The SALOVERS SINGLE「文学のススメ」ディスクレビュー

文学のススメ

SINGLE

The SALOVERS

文学のススメ

EMI Records Japan

2013.10.16 release

初回生産限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


4人が見つけた進むべき道

 3ヶ月前のシングル「アンデスの街でこんな夜はHOT HOT HOT!」では、リード・トラック「HOT HOT HOT!」で映画をモチーフにしていたが、今度は”文学”である。それも森鴎外や三島由紀夫、太宰治といった大家の作品が堂々と歌われている。終盤では梶井基次郎のシュールな作品の引用もあり、バンドのHPのトップはこの本を手にしている写真になっている。そう、まさに“若いときに読むべき”と言われる作品が堂々と歌いこまれているのだが、そうした作品をモチーフにして現実が擦れ違って行く様子を描いていく。乱れた日本語や崩壊するモラルへの批判というより、そうした現実の中で孤立して行く自分を“文学”になぞらえているようだ。そして娯楽性より芸術性を重んじる“純文学”に、自分たちのピュアな思いや音楽を重ねているのだろう。ちなみに“純音楽家”は遠藤賢司が既に名乗っている。

 2曲目「カレー三昧」も、現実と折り合えない自分を持て余している歌だが、古舘佑太郎による躍動感たっぷりなピアノを加えた演奏は、苦悩を経て、人がなんと言おうと我が道を進むことを選んだ軽やかさを感じさせる。振り返れば4月に出た「床には君のカーディガン」から、次のステップに向けてサラバーズは、自分の心の奥にあるものを赤裸々に描くことで、成長していく姿を描いてきたと言える。男としての葛藤、人としての迷いなど、誰かに言うのも恥ずかしいし自分でもスルーしたくなるものだ。それを真っ向から歌うことで自分の本質を探そうとして来たのだ。その答えが、「文学のススメ」であり「カレー三昧」である。そして答えが見つかったあとの清々しさと、大人になっていく寂しさを、故・志村正彦の作であるフジファブリックのキラー・チューン「茜色の夕日」のカバーで表わした。性急なシングル・リリースを文字どおり足跡にした2013年のサラバーズ。進むべき道はもう見えているようだ。

(今井智子)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人