クリープハイプ – 今最も目が離せない彼らが最新アルバム発売前に行った全国ツアー “クリープハイプの窓”最終日@中野サンプラザのライブ・レビュー。

クリープハイプ

メジャー2ndフル・アルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』のリリースが7月24日に決定している彼らが、シングル3枚を引っ提げ行った全国ツアー“クリープハイプの窓”は、バンドの好テンションっぷり、リスナーからの認知度&期待感の広がり……現在のクリープハイプというバンドが持ちうる魅力を存分に発揮した、素晴らしい進化のツアーだった。その最終日となった5月21日の中野サンプラザでのライブ・パフォーマンスについて。

TEXT BY 三宅正一

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やっと乗った機運をさらに高め、クリープハイプだけの立ち位置を揺るぎないものにしてやろうと

 曲が終わり、これからMCを始めようとするとき、尾崎世界観はだいたい「はぁ〜」と深いため息をつく。「ありがとう」とか、「おはよう」とか、「バイバイ」とか、「ふざけんな」とか、「バーカ」とか、「いつか見てろ」とか、「愛してる」とか、他者に向かうあらゆる言葉を吐く前に、彼はずっと深いため息をついてきたのだろう、と思う。払いのけたい鬱陶しさも、強く刻まれた悔しさも、目の前の幸福感に対する疑いや照れ隠しも、尾崎の様々な気分を、いろいろな「はぁ〜」が代弁してきたはずで、それを思うと、例えそこが中野サンプラザの大きなステージ上であっても──いや、つい1年前にはツアー・ファイナルのハコとして立っていること自体がちょっと考えられないような大きなステージ上だからこそ、彼はいつもより深いため息をつかずにはいられなかったに違いない。

今の存在感と音楽的なスケールに、ホール会場はとてもフィットしていた

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 計8本の全国ツアー“クリープハイプの窓”の最終公演、中野サンプラザ。有吉弘行は“ブレイクするとは、バカに見つかること”という名言を口にしたが、尾崎は一刻も早くクリープハイプを見つけてくれと願っていた。結成から12年、なかなか世間に見つけてもらえなかったバンドは今、見つかってからの急展開を迎えている。その渦中にあってメンバーはまったく浮かれていないし、及び腰にもなっていない。やっと乗った機運をさらに高め、クリープハイプだけの立ち位置を揺るぎないものにしてやろうと思っている。何せ、すでに完成しているニュー・アルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』がとんでもないことになっている。「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」、「社会の窓」、「憂、燦々」──前作『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』以降にリリースしたタイプの異なる3つのシングル曲で音楽的な求心力をきっちり示し、世間にアプローチする結果もしっかり出した。そして、必ずやこのアルバムで彼らはまた何段も高く、大きなステージ(状況という意味においても、ライブの規模という意味においても)に駆け上がるだろう。そういった意味においても、バンドにとってワンマンとしては初のホール・ライブとなったこの中野サンプラザ公演は、数年後に振り返ったとき重要な節目として語られるかもしれない。前置きが長くなってしまったが、今のクリープハイプの存在感と音楽的なスケールに、ホール会場はとてもフィットしていた。

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ここまでのクリープハイプが何を描き、鳴らしてきたのか。余すところなくそれを体現するライブ

 最初はステージ上のバンドとお客さんの間に、どこかぎこちない空気が流れていた。バンドはいつもどおりの姿勢でライブに臨んでいるのだが、お客さんがホール会場独特の雰囲気に飲み込まれてしまっていた、というほうが正しい。会場のキャパシティからいって、クリープハイプのライブ自体を初めて観る人も少なくなかっただろうし、あるいは椅子席が用意されたホール会場でロック・バンドのライブを観るのが初めてという人もいただろう。
「はぁ〜。みんなどうしたんですか、緊張してんですか? なんかおとなしくて気持ち悪いなあ、今日。最後になんか考えてんじゃないの? なんかされるんじゃないかと思ってドキドキする。あとでウンコでも投げるつもりですか?」
 微妙な空気を敏感に察知した尾崎が、やはりため息混じりのこんなMCで、会場の緊張感をやわらげる。あとは、「名曲をいっぱいやるので、よろしくお願いします」と語ったとおり、楽曲の力と集中力に富んだ演奏でお客さんを惹き付けていった。

