いきものがかり ALBUM「I」ディスクレビュー

I

ALBUM

いきものがかり

I

EPICレコード・ジャパン

2013.07.24 release

初回生産限定盤<CD+DVD>
初回仕様限定盤<CD>


『 I 』の中には“YOU”もいる

 誰にでも当てはまる普遍的な感情があるのだと思う。例えば初めて異性に恋心を抱いたときのやるせない気持ちとか、ふたりで一緒に歩いたときの心臓が飛び出しそうになるぎこちなさ。その人が何歳であろうとどんな環境に暮らしていようと、一度はそんな経験に思い当たるはずだ。

 恋愛だけではない。自分の将来に対しての漠然とした不安。明日も笑顔で過ごせる無事な日々であってほしいという祈るような時間。毎日が長い長い旅の途上のように感じられるとりとめのない孤独感。それは大人になればなるほど強くなってくるものである。

 いきものがかりの新作『 I 』は、そんな誰にでもある日々の心情をすくい上げた傑作だ。大げさな言葉を使わず、過剰な作為も感じさせない。それでいていつのまにか涙がにじんできてしまうような今までのいきものがかりであり、それでいて今までのどのアルバムとも違う確かさに貫かれている。

 全14曲。言うまでもなくアルバムの柱になっているのが、「風が吹いている」だろう。それでいてあの曲に頼っていない。8分という大作がアルバムの中で浮いてしまうことはないだろうか、という懸念は見事に払拭された。前後にどんな曲を配するか、アルバム全体として何を伝えるか。ほかの13曲に込められ綴られている細やかな感情の集大成として聴こえてくる。いくつもの流れが集まる大河のような曲。しかも渾身の「風が吹いている」のあとにダメ押しのように包み込んでくれる曲のタイトルも「ぬくもり」である。

 水野良樹が7曲、山下穂尊が6曲、吉岡聖恵が1曲。それぞれの持ち味と新しい試み。

 毎日の暮らしは喜怒哀楽と4つに分けられるほど単純ではない。その狭間でこぼれてしまうような儚さや切なさ、そしてもっともっとささやかな笑顔や泣き顔。それが『 I 』だ。”愛”なのか”私”なのか。その中には“YOU”もいるに違いない。ここには年齢を超えた人間の感情がある。

(田家秀樹)

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