SAKANAMON SINGLE「花色の美少女」ディスクレビュー

花色の美少女

SINGLE

SAKANAMON

花色の美少女

ビクターエンタテインメント

2013.08.28 release


甘さと苦さとが表裏一体となった脳内妄想ラブ・ソング

 “SAKANAMONの音楽の魅力を3つあげよ”と言われたら、ひねりの効いた内省的な歌詞とポップなメロディと3ピースによるスリリングなバンド・サウンドと回答したくなる。ただし、ちょっと説明が必要だろう。ボーカル&ギターの藤森元生の書く歌詞はたしかに個性的で、ひねくれているように見えるのだが、野球に例えるならば、変化球ではなくて、スピンの効いた速球系だろう。独特の言葉遣いをしていて、漢字の読み方も凝っているのだが、それらの言葉が味わい深い歌声に乗ることによって、最終的にはリアルで生々しい想いとしてズシッと届いてくる。そこにこそ、彼らの音楽の神髄があると思うのだ。テレビドラマ「たべるダケ」のオープニングテーマになっている「花色の美少女」もそんな彼らの特性が全面に発揮された作品となった。

 この歌の主人公はアイドルへの想いを支えとして日々を生きている。つまりこれは日常の生活の中での妄想を描いた作品。“花色の美少女”という響きからは甘美なイメージが広がる。が、甘美な妄想を描けば描くほどに、主人公を取り巻く虚しくてわびしい現実も浮き彫りになっていく。甘さと苦さとが表裏一体になっている。光がまぶしければまぶしいほど、闇は濃くなる。闇が濃いほど、光のまばゆさも際立っていく。そのコントラストがこの歌の世界をより印象的なものにしている。ボサノバ風のアレンジを加えたりするひねりもこのバンドならではだろう。

 2曲目の「崩壊パッケージ」でも「進化する変態妄想」「精神崩壊」「無限の鉛」など、観念的な言葉がたくさん使われているのだが、理屈が前面に出るのではなくて、ソウルフルな歌として成立していて、最後のフレーズにはグッときてしまった。3曲目の「回答少年」でも悶々とした日々を送っている主人公の切実な想いが胸に響く。使っている言葉は時として難解だったり観念的だったりするのだが、そうした言葉のオブラートの中に詰まっているのはやむにやまれぬ想いやほとばしる衝動や切実な願いだ。“聴く人の生活の肴になるような音楽作りをめざしている”ということから、SAKANAMONというバンド名が付けらけたのだというが、どうやらこの肴の味わいはなかなかに奥が深いようだ。

(長谷川誠)

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