の草食系男子を彷彿とさせるやわらかな声と誠実なギター・サウンドとのバランスは絶妙の一言だ。編成的にカフェ・ミュージックを想像されるかもしれないが、そんなゆるふわ系のカワイイものではない。というか、多分彼らはなんでもできてしまうだろう。オーバー、アンダー、問わずだ。

今更になるが、私が初めて蜜の名前を聞いたのは、2012年のフジロックに行った知人の「今年のベスト・アクトは蜜だね」の一言だった。こんな盤を作れるうえにライブも良いとなると、その可能性がちょっと恐ろしかったりもするのだが、何はともあれ、今後の彼らの動向に大いに期待したい。

(小島双葉)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人