「今は目に見えるものとか目に見える人を大事にしようと思いました」

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 1曲目の「あの嫌いのうた」を皮切りに組まれたセット・リストは、インディーズ時代から、上記のシングル3曲までの集大成を編むようなものだった。ここまでのクリープハイプが何を描き、鳴らしてきたのか。余すところなくそれを体現するライブ。今、このタイミングでそういったライブをホール会場でやれた意味はとても大きい。「憂、燦々」に入る前、尾崎はこう言った。
「CMで自分たちの曲が流れ始めて、自分たちのことを知らない人にも届くことが増えて。そこでいろんな意見があって。よくわからなくなったりもしたけど、ツアーを回ってきて、今日で8本目。いろんな場所のいろんな会場をお客さんが埋めてくれていて。楽しそうにライブを観てくれていて。それを見て、とりあえず今は目に見えるものとか目に見える人を大事にしようと思いました。昔から勉強とか運動とか全然できなくて。“これからどうなるんだろう?”ってすごく心配してたけど、こんなデカいところでライブができるようになってホントに幸せです。いずれはそこらへんのオッサンとかも連れていけるような大きなバンドになりたいと思ってますので、改めてよろしくお願いします」
 さあ、深いため息を越えて、『吹き零れる程のI、哀、愛』が待っている──。

SETLIST

2013.6.21@中野サンプラザ
M1. あの嫌いのうた
M2. 週刊誌
M3. SHE IS FINE
M4. 左耳
M5. ABCDC
M6. 愛の標識
M7. HE IS MINE
M8. チロルとポルノ
M9. 風にふかれて
M10. 蜂蜜と風呂場
M11. グレーマンのせいにする
M12. 明日はどっちだ
M13. おやすみ泣き声、さよなら歌姫
M14. オレンジ
M15. 憂、燦々
M16. AT アイリッド
M17. イノチミジカシコイセヨオトメ
M18. 手と手
M19. ウワノソラ
M20. 身も蓋もない水槽
M21. 社会の窓
ENCORE
EN1. 傷つける
ENCORE2
EN1. さっきの話

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PROFILE

尾崎世界観(vo、g)、小川幸慈(g)、長谷川カオナシ(b、vo)、小泉拓(ds)。’01年に結成。’09年に現メンバー、スタイルで本格的に活動がスタート。’12年4月にアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャー・デビュー。シングル「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」「社会の窓」、資生堂「アネッサ 2013」CMソング「憂、燦々」をリリース。今夏、各地フェスに出演。◇HP=http://www.creephyp.com

DISC INFORMATION

ALBUM 2013.7.24 release
『吹き零れる程のI、哀、愛』
Getting Better/ビクターエンタテインメント

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MORE INFORAMTION

クリープハイプの4週連続公開スペシャル企画スタート!!
クリープハイプのメジャー2ndフル・アルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』リリースを記念して、WHAT’s IN? WEBでは、7月3日よりスペシャル・プログラムを4週連続で公開することが決定しました! その名も、濃密企画!「書き切れない程のインタビュー」。今作での彼らの“吹き零れる程の”想いを“書き切れない程の”言葉で届けます。お楽しみに。<7/3~4週連続・毎週水曜日公開>

LIVE INFORAMTION

〈EVENT〉
“Talking Rock! FES.2013”
2013年7月19日(金)なんばHatch
“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013”
2013年8月3日(土)国営ひたち海浜公園
“RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO”
2013年8月16日(金)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
“Re:mix 2013”
2013年8月24日(土)名古屋CLUB DIAMOND HALL & APOLLO THEATER(
2会場同時開催)
“MOSTER bash 2013”
2013年8月25日(日)国営讃岐まんのう公園
“SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2013”
2013年8月31日(土)山中湖交流プラザ きらら
“OTODAMA’13〜音泉魂〜”
2013年9月7日(土)大阪・泉大津フェニックス

関連リンク

クリープハイプ OFFICIAL WEBSITE
Twitter(クリープハイプ公式) 
YouTube(Victor Music Channel) 

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