高橋 優 ALBUM「BREAK MY SILENCE」ディスクレビュー

BREAK MY SILENCE

ALBUM

高橋 優

BREAK MY SILENCE

ワーナーミュージック・ジャパン

2013.07.10 release

初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤/写真 <CD>


覚醒か? 素っ裸の感情を激しく歌う、要注意の3作目

 ヒゲを生やし始めたのは、素の自分を見せるという意志表示だったのだろうか。年末に7曲入り(『僕らの平成ロックンロール②』)を出したばかりなのに、早くも3作目となるフル・アルバムが登場。ここには、今まで以上に素っ裸の高橋がいる。

 “沈黙を破れ”というタイトルは先行の8thシングル「(Where’s)THE SILENT MAJORITY?」と通底しているのだろう。BRAHMANとの激烈なコラボが実現したこの曲での高橋は、自分の主張を隠し、周囲に流されるままに生き、結果、みんなが大勢になんとなく同意してしまっている日本の現況へのイラつきを叫んでいた。思えばこうしたモードは昨夏のシングル「陽はまた昇る」の頃からあったのだろう。

 ゆとり教育に変わっていく過程を体感した自分の世代を歌う「ジェネレーションY」。明日の日本にどうにか希望を見出そうとする「泣ぐ子はいねが」は、出身地である秋田のなまはげからイメージをふくらませた曲だ。20代最後の歳を生きる高橋は今、自分以外の人間たち──特に社会に生きる有象無象の人々の人生や生きる姿に気持ちがいっているのではないだろうか(先述のシングル曲でのビデオクリップはいずれも象徴的だ)。その意味では、これまでよりもグッと外に視線が向いた作品である。

 と言っても、本作に収められているのは、決して社会への意識がにおう歌ばかりではない。生きていくことやパーソナルな幸せに言及した「蝉」「涙の温度」といった曲もちゃんとあるし、ぬくもりや孤独感など、アルバムのそこここに従来の彼らしさも生きている。ただ、先ほど触れたイラつき、憤り、あるいはジレンマ……自身の内面でうごめくそういったレアな心情を爆発させたことで、シンガー・ソングライターとしての高橋は、自分の心を包み隠さず歌っていく覚悟をここで表明した。これはそういうアルバムである。

 歌に込めた熱さから、これまでも決して収まりがいいアーティストだとは思っていなかったが、その核の部分が一気に溢れ始めた感じだ。覚醒した、と言えるだろうか。となれば、彼の本領が発揮されるのはここからだろう。今後、人の心をもっともっとえぐるような歌をうたっていってほしい。僕はそう期待している。

(青木優)

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