クリープハイプのI、哀、愛 – メジャー2ndフル・アルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』について、ディープなインタビューを敢行。4週にわたり公開するスペシャル企画。

クリープハイプのI、哀、愛

1曲目、「ラブホテル」。サビ始まりのこの曲が鳴った瞬間から、本作はただならぬ“名盤感”を漂わせ、その感触はラストの「傷つける」が鳴り終わるまで耳を離さない。そして、確信に変わる。クリープハイプ、1年3ヵ月ぶりのメジャー2ndフル・アルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』は、間違いなく2013年を代表する傑作であると。本作の完成を記念して、多角的にクリープハイプの本質に迫る大特集。ここでは、メンバー全員インタビューをお届けする。

INTERVIEW & TEXT BY 三宅正一 / PHOTOGRAPHY BY 関信行(go relax E more)

バンドとしてもやりたいことがきれいにハマっていったんです

──『吹き零れる程のI、哀、愛』、予想以上のアルバムでした。ここから“クリープハイプ以降”という概念がバンド・シーンに生まれるんじゃないかと思ったくらいで。

尾崎世界観 ああ、すごくうれしいです。

──生々しいというか、生ぐさい歌の距離感はさらに近くなっているのに、スケール感やポップの強度は格段に増していて。なんでこんなに素晴らしいアルバムを作れたと思いますか?

尾崎 とにかくいい曲をいっぱい入れたいなと思って。アルバムを制作するときはいつもそういう気持ちで曲を作っているんですけど。でも、だいたい、曲を作れる時期と作れない時期があって……うまくいかなかったらいかなかったで、いびつでいいアルバムになったりもするんですけど、今回は初めてと言っていいくらい、“今こういう曲が出来たら安心するんだけどな”と思ったときに、思いどおりの曲が出来て。アレンジも順調にいって、バンドとしてもやりたいことがきれいにハマっていったんですよね。そういう運とかタイミングにも恵まれたのかなと思ってます。まあ、でも、今までがうまくいかなすぎてたから、こういうことがあってもいいかなって。

──うまくいきすぎて怖いなみたいな感じもあるんだ?

尾崎 うん、ありますね。作ってるときはうれしかったけど、今はちょっと心配になってます(笑)。

──幸福恐怖症の尾崎くんですから。

尾崎 それ、すごい病気ですね(笑)。

──いや、往々にして人は幸せの渦中にいると、それがいつか崩れることへの恐怖心が徐々に浸食してくると思うんですけど。でも、尾崎くんはそれが重度だから(笑)。

尾崎 はい、重度だと思います(笑)。

シングル3曲以降は、自分から曲を引きずり出せるようになった

──でも、このいい流れを引き寄せたのもまたバンドの力でもあるわけで。なんといっても「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」、「社会の窓」、「憂、燦々」というタイプの異なる3枚のシングルの流れと内容が素晴らしかったし、数字的な結果もしっかり出せたのは大きいですよね。

尾崎 デカいですね。実際に曲を作った時系列でいうと、「おやすみ〜」は1枚目のシングルにふさわしい曲を書く。「憂、燦々」はCM(資生堂“アネッサ”)になんとかこたえたいという想いで作った。それで、「社会の窓」はこのシングルの流れをどう面白く壊せるかがテーマで。今までは自分の中で曲が出てくるのを待つことが多かったんですけど、シングル3曲以降は、自分から曲を引きずり出せるようになったんです。だからこそ、アルバムも欲しい曲をジャストのタイミングで書くことができたんだと思います。

──自分が曲を引きずり出せるソング・ライターになれるとは思ってなかった?

尾崎 思ってなかったですね。「WHAT’s IN?」本誌の連載(「続々世界」)もいつも締め切りに間に合ってないですから(苦笑)。
一同 (笑)。

──それは知らない(笑)。

尾崎 子供の頃から“できない”というのがあたりまえで。勉強の問題が解けなくて、とりあえず居残りして免除されるみたいな。毎日のように居残りしてましたね。

──勉強も運動もダメだったってよく言ってるよね。

尾崎 ホントにダメでしたね。団体行動も嫌いだったし。

曲を作れるような人間で良かったなって思います

──それが、今は基本的にバンドという団体で行動しているし、音楽で劣等感を乗り越えているわけで。

尾崎 そうですね……ホントに。曲を作れるような人間で良かったなって思いますね。音楽がなかったらただのクズですからね。

──だから音楽はあきらめられなかったし。

尾崎 そうですね。(メンバーに向かって)だって、みんなはちゃんと働けるもんね?
小川幸慈 そうだね……バイトとかはちゃんとやってたね(笑)。
一同 (笑)。
尾崎 俺は全然ダメだったもん。興味ないことには一生懸命になれないんですよね。普通は与えられた仕事をちゃんとこなせるじゃないですか。でも、それが無理で……初めてやったバイトは実家の近くの商店街にあった蕎麦屋だったんですけど、何もできなかったんで出前と掃除だけでいいってことになって。でも、掃除のスピードも遅いから、店じまいするかなり前から“始めといて”って言われて(笑)。
一同 (笑)。

──今でも日常生活に支障を感じたりするの?

尾崎 ありますよ。なんにもできないし。

──メンバーもそれを感じますか?

小川 感じますね。例えばスタジオでよくあるんですけど、単純にエフェクターの電源が入ってないまま踏んでるとか(笑)。
尾崎 へへへへへ(笑)。

──でも、音楽だと資生堂の要求にもこたえられるわけですから。

尾崎 そうなんですよ! “資生堂の商品の営業をしてこい”って言われたら絶対できないけど。

──400パーセントできないけど。

尾崎 え!? もうちょっとできると思うんですけど……。
一同 (笑)。

──でも、曲を作ってほしいと言われたらね。

尾崎 出来たんですよねえ。

──しかもめちゃくちゃいい曲が。

尾崎 うん。そう考えると自分でもすごいなあって思いますね。

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