Ropes MINI ALBUM「usurebi」ディスクレビュー

usurebi

MINI ALBUM

Ropes

usurebi

THROAT RECORDS

2013.09.04 release

<CD>


繊細な美しさをたたえた歌とギターに浸りたい

 繊細な心の揺れをそのまま映し出す音像、そして、“いま、この一瞬”に対する愛しさが募っていくような歌。こんなにも美しく、こんなにも切ない音楽に触れたのは、本当に久しぶりだ。

 ART−SCHOOL、downyのメンバーを中心に構成されていたバンド“KAREN”(’05〜’10年)解散後、ボーカリストのachico、ギタリストの戸高賢史により’11年に結成されたユニット“Ropes”。これまでに発表された音源は7インチシングル「Slow/Last Day」(現在は入手困難)のみ。まさに知る人ぞ知る存在だったのだが、本作『usurebi』(5曲入りミニ・アルバム)によって、このデュオの魅力はさらに多くのリスナーのなかで共有されることになるだろう。

 ふたりの音楽は基本的に、ギターと歌だけで成り立っている。奥深いレイヤーを描きながら、穏やかで切ない感情を表現する戸高のギター・サウンドの中で、センシティブな手触りを備えたachicoのボーカルが広がっていく。夢と現実の境目がぼんやりと溶けていくようなその感覚は、まさに唯一無二。聴いているうちに、この場所にずっと留まっていたい、という欲求がどんどん膨らんでしまう。

 もうひとつ記しておきたいのが、achicoの手による歌詞の世界。ノスタルジックなイメージと凛とした力強さを共存させた旋律とともに彼女は、ゆっくりと確実に変わっていく風景、記憶、感情を綴っていく。どんなに愛おしい瞬間も、どんなに美しい風景も、どんなに豊かな愛の交歓も、そして、どんなに素晴らしい音楽も、時とともに流れて消えていき、また人々はそれぞれの現実へと戻る——彼女の歌を聴いていると、人間の根本的な宿命のようなものを感じてしまうのだ。しかし、それは決して後ろ向きなことでも悲しいことでもなく、むしろ前向きな生へとつながっている。『usurebi』を聴き終わったときに生まれる、“目の前にある時間と風景を慈しみたい”という感情。それこそが、Ropesの魅力の根源なのだと思う。

(森朋之)

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