クリープハイプ – 小川幸慈(g)のI、哀、愛 – メジャー2ndフル・アルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』について、ディープなインタビューを敢行。4週にわたり公開するスペシャル企画。

クリープハイプ - 小川幸慈(g)のI、哀、愛

尾崎世界観が紡ぐ歌に鮮やかな色彩と情景を付けながら、そのリフやフレーズにプレイヤーとしての強烈な個を感じさせるギタリスト、小川幸慈。ソロ・インタビュー1人目は、バンドのムードメーカーであり、クリープハイプをロック・バンドとして飛躍させるうえで大きな役割を担っている男から。

INTERVIEW & TEXT BY 三宅正一 / PHOTOGRAPHY BY 関信行(go relax E more)

当時から尾崎はちょっとほかとは違う存在感がありましたね

──小川くんの目には、加入前のクリープハイプってどう映っていたんですか?
僕も高校卒業してからずっと売れないバンドをやっていて。18歳くらいから尾崎のことは知っていたんですね。府中のFLIGHTというライブハウスで知り合って。対バンして、一緒に酒を飲んだりするなかで、当時から尾崎はちょっとほかとは違う存在感がありましたね。6バンドとかで対バンしてもフロントマンとして出している空気が違うというか。
──存在感が際立っていた?
ですね。話をしていてもあいつが考えてることや感じてることに驚くことも多くて。“そんな細かいところまで見てるんだ……!”って。あと、歌も尾崎独自の視点で書いてるなと思ったし。
──当時は一緒にバンドをやるとは思ってもみなかった?
そうですね。自分がやっていたバンドと一緒にライブハウスには出ていましたけど、クリープハイプは先に『ねがいり』(2006年8月リリース)というCDを出していて。自分たちのバンドとは状況が全然違ってたんです。
──クリープハイプは前を走ってた。
はい。さっき言ったように尾崎が考えてることも先にいっていたし、当時のメンバーが抜けるとも思ってなかったので。だから、クリープハイプで自分が弾くというのは考えられなかったですね。
──尾崎くんから声をかけられたときはどんなことを思いましたか?
最初は“サポートとして弾いてくれないか”って言われたんですけど、それでも“え!?”ってなりましたね。“俺なんだ!?”って。でも、最初はサポートだったので、単純に尾崎が作った曲でギターを弾けるのがうれしかったんです。それまでは外から見てカッコいいと思ってたけど、一緒に音を鳴らしてどんな刺激があるのか楽しみだったし。

今もつねに何かに向かっていて越えるべきことがあるという感じ

──キャラクター性も音楽的な趣味もバラバラな4人が揃ったとき、小川くんはどんなことを思いましたか?
バラバラだなあって思いましたね(笑)。僕自身は高校のときから前のバンドをやっていたので、バンド・メンバーが友達じゃないところからスタートするというのが初めてだったんですよね。やっぱり最初は何か思ったとしても言いづらいし、自分のプレイに対してもみんながどう思っているのかもわからなくて。そこからスタジオに何度も入って、ライブをして、普段くだらない話をするなかで徐々に距離が縮まっていったんだと思います。
──この4人になってからの4年はどういう時間でしたか?
あっという間でしたね。ホントに早くて、刺激的でした。周りから求められることも増えてきて、そこに向かっていくうえで思うようにできなかったときはすげえ悔しいし。今もつねに何かに向かっていて越えるべきことがあるという感じですね。クリープハイプに入る前は全然お客さんがいない状況でバンドをやっていたので。曲を聴いてくれる人がいる、ライブを観てくれる人がいるというだけで幸せだし、だからこそ、少しでも手を抜いちゃいけないって思ってます。
──クリープハイプはいつか日の目を見るバンドだと信じていましたか?
うん、いつか多くの人に聴いてもらえるバンドになるという自信はありました。好き嫌いははっきり分かれるバンドだとは思ってましたけど、一度曲を聴いてもらったり、ライブを観てもらえればハマる人は多いだろうなって。あとは、やっぱりメンバーみんな尾崎の作る曲が好きなんですよね。それも大きいと思います。

