GOOD BYE APRIL MINI ALBUM「もうひとりの私」ディスクレビュー

もうひとりの私

MINI ALBUM

GOOD BYE APRIL

もうひとりの私

AVOCADO RECORDS

2013.07.03 release

<CD>


ほがらかさに垣間見える、執念

“GOOD BYE APRILって最近よく名前を聞くけど、どんなバンド?”そんなふうに思っている方がいれば、ぜひこの一枚を推薦したい。収録されている6曲に、彼らの持つ無垢な世界観と、サウンド、メロディ、リリックに対するきまじめな姿勢が如実に表れているし、何よりひとつの作品として恐ろしいほどに楽曲のバランスが良い。これほどまでに健全なミニ・アルバムも今日珍しいのではないか。

 ‘07年に高校生バンド選手権“TEENS ROCK IN HITACHINAKA”で優勝し、その年の“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”に出場した倉品翔(vo、g、key)を中心に、’10年に結成されたGOOD BYE APRIL。正統派の日本語歌ものロック・バンドとしてみるみる内に注目を集め、昨年8月には1stミニ・アルバム『夢みるモンシロ』を、Base Ball Bearなどを輩出したGreat Huntingからリリースした。今作ではPUFFY、長渕剛、ももいろクローバーZなどのアレンジを手がける上田健司がプロデュースを担当しており、これまでよりもさらにブラッシュアップされ、深みを増した一枚となっている。

 MVが制作された、1曲目の「パレードが呼んでる」に足並みを合わせて、今作をコンセプチュアルな作品にすることは彼らにとって容易であったろう。言ってしまえば“売れやすく売りやすい”ルート、それを辿らなかったのは、このバンドが音楽に対して想像以上にストイックであることの証明でもある。群雄割拠のJポップ戦国時代だった、’90年代初期の男性ボーカルを思わせるような洗練された倉科の声と、扇情的なピアノのメロディ。歌詞の描くファンタジックな世界観と、そこへ底流する日常くさいシンパシー。それを彩る豊かなサウンドとメロディ。トータルのバランス感覚。そのすべてに意識を向けつつ、シンプルさを維持しながらも作品の一貫性とバラエティの豊富さを具現化するというのは、極めて困難な所業だ。しかし彼らは、それを見事に完遂した。この作品のほがらかな空気、バンドのカラーに反して、そこには執念深い非妥協があるのだ。ある意味で、彼らの真髄、その精神に触れることのできる作品に仕上がっている。

 正直言って、そのギャップは私には不気味だった。聴き終えたあと、彼らの持つ底なしの才能と可能性を覗き見た気分だった。その不気味さを払拭してくれるのは、彼らしかいない。もしくは、より一層得体の知れない何かを生み出してくれるかもしれない。何にせよ、今後の彼らの創造を引き続き楽しみにしたいと思う。

(小島双葉)

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