新山詩織 SINGLE「Don’t Cry」ディスクレビュー

Don't Cry

SINGLE

新山詩織

Don’t Cry

Being

2013.07.10 release

<CD>


胸をザワつかせる、生身のもがき。説得力を持った歌

 伸びやかなサビメロ。でも、伸びやかな声というには胸がザワつきすぎる。なんなんだろう、この感じは? それが、新山詩織の「Don’t Cry」を聴いた最初の印象だった。わかってほしいけど、べつにわかってくれなくてもいい。そんな矛盾に満ちた迷える想いを、それとは相反する凛とした 捨て身感で語りかけてくる。現役の高校3年生の生身のもがき。その本気さに圧倒されたのだ。

 4月に「ゆれるユレル」でメジャー・デビューし、この2ndシングルは映画「絶叫学級」の主題歌となった。「ゆれる~」の“内向的な詞の世界観”にインスパイアされた監督が、“たったひと言で、世界が変わることもあるかもしれない”をキーワードに、書き下ろしを依頼したという。

 言葉というものが持つ影響力のコワさ。だから動かずに誰かと同じフリをするコワさ。それを傍観していれば、社会は確実に閉塞していく。学校はその縮図。“どうすればいいの?”という新山詩織の叫びは、もはや10代だけのものではないことに気づかされる。実にイタイ。でも、素直に受け取れる。そういう生来の説得力を持った歌声だ。

 一介の音楽ファンとしては、笹路正徳(key)、土方隆之(g)、美久月千晴(g)、川村カースケ(ds)といった達人に混じって、若い女性アーティストがストリートで鍛えたアコギをかき鳴らしているという、その姿を想像するだけでうれしくもある。世代を越えて芯の輝きがぶつかり合い、溶け合う新しさに触れた思いがした。

 鮮烈なフュージョンは、カップリング「ありったけの愛」でも。憧れていた佐藤タイジにプロデュースを願い出たところ、佐藤自身の提案でTHEATRE BROOKとのセッション・カバーが実現したという(「ゆれるユレル」のカップリングではTHE GROOVERSと「現在地」をセッション・カバー。新山はいわゆる目利きでもあるわけだ)。自らもエレキで加わったバンドのグルーヴに押され、思わず発する「Yeah」の声。それはまだ、人生の愛すべき垢にまみれてはいないが、「ありったけの」と畳みかける声には、人生の喜怒哀楽に挑みかかろうとする魂の美しさがある。新山詩織という人をもっともっと知りたくなった。

(藤井美保)

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