山崎あおい SINGLE「夏海」ディスクレビュー

夏海

SINGLE

山崎あおい

夏海

ビクターエンタテインメント

2013.07.10 release

初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤/写真 <CD>


高女子共感度! 女子の自己完結ツイート、歌ってます

 夏というのは面白い季節だ。”ひと夏の恋”という言葉がいまだ大きな顔をしていられるように、なんとなく夏といえば”恋”がセット売りになっている。そこへ花火だ、浴衣だ、海だ……といったオプションが付いた日にはもう、恋なしのひとりの夏なんて気の抜けたペリエ。シュワシュワがなければ、ただの水のほうがよっぽどおいしい、という事態に陥ってしまう。

 それがわかっているから”恋なし”組は、平気のへっちゃらを気取る。寂しい、恋したいなんて口にしたら最後、波に洗われる砂のお城みたいに無残な気持ちにさせられる。しかも恋というものを知っていればいるほど、さらに心情はもつれ絡まる。臆病になっている自分を認めるのも嫌だから、自分に対してもひとりが好きなフリなんかをしてみせる。

 そういう複雑な、けれどとっても正直な胸の内を歌っているのが「夏海」。

 ホントは恋人と呼べる人と海とかに行って波打ち際をふざけながら走ってみたい、ちょっとロマンチックな気分で花火だって見に行きたい、開放的なお日様の光に後押しされて甘えてみたい……。目に浮かぶのは、そんなことを思いながら爪先を見つめて歩いているような女の子。その素直な呟きみたいな歌詞が、なんともいとおしい。またサウンドのほうもリズムを刻むアコースティック・ギターの音色が、飾り気のない歌詞の世界にしっくり似合っている。ファルセットがアクセントになっているボーカルも、全体的にナチュラルな感じでとても好感が持てた。

 さらに2曲目の「Pastime」はアコースティック・ギターと打ち込みの音が小気味よく混じり合った曲。”気晴らし、楽しみ、遊び”という意味のタイトルが付けられたこの曲は、なんとなく心が窮屈になったときの、ゆるいカンフル剤に使いたいような曲だと思った。そして懐かしい感じのするキーボードの音とアルペジオのギターの調べが印象的な「Subway」は、まだまだ忘れることのできない、かつての恋人を偶然見かけたときの気持ちをリアルに描いたラブ・ソング。というわけでカップリングの2曲も”よくぞ言ってくれました”の、特に女子共感度の高い曲なのではなかろうか。

 ところでどのように聴くかは、もちろんそれぞれの自由だが──。個人的には終わった恋に気持ちが残っている「Subway」の女の子が、夏を感じる日差しの中で「夏海」のような気分になり、そう思っている自分を振り払うように自転車を漕ぎつつ思う「Pastime」。という感じで聴くのが意味深長な感じがして楽しかったのだけれど、いかがだろうか。

(前原雅子)

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