
ALBUM
ORIGINAL LOVE
エレクトリックセクシー
WONDERFUL WORLD RECORDS
2013.06.26 release
<CD>
シンセサイザーと田島貴男が織りなすロックンソウル
アルバムごとに音楽性を進化させ変化させていくのは、アーティスト、ミュージシャンにとって宿命のようなものだが、長きに渡って実践していくのはかなり至難の技。それを貫き通しているのが、ORIGINAL LOVE、田島貴男である。16枚目のオリジナル・ニュー・アルバム『エレクトリックセクシー』を聴けば、そのことがよくわかる。田島の歌とギターが軸になっているのはもちろんだが、メインでフィーチャーされているのは、ビビッドなアナログ・シンセサイザーの音。今回のアルバムでは、彼がリアル・タイムで聴いて育った’80年代のニューウェイブと、現在のUSインディのシンセ・ポップ、エレクトロ・ミュージックをクロスオーバー。見事にORIGINAL LOVEの音楽に昇華しているのだ。1曲目の「スーパースター」は、アナログ・シンセとカッティング・ギターが交わる、テクノ・ポップでソウルフルなロックンロール。シンプルな音数で奏でられるサウンドをバックに、“沈黙のSoul 走り出せ”と、リスナーの心を鼓舞するように熱く歌う田島のボーカルがバッチリとハマっている。
生々しいシンセ音とアーバンなメロディが混ざり合う「ファッションアピール」。ざらついた打ち込みサウンドで、“続けていくことで力になる”とポップに歌う「エブリデイ エブリデイ」など、斬新かつユニークなサウンドが次々と飛び出してくる。ファンカラティーナなフレイバーの「一撃アタック」もかなりの躍動感だ。
今やPC上でいくらでもクリーンな音は作ることができるが、あえて田島はシンセサイザーという楽器のむき出しの音質をチョイス。それが、田島の歌とギターと正面からぶつかり肉感的な音楽に帰結している。「エナジーサプライ」「きらめきヤングマン」といったタイトルからもわかるように、すべての楽曲が、いい意味でとても人間くさい。日々を生きる日常感たっぷりの歌として、リアルに響いてくるのだ。ラストの「帰りのバス」は、シンセ、ギター、ベース、ドラムというベーシックなスタイルで、明るいメロディを歌う軽快なビートのナンバー。“あしたもきっと一緒にいようベイベー”“終着点の出発点に戻っていくのさ きみと”という歌詞は、まさに人の人生そのもの。そして、これからも音楽を届け続けるという、ORIGINAL LOVEとリスナーの関係性にも重なってくる。ずばり『エレクトリックセクシー』は、音楽の旅を続けるORIGINAL LOVEの今と、不変的なメッセージがしっかりと伝わってくるアルバムなのです。
(土屋恵介)