(((さらうんど))) ALBUM「New Age」ディスクレビュー

New Age

ALBUM

(((さらうんど)))

New Age

カクバリズム

2013.07.17 release

<CD>


’13年に鳴り響く優れたポップ・ミュージックを体現

 いきなり自分の話で申し訳ないが、僕のポップス原体験は大滝詠一の「A LONG VACATION」だった。大滝氏のキャリアもバック・グラウンドもまったく知らず、レコード屋で見たジャケットがカッコ良かったから買っただけなのだが、わけもわからず聴いているうちに(僕が持っているレコードは1枚だけだった)、その気持ち良さにやられて、1日1回は聴かずにいられない状態になった。当時小学生の僕は“ロンバケ”(ドラマ「ロングバケーション」)の音楽的な価値をまったくわかっていなくて、ただ“ステキだな、気持ちいいな”と思っていただけだったのだが、そのリスニング体験は僕の人生に決定的な影響を与えたのだった。

(((さらうんど)))——イルリメこと鴨田潤(vo、g)、Traks BoysのCrystal(key)、Kenya Koarata(pc、dram machine)によるポップス・バンド——の2ndアルバム『New Age』を聴いて僕は、ロンバケに浸っていたときのことを鮮明に思い出した。音楽性が似ているという意味ではない。歌の中に街の息遣いが感じられ、そこでは愛おしくも切ないラブ・ストーリーが描かれ、リスナーの心を気持ちよく揺らす——その一連の“効果”が共通していると思ったのだ。実際、こんなに素敵なポップス体験は本当に久しぶりだ。基本になっているのは、ディスコ・ミュージック。ソウル・ミュージック、テクノ、ハウス、エレクトロなどを内包しつつ、’13年の街のBGMという形容がぴったりハマるサウンドを体現。キラキラと胸キュンが同時に体感できる音像は前作からさらに進化している。もちろん、ロマンチックなラブ・ソングを軸にしたソング・ライティングも素晴らしい。誰もが心の中に隠し持っているポジティブでラブリーな感情を刺激し、誰かと恋をしたくなる。それはまさに優れたポップ・ミュージックだけが持ち得るマジックなのだと思う。

 揚げ足を取り合ったり、見えない誰かを中傷したり、疑心暗鬼になったりするのはもうやめて、愛らしく暮らしていこう。『New Age』を聴けば、誰もがそんなふうに思うはず。このアルバムが街中で鳴り響き、人々が理想とともに生きていく。そんな光景を夢見ていたい。

(森 朋之)

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