Dr.DOWNER ALBUM「幻想のマボロシ」ディスクレビュー

幻想のマボロシ

ALBUM

Dr.DOWNER

幻想のマボロシ

キューンミュージック

2013.07.03 release

<CD>


堂々巡りの日々をロックで突破せよ

 数年前までは、ホームである横須賀を中心に知る人ぞ知る、バンドマンから愛される存在だったDr.DOWNER(ドクターダウナー)。そんな状況に、秘められた可能性に気づいていた旧友であるASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がやきもきしたのか(!?)バックアップを始め、2010年に彼のプロデュースでアルバム『ライジング』をリリースしてから、グッと名と音が大きく広まり始めた。数々のフェスにも出演した。それでいて、彼ら自身は奔放なまま。やるせなさをささくれたロックンロールに乗せて吐き出し続け、ライブでは高橋“JUDI”ケイタ(g)を筆頭にステージをはみ出さんばかりのパフォーマンス。以前から聴き続けている人間としては、それはそれで痛快だった。

 そして、『ライジング』から2年を経て、ニュー・アルバム『幻想のマボロシ』が届いた。聴いて、思った。ついに彼らは、大きな一歩を踏み出したんだ、と。引き続き後藤がプロデュースを務めた今作は、彼らの魅力が荒削りなまま表れていたこれまでの作品に比べて、かなり磨いてパッケージしてある。それによって、彼らの元来のキャッチーなセンスや歌詞の文学性が、わかりやすくなっているのだ。これは、単にメジャー・レーベルからのリリースに変わったという理由だけではないだろう。住み慣れた場所を飛び出してでも、もっともっと伝えたいという彼らの想いが募ったからこそ、言葉や音そのものが変化していったに違いない。

 猪股ヨウスケ(vo、g)は、ゆったりとしたメロディでこう歌う「絶望はとっくに飽きたのさ ここから抜け出すドアを開けろ」──この歌詞は、何気ない日常を生きる私たちの心情ともシンクロしていく。いつの時代も、多くの人が抱える生きづらさ。それを弾けさせてくれるのは、ロック・バンドとライブハウス。その存在価値を、誰よりも知っているからこそ、彼らは表舞台に飛び出したんだと思う。アルバムを締め括る言葉は「今日もオレと君の日々が始まる」。ここには、頑張れ、よりもよっぽど生に近いエールが詰まっている。

(高橋美穂)

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