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尊重と自己主張のバランスにはこだわっていきたいなと

──バンドにおける自分の役割はなんだと思う?
自分で言うのもアレですけど、空気を作るというか。
──ムードメーカーですよね。やっぱりそれは自認してるんだ?(笑)。
してますね(笑)。去年、『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』をリリースしてからは、バンドに関わってくれるスタッフも増えてきて。その人たちにイジられたりしているうちに、より意識するようになりましたね。
──前のバンドではどうだったの?
前のバンドではわりとグイグイ系というか(笑)。
──グイグイ系(笑)。
クリープハイプに入って尾崎にイジられるまでは、あまりイジられたりする感じじゃなかったんですよ。でも、前のバンドのときからよく尾崎にはアドバイスされたり注意されたりはしてたんですよね。
──どういうことを?
ライブが終わって外で缶ビールを飲んでたら、“お客さんに見られるかもしれないし、カッコ悪いよ”とか。ライブに向かう姿勢とか、ライブの運び方もアドバイスしてくれましたね。前のバンドがちょっとファンク寄りの音楽性で。そこでワーッって踊ったりしながらギターを弾いたりしてたんですけど、勢いで弾いてるからミスタッチしちゃうんですね。でも、それを観た尾崎からは“ああやって弾くなら、絶対ミスしちゃダメだよ”って言われて。
──尾崎くんは一貫して意識が高かったんだね。
高かったですね。自分も“そうだよな”って納得することばかりだったし。
──過去の話を聞いても思うけど、小川くんは今たしかにバンドのムードメーカーなんだけど、プレイの面ではかなり自己主張の強いフレーズを弾きますよね。元々前に出るタイプのプレイヤーなんだと思うし。そういう人がバンドのムードメーカーであるギャップが面白いなって。あんまりいないタイプだと思う。
ああ、そうなんですかね? 自分ではよくわかってないんですけど(笑)。
──ただ、この4人のキャラクター性を考えたときにムードメーカーになれるのは小川くんしかいないのかなとも思うんだけど(笑)。
うん、そうかもしれないですね(笑)。
──でも、プレイヤーとしての我は強いでしょう?
でも、尾崎の意見はすごく尊重してますね。“弾きすぎだよ”って言われたら、抑えるし。でも、いくら抑えても自分の消えない色はあると思ってるんですよね。クリープハイプはギターがしっかり目立つべきバンドだとは思ってるから、尊重と自己主張のバランスにはこだわっていきたいなと思ってます。

探っていくのはすごく面白いし、このバンドでギターを弾く醍醐味

──そもそも小川くんはどういうギタリストを志していたんですか?
自分が好きなタイプのギタリストは、イントロを弾いただけでその人のギターだとわかる“におい立つ空気”を出せるプレイヤーで。ジョン・フルシアンテとかジョニー・マー、日本だとHINTOの伊東(真一)さんとか。自分もそういうギタリストでいたいなと思うんですけど。
──うん。だから歌メロに引けを取らないフレーズを生むんだと思う。
セカンド・メロディじゃないですけど、歌の後ろで活きているギターが鳴っている音楽が好きなので。僕のギタリストとしての役割は曲の色付けであり、曲に広がりを持たせることだと思うんですね。尾崎も“コード・バッキングは弾かないで、何か自分のフレーズを弾いてくれ”ってよく言うんですね。僕もそうしたいと思うし。
──でも、“俺の歌は邪魔してくれるな、調和してくれ”と(笑)。
そうですね(笑)。そのバランスを取るのは難しいけど、そこを探っていくのはすごく面白いし、このバンドでギターを弾く醍醐味だと思ってます。今回のアルバムは『死ぬまで〜』よりもさらにそのバランスがうまく取れたと思うし。
──間違いないですね。サウンドの幅を広げながら、調和の精度も上げてるよね。それは全体のアンサンブルに言えることなんだけど。
すごくうれしいです。そういうサウンドにしたいと思っていたので。こういうバランスのロック・バンドって珍しいと思うんですよね。
──ホントにそう思う。
尾崎の歌は日々の生活や身近なことを歌っているんだけど、視点が誰にも似てなくて。曲はどれもキャッチーなんだけど、様々な色と振り幅があって。今回のアルバムでいえば「ラブホテル」は誰もがキャッチーだと感じると思うし、「あ」みたいな速いビートのロックンロールにもキャッチーな部分を出せていて。その中で最後の「傷つける」みたいな繊細なバラードもあって。すごくいいアルバムが出来たなって思います。
──プレイヤーとしての今後の展望についてはどんなことを考えてますか? 俺は小川くんのフレーズを聴いてると、“この人も作曲してみればいいのに”って思うんですよ。キャッチーなメロディ・メーカーになれるんじゃないかって。
いや、どうですかね? 作曲はしたことがないのでわからないですね。今は尾崎の曲に色を付ける作業がすごく好きなので、ちょっと考えられないですね。どこまでギタリストとして自分を磨いていけるかということが念頭にあるし。でも、作曲かぁ……いつかやってみてもいいのかなあ?(笑)

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