soulkids MINI ALBUM「ランナーズハイ」ディスクレビュー

ランナーズハイ

MINI ALBUM

soulkids

ランナーズハイ

EVOL RECORDS/MOONSHINE Inc.

2013.09.18 release

<CD>


切なく強く美しく、走り続けるバンドの存在証明

 約3年振りの新作になるが、その間にメンバーが替わっているのでこれが新生soulkidsの第一弾。正直きちんと聴くのは初めてなので、彼らのルーツについてはよく知らないのだが、2000年結成ということは、おそらく’90年代の音楽体験がベースになっているのだろう。実際、アルバム冒頭を飾る「ランナーズハイ」はグリーン・デイ風の典型的な’90年代ポップ・パンクのギター・リフで始まる、爽やかなスピード感が耳に心地よく響く。メロディは日本人好みのウェットで叙情的なもので、ソフトな声質と、語尾がひっくり返るような揺らぎが特長の歌声も含めて、彼らが掲げる“センチメンタル・ロック”というモットーにふさわしいリード曲だ。

 しかしちょっとボリュームを上げて演奏に耳を澄ますと、2本のギターの描くリフの微妙なズレ、一見豪快な歪み一辺倒に見えて細かく動き回るベース、様々なリズム・パターンを使い分けるドラム、さりげなく聴こえるピアノのオブリガードなど、スキルの高さとアイデアの豊富さが見えてくるのが面白い。「水平線」は、重いハード・ロックのリフとリズムで始まりながら、どんどんテンポを上げ、ごく自然に明るく広がりのあるメロディックなサビに至る。「クリオネ」はさらに面白く、ピアノのループ、打ち込みのリズムやシンセサイザーの音色を大胆に取り込み、かといってよくあるダンス・ロックに着地させるのではなく、ハツラツとした生バンドのグルーヴを失わない。’90年代ミクスチャー、オルタナといったジャンルの音楽も、彼らの中にあるのだなという印象を受ける。

 「センチメンタルシンドローム」もピアノのループ、そしてマーチングのリズムが印象的な祝祭感溢れる曲で、「SUPER WONDER」は全体にドリーミーなスパイスをかけた穏やかなサウンドの中で、アフリカン・テイストのドラムやネオアコ風のギター・リフが爽やかに響く。そして「ハレルヤ」は再び冒頭に戻り、ポップ・パンク系のサウンドと叙情的なメロディを掛け合わせた疾走感溢れる曲だ。

 どの曲も緻密にアレンジが練りこまれ、ルーツとなるジャンルの幅もあり、メンバーのスキルも十分に高い。そしてなんといっても、ボーカル・柴山慧のちょっと頼りない感じの声質に潜む“泣きの成分”が魅力的で、難しいことを言わずとも「切なくてポップで良い感じだから聴いてみて」と言ってしまっていいような気がする。こういうバンドが10年以上マイペースで音楽を続けているというのは、なんだかうれしいし、いろんな意味で励みになるように思う。

(宮本英夫)

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