相対性理論 ALBUM「TOWN AGE」ディスクレビュー

TOWN AGE

ALBUM

相対性理論

TOWN AGE

みらいレコーズ

2013.07.24 release

<CD>


乳白色に沸騰する、“音楽+言葉”のニュー・フロンティア

 アルバムの冒頭、すでに僕らは上海にいる。リコーダーの無垢な音色を先導に、手ぶらで降り立ってしまった不安をかき消しながら、そこでの生活を模索している。いつしか視点はトーキョー・シティの高層ビル群へ。そして、甘美な退屈が充満するニュー・タウンの2DKへと帰還する。

 相対性理論3年ぶりの新作は、美しくも切ない、旅のアルバムだ。といってもそれは、“るるぶ”や“じゃらん”が提案する“余暇”とはまったく違う。決定的な温度差がある。ここには帰りの切符もホテルの予約もなく、全編に色濃く漂うのは、膨れ上がる不安と焦燥感。やくしまるえつこのミルキーな歌声は、いきあたりばったりの感情と、だからこそ粟立つ本能を巧みにトレースしながら、現代のバカボン(放浪者)たちの微かな夢を受け止めている。

 坂本龍一や大友良英、小山田圭吾、マシュー・ハーバードら国内外10組の精鋭たちが参加した変則リミックス・アルバム『正しい相対性理論』から一転し、サウンド・プロダクションはあくまでバンドの呼吸に則ったものであり、「キッズ・ノーリターン」で聴ける米津裕二郎のバイオリンを除き、すべては5人の演奏によるもの。リバーブやディレイによりトロリと液状化した永井聖一のギター。Itokenのエフェクティブな空間設計。なによりサウンドのベースにあるのは東京を代表するインディペンデント・グループの矜持であり、センスの共振。そんな5人の連帯感こそが、ともすれば分裂しがちなイメージの断片に、物語性を与え、またそれは、スナップの連続である“スライドショー”のスピードを毎秒25コマにまで速めることにより出現する“映画”を思わせたりもする。勝ち気なフィアンセが神父を探しに出かける「救心」。“来る・来ない・来る・来ない”と花びらをちぎりながら愛のラビリンスを彷徨う「YOU & IDOL」。とめどなく溢れ出す恋の高揚を体育座りの姿勢で押さえ込んだ「ほうき星」。どの曲をとってみても、言葉=舞台設定の新しさとサウンドの包容力とのバランスが絶妙なのだ。

 ゲリラ豪雨のあとにかかる虹。山火事により更新される植物。彼らの言葉とサウンドは、そんな相互関係を結びながら、小さな隕石となり心臓を射抜く。

 もはや音楽は、バリエーションの量産に過ぎないのかもしれない。言葉も綴られ尽くしたかもしれない。しかし“音楽+言葉”の接合部には、未だ未開のニュー・フロンティアが待ち受けている。そんなことを確信させてくれる名盤だ。

(祭蓮しずか)

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