GOOD ON THE REEL MINI ALBUM「マリヴロンの四季」ディスクレビュー

マリヴロンの四季

MINI ALBUM

GOOD ON THE REEL

マリヴロンの四季

FOURseam

2013.08.21 release

<CD>


ロマンティックで壮大な夢をギターロックに与えた新作

 本作のタイトルの“マリヴロン”とは、宮沢賢治の童話「マリヴロンと少女」からとられたのだろうか。だとしたら、なるほど本作で描こうとする風景にピタリと当てはまる。牧師の娘のギルダと彼女が憧れる女性=マリヴロンを描いたこの宮沢賢治の短編には以下のようなくだりが出てくる。

ギルダ「先生はここの世界やみんなをもっときれいに立派になさるお方でございます」
マリヴロン「正しく清くはたらくひとはひとつの大きな芸術を時間のうしろにつくるのです」

 そう言ってマリヴロンは美しい鳥が飛んだあとにこそ芸術が生まれるのだ、と説く……。’05年に結成された5人組のこの新しいミニ・アルバムも、あるいはそういうことを伝えようとしているのかもしれない。例えば3曲目「花」では、自分と相手との人間関係に対し、あえて“枯れる”という否定的な言葉を与えることで、決してふたりはそうではないはずだと強く主張する。“時間のうしろに大きな芸術を作る”というマリヴロンの哲学になぞらえるなら、時間が過ぎたあとにこそふたりの関係は成熟していく……ということを伝えたかったのではないか、と……。

 サウンド面はBUMP OF CHICKEN、NICO Touches the Wallsあたりの路線を受け継ぐようなダイナミックで甘美なギター・ロック。サビに向かって少しずつ段階を踏みながら熱量をあげていき、5人のアンサンブルが沸点に達するクライマックスで最も重要なキーワードを高らかに告げる……ほとんどの曲がそうした構成の上にある。決して器用な連中ではなさそうだが、感情ありきのまっすぐな演奏を生かすには、このくらい青くストレートな構成の曲のほうが合うと言えるだろう。ピアノのリフの連打に始まり、中盤からディレイが美しくかかったギターが主役へとシフトしていく6曲目「24時間」のような曲調で、さらにバンド感が感じられるようになれば存在としてもっと面白くなるのではないかと思う。

 そういえば、このバンドの2作目のミニ・アルバムのタイトルは『シュレーディンガーの二人』。物理学者エルヴィン・シュレーディンガーの名前を頂戴していた。このバンドはどこからこうした参照点を見つけてくるのだろうか。“時間のうしろにひとつの大きな芸術を作る”というマリヴロンの主張さながらの、ロックへの壮大な夢が彼らの道程のうしろで結実していくことを願う。

(岡村詩野)